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【社説】

安保法制考(1) 武力行使緩める新要件

 何が分からないのかさえ、分からない−。安倍晋三政権が進める集団的自衛権の行使容認を含む安全保障法制のすべてを理解するのは困難を極める。自民党と公明党の与党協議は、公明党が問題点を指摘しても解決せず、生煮えで次に移ってしまうからだ。

 それでも法案は、ゴールデンウイーク明けの国会に提出される。首相官邸と自民党の考え通りの案となる公算が大きい。どこに問題があるのか考える。

 まず集団的自衛権の行使から。

 安倍首相は、中東のペルシャ湾にあるホルムズ海峡の機雷除去の例を好んで取り上げる。想定しているのは、核開発を進めるイランがオマーン領海にあるタンカーの航路を機雷封鎖する事態だ。

 自衛隊が掃海すれば、オマーンに対する集団的自衛権の行使になるが、ここに違和感はないだろうか。オマーンは友好国とはいえ、日本が防衛する義務はない。

 安倍首相は、輸入原油の八割が通る海峡の封鎖は、武力行使を認める新三要件の「日本の存立が脅かされ、国民が危機にさらされる明白な危険」に合致するという。

 新三要件は、過去の国会論議とは無関係に昨年七月、閣議決定により制定された。憲法解釈を変更して自分に都合のよい要件をつくり、これに従えば問題ないとする「自作自演」である。

 集団安全保障措置、すなわち国連の多国籍軍による機雷除去であっても新三要件に合えば、参加できるとも主張する。時の政権が「資源の枯渇は新三要件に合致する」と判断すれば、自衛隊の出動が認められ、海外における武力行使がとめどなく広がることになる。もはや集団的自衛権の議論をはるかに飛び越えている。

 国会の事前承認は「原則」なので、政権の都合による事後承認もあり得る。特定秘密保護法が施行されている現在、国会の判断に必要な情報が開示される保証はない。歯止めはないも同然といえる。

 ホルムズ海峡の機雷除去は、二〇一二年八月、米国の知日派グループがまとめた「アーミテージ・リポート」に登場、「日本は単独でも掃海艇を派遣すべきだ」と求めた。現在、イランは主要六カ国との間で核放棄へ向けた協議が進み、当時とは状況が違う。

 現実離れした想定のもと、武力行使へのハードルは限りなく下がり始めた。 (半田滋)

 

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