根津甚八、1作限り復活「終止符を打てた」役者人生に幕

2015年4月17日6時0分  スポーツ報知
  • 「GONIN サーガ」で1作限りの役者復帰を果たした根津甚八。引退前よりふっくらした印象(c)2015「GONIN サーガ」製作委員会

    「GONIN サーガ」で1作限りの役者復帰を果たした根津甚八。引退前よりふっくらした印象(c)2015「GONIN サーガ」製作委員会

 2010年に俳優引退を宣言した根津甚八(67)が、映画「GONIN サーガ」(石井隆監督、9月26日公開)で1作限りの復活を果たしたことが16日、分かった。95年に公開されたバイオレンス映画「GONIN」の19年後を描く続編で、根津は前作と同じ元刑事・氷頭(ひず)役で出演。目の障害など持病を抱えながらも鬼気迫る演技を披露し「やり遂げたことで、未練を捨てて終止符を打てた」と改めて役者人生に幕を引く意思を表明した。

 スクリーンに根津の姿が帰ってくるのは、04年の映画「るにん」以来11年ぶり。くしくも本作が50本目の映画となる。撮影は昨夏に終了しており、根津は「久しぶりの撮影現場の空気に気持ちが高揚して、自分はこの仕事が心底好きなんだと改めて感じた」と振り返った。

 根津は02年ごろから、視力に障害が出る右目下直筋(ちょっきん)肥大やヘルニア、体のまひなどを患い、活動をセーブ。さらに04年に人身事故を起こしたことなどから、うつに悩まされるようになった。10年9月に夫人の仁香(じんか)さんが著書の中で引退を公表し、以降は表舞台に立つことはなかった。

 1作限りの復帰を決めたのは、何度となくタッグを組んだ石井監督の熱意だったという。根津がかつて演じた氷頭は、前作のラストシーンで命を落としているが、実は生きていたという設定の「―サーガ」の脚本を携え、監督自ら根津の自宅に出向き口説き落とした。根津は「石井監督でなければ、この仕事は受けなかった」と明かす。

 現場は、まさに鬼気迫るものだった。石井監督は「根津さん、もう1回! もっと粘って! もっと!もっと! と、“根津甚八の今”を撮るのが恩返しと思って現場で叫んだ」。主演の東出昌大(27)も「ご病気でまひの残る根津さんに叫ぶ監督の声は、自分の身も引きちぎる思いと共に叫んだ声なのだと瞬間に理解しました」と魂のぶつかり合いに身震いしたという。

 引退を決めてからの5年は葛藤の連続だった。「天が再び機会を与えてくれるものなら、仕事を続けたかった」と悔やんだ日もあった。しかし現場に再び立ったことで、根津は完全燃焼した。「監督や共演者を始め、スタッフ全員の支えがあって、やり遂げたことで、未練を捨てて、終止符を打てた」。俳優・根津甚八は今度こそ、役者人生に別れを告げた。

 ◆根津 甚八(ねづ・じんぱち)本名・根津透。1947年12月1日、山梨・都留市生まれ。67歳。69年に唐十郎の状況劇場に入団し、翌年の舞台「ジョン・シルバー 愛の乞食篇」でデビュー。75年にフジテレビ系「娘たちの四季」でテレビドラマ初出演。78年にNHK大河ドラマ「黄金の日日」に出演するなど人気を集め、79年に劇団を退団。映画俳優や歌手など多岐に活躍。主な出演映画に「乱」(85年)「吉原炎上」(87年)など。

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