どんなに歴史問題で対立していても、これ以上、安全保障分野の交流を停滞させておくわけにはいかない。こんな危機感の表れといえるだろう。
日本と韓国両政府は、外務・防衛担当の局長級による安全保障対話を開いた。この会合が開かれるのは、実に、約5年ぶりだ。
両国の関係は従軍慰安婦問題で冷えたままだ。だが、北朝鮮の核開発や中国軍の海洋進出が加速するなか、安全保障上の連携は待ったなしだ。この対話再開を、目に見える協力につなげてほしい。
日本の安全保障政策は大きな転換点を迎えている。政府は、集団的自衛権を使えるようにするほか、米軍などへの後方支援を広げるための安全保障法制を、今国会で整える方針だ。
日韓対話では、日本側がこの法制や、月内に予定される日米防衛協力の指針(ガイドライン)改定について説明したという。日本が何をやろうとしているのか、韓国側が正確に理解し、無用な疑念を抱かないよう、これからもていねいに説明を重ねていくべきだ。
当面、急がなければならないのは、自衛隊と韓国軍が燃料などを融通しあう物品役務相互提供協定(ACSA)の締結だ。これがないと、いざというときに円滑に協力できない。北朝鮮などをめぐる秘密情報を共有するため、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)も交わしておく必要がある。
いくら日米の連携が深まっても、日米韓が協調できなければ、朝鮮半島の紛争にはきちんと対処できない。その意味でも、日韓の握手が欠かせない。16日には、日米韓の外務当局による次官級協議が、ワシントンで開かれる。3カ国のきずなを締め直す好機だ。
北朝鮮に加えて、中国軍の台頭にどう向き合うかも、重い課題だ。韓国は中国の市場に大きく依存しており、地理的にも地続きの関係にある。こうした事情から、日米と韓国の対中政策のずれが広がることがないよう、入念な調整が欠かせない。