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運輸安全委 着陸判断のいきさつ 調査へ
4月15日 18時01分

運輸安全委 着陸判断のいきさつ 調査へ
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広島空港で韓国のアシアナ航空機が滑走路をそれ、逆向きになって機体が大きく壊れた事故で、滑走路付近の視界は当時、着陸できるかどうかギリギリの状況まで悪化していたとみられることから、国の運輸安全委員会はパイロットが着陸を判断したいきさつについて詳しく調べることにしています。
14日夜8時すぎ、広島空港で韓国・インチョン(仁川)発のアシアナ航空162便、エアバスA320型機が滑走路をそれ、逆向きになって止まり、翼や左のエンジンなどが大きく壊れました。
国の運輸安全委員会の事故調査官3人は午後1時ごろ空港に到着し、現地での調査を開始しました。
この事故では、午後8時の時点で1800メートル以上あった滑走路付近の視界が、事故が起きた8時5分ごろには、およそ3分の1から6分の1の500メートルから300メートルへと急激に悪化していたことが分かっています。さらに広島空港では、今回のように東から着陸する場合、滑走路付近の視界が1600メートル以上あることが条件となっていることから、当時は着陸できるかどうかギリギリの状況だったとみられます。
事故機は滑走路の手前にある高さ6メートル余りの施設に機体を衝突させましたが、国土交通省によりますと、通常であれば高度30メートル以上で通過する地点だということで、異常に低い高度で飛行していたとみられます。
運輸安全委員会は、パイロットが着陸を判断したいきさつについて詳しく調べることにしています。

機体や施設の破損状況は

事故機は、滑走路の325メートル手前にある電波を発信する施設に機体の一部を衝突させたあと、およそ3000メートルある滑走路を半分近く滑走しながら左にそれ、着陸したときと逆向きになりながら、草地で停止したとみられます。事故機が停止した場所から、衝突で壊れた施設までの距離は、およそ1800メートルありますが、車輪付近には赤い色の施設の一部が引っ掛かったままになっています。
事故が起きたエアバスA320型機は、全長およそ38メートル、翼の端から端までがおよそ34メートルあります。左エンジンはカバーが外れるなど大きく壊れているほか、左の尾翼も途中からなくなっています。また、胴体の下回りや左右の主翼も、ところどころ破損しています。

元機長の見方は

今回の事故について、全日空の元機長で航空評論家の樋口文男さんは、パイロットが当時の気象状況とそれに応じてどのような判断をしたのかが、今後の調査のポイントだと指摘しています。
広島空港では今回のように東から着陸する場合、パイロットは、滑走路脇にあり上空に向け3度の角度で光を発するPAPIという装置の光の見え方を頼りに正しい着陸コースを認識します。
樋口さんは、事故当時、滑走路付近の視界が急激に悪化したことについて「パイロットからPAPIという装置の光が一時的に見えなくなった可能性がある。ただ、見えなくなった場合は、いったん上昇して着陸をやり直すのが世界共通のルールだ」と指摘しています。
一方で、「一時的に見えなくなっても『再び見えるはずだ』と考え、着陸を継続しようという心理がパイロットに働くとも指摘されており、当時、気象状況など、どのような情報がパイロットに提供され、それに応じてどのような判断をしたのかが今後の調査のポイントになる」と指摘しています。
また、広島空港では、今回とは逆に西から着陸する場合、滑走路周辺から発信される電波を頼りに自動操縦で着陸できるCAT3というシステムが備えられています。今回、パイロットが、この装置がある西からの着陸を選択しなかったことについて、樋口さんは「着陸コース周辺の天候などの要素もあり、滑走路のどちらから着陸すべきだったのか、今の時点では判断できない。ただ、滑走路付近の視界が急激に悪化したことを考えると、今回とは逆に西から着陸するという選択もあったかもしれない」と話しています。

フライトレコーダーなど回収 解析へ

15日午後、現場での調査を開始した国の運輸安全委員会の日野和男航空事故調査官は空港で各社の取材に応じ、「フライトレコーダーとボイスレコーダーの回収を一番に行った。
この装置については、別の調査官が今夜、東京に持ち帰り、あす朝から解析が始まると思う」と述べたうえで、15日夜から順次、アシアナ航空機の乗員から話を聞くとしています。
15日は、事故機が衝突した滑走路手前の施設などを確認したということで、「滑走路のかなり手前にある施設に機体の一部が引っ掛かるという状況から、かなり低い高度で飛んでいたと思われる」と述べました。
そのうえで、「この施設と滑走路との間の芝生に、当該機がつけたとみられる深く削られた跡が確認できた」と述べ、事故機が滑走路の手前でいったん接地していたという見方を示しました。
また、事故機があり、破片が散らばっているため、広島空港の滑走路の閉鎖が続いていることについて、「滑走路の運航再開は念頭にあるが、一方で破片の調査から明らかになることもあるので、安易に再開というわけにもいかず、ジレンマがある」と話していました。

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