3月中旬。PGAナショナルなど著名なゴルフ場が多く、1年を通じて温暖なフロリダのリゾート地、ジュピター。
心地よい、というよりは凶暴な日差し。連日30度を越える暑さの中、真っ黒に日焼けしたマイアミ・マーリンズのイチローは、開幕に向けたスプリング・トレーニングに臨んでいた。
チーム練習とオープン戦への出場が通常のメニューだが、彼の場合はそれだけではない。クラブハウスと、ハウス裏のコンテナハウスに設置した「ワールドウィング」開発の特殊なトレーニングマシンは総計8つ(開幕後はマーリンズ・パークのダグアウト裏に移設)。チーム練習後、肩甲骨や股関節、骨盤などに作用するトレーニングで黙々と汗を流す。やるべきことを、淡々と。日々の積み重ねがプロ24年目の心身を支え、さらに研ぎ澄ませていることを、今更ながらに痛感させられる。
まるで打席を見ているような、インタビュー風景。
多忙なトレーニングスケジュールの合間を縫って行なわれたNumber876号のインタビューは、小誌としては5年ぶりという久しぶりの機会となった。
インタビューに先立っての写真撮影は、そのトレーニング・シーンと、晴天のもと行なわれたユニフォーム姿での特撮の2パターン。カメラマン杉山拓也とのセッションは構図を確認しながら30分近くに及んだ。プロフェッショナル同士の時間。清浄な空気の張りつめた、いい現場だった。
その後行なわれたインタビューは、1時間半に及んだ。
イチローは、20年以上自身を取材し続けているベースボールライター・石田雄太氏の質問に、驚くほど語彙豊かに答えていった。どことなく、イチローの打席を見ているようだった。どんな厳しいボールでも、ヒットゾーンに打ち返していく、その絶妙なバットコントロール──。
一つ違うところがあるとすれば、ときおり交じる、返答の前の沈黙だろうか。石田氏の問いに、より的確に答えようと語彙を探すための沈黙。それはまた、イチローという選手の誠実さのあらわれだとも言える。
Number Ex バックナンバー
- 「彼は、本当に偉大な打者だった」 巨人軍トップが語る理想の四番とは? 2015年4月10日
- 斎藤佑樹を下して以来、86連敗中。 六大学野球、東大に勝機はあるのか? 2015年4月9日
- 追い風でも、9.87秒は史上40人だけ。 トップ選手が語る桐生祥秀の「真価」。 2015年4月9日