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戦後70年のホロコースト追悼の日
4月17日 6時58分

戦後70年のホロコースト追悼の日
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第2次世界大戦の終結から70年を迎えるなか、イスラエルでは、ナチス・ドイツによるユダヤ人の大量虐殺、ホロコーストの追悼の日に合わせて各地で追悼行事が行われ、600万人に上る犠牲者に祈りがささげられました。
第2次世界大戦の悲劇、ホロコーストではナチス・ドイツがユダヤ人をヨーロッパ各地に設けた強制収容所に送り、600万人に上るユダヤ人が組織的に殺害され、イスラエル建国を後押しする要因となりました。
イスラエルが定めるホロコースト追悼の日に当たる16日、テレビやラジオはホロコーストに関連する番組のみの放送となりました。
現地時間の午前10時にはイスラエル全土で2分間サイレンが鳴らされ、運転している人も車を降りて黙とうしていました。
また、エルサレムのホロコースト記念館ではネタニヤフ首相やホロコーストを生き延びた人たちも参加して追悼式典が開かれ、犠牲者に祈りをささげました。
アウシュビッツ強制収容所から生還し、戦後イスラエルに住む女性は「収容所でのことはこの日に限らず、毎日思い出します。若い人たちは知識が乏しく、伝えることの難しさを感じます」と話していました。
イスラエルではホロコーストを生き延びた人たちの高齢化が進むなか、次の世代への記憶の継承が課題となっているほか、ヨーロッパなどを中心に再び反ユダヤ主義が台頭していることに懸念も広がっています。

ネタニヤフ首相「教訓学ばれず」

イスラエルのネタニヤフ首相はホロコースト追悼の日の前夜に行われる式典に参加して演説を行い、「イランと欧米などとの間でひどい合意が行われようとしている事実は、歴史の教訓が学ばれていないことを示している」と述べて、イランとの協議を進める欧米などを強く批判しました。
そのうえで、「ナチスが文明を破壊し、ユダヤ人を消し去ろうとしたように、イランは中東を乗っ取り、さらにはユダヤ人をせん滅するという目標を掲げ、勢力を拡大している」と述べ、イランを当時のナチス・ドイツになぞらえました。

台頭する新たな反ユダヤ主義

ユダヤ人への差別的な言動を監視しているテルアビブ大学のカントル・センターの統計によりますと、ユダヤ人を狙った暴力事件は、1990年代には年間100件から200件の間で推移していましたが、2000年代に入ると年々増え、ここ数年は常に500件を超えています。
ヨーロッパでは、移民社会が拡大するなかで、ユダヤ人に対する差別的な言動や暴力行為に及ぶのが、従来から問題視されていた極右勢力から過激なイスラム教徒へと変わりつつあり、「新たな反ユダヤ主義」とも言われています。
事件の件数はイスラエルとパレスチナの間で緊張が高まると急増する傾向にあり、イスラエルがパレスチナ暫定自治区のガザ地区に侵攻した2009年には前の年の倍に当たる1118件が報告されました。
また、去年の夏に、イスラエルが再びガザ地区に侵攻した際にも、ヨーロッパ各地でイスラエルへの抗議デモが起きて暴徒化し、ユダヤ教の礼拝所が襲撃されるなどの被害が相次ぎ、2014年は前の年より40%近く増え、766件となりました。
こうした事態に、ヨーロッパでユダヤ人の人口が最も多いフランスでは、年々、フランスを逃れてイスラエルに移住する動きが加速していて、2015年にはこうした移住者が1万人を超えると予想されています。
ホロコーストという悲劇を許した反省に立ち、少数派への差別を容認しない社会作りを進めてきたヨーロッパで、いま再び、反ユダヤ主義が台頭している現状は、各国に重い課題を突きつけています。

記憶の継承が課題に

第2次世界大戦の終結から70年となるなか、ホロコーストの記憶をどのように後世に伝えていくかはイスラエルにとって大きな課題となっています。
ホロコーストを生き延びた人はイスラエル国内におよそ18万9000人いて、平均年齢は83.3歳と高齢化が進んでいます。
ホロコーストの体験者で作る団体がイスラエルで行った調査によりますと、「ホロコーストが近い将来、数ある歴史の出来事の1つに埋没してしまうと思うか」という問いに対し、36.6%が「間違いなくそうなる」、45%が「そうなるかもしれない」と回答し、「そうはならない」と回答した人は17.5%にとどまりました。
この調査では、「ホロコーストが数ある歴史の出来事の1つに埋没することはない」と回答した人が、若い年齢層ほど少ない結果となっています。
イスラエルでは、国立のホロコースト記念館を拠点にホロコーストを記録し、600万人に上る犠牲者にまつわる資料の収集を進めているほか、各地の研究施設や学校などで記憶を次の世代に伝える取り組みが進められています。

危機感強めるフランス政府

ヨーロッパでユダヤ人の人口が最も多いフランスでは、ユダヤ人に対する差別的な言動や暴力行為など反ユダヤ感情の高まりに政府が危機感を強めています。
フランスでは50万人から60万人のユダヤ人が暮らしているとみられ、ユダヤ人の権利保護などの活動をしているNGOによりますと、フランス国内にはユダヤ教の礼拝所や学校、文化施設などおよそ4000の施設があります。
フランス内務省などがまとめた報告書によりますと、去年、ユダヤ人を狙った犯罪は851件で、前の年の2倍に増えました。
特に傷害事件など暴力行為の被害件数は前の年の2.3倍となる241件が報告され、被害者の多くが生徒や児童など子どもです。
ことしに入っても、1月にパリ東部にあるユダヤ教徒向けの食料品店で起きた立てこもり事件で人質4人が犠牲になったほか、2月には北東部のユダヤ教徒の墓地でおよそ200の墓が荒らされるなどユダヤ人を標的にした事件が後を絶ちません。
オランド大統領はことし1月にパリで行われた強制収容所での犠牲者の追悼式で「フランスはいかなる侮辱や暴力行為、神への冒とくも許さない」と述べてユダヤ人を守っていく姿勢を強調しました。
フランス政府はユダヤ教の礼拝所や学校などに軍の兵士や警察官を派遣して警備態勢を強化しているほか、17日には反ユダヤ主義などの差別をなくすために具体的な対策を発表する予定で、この中で学校での道徳教育の拡充やインターネット上でのヘイトスピーチと呼ばれる民族差別的な言動の監視強化などを打ち出すものとみられます。

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