ところが、この報道からわずか2日後、事態は一転する。大阪地検がこの男を、処分保留であっさり釈放したのだ。地検は釈放の理由を明らかにしていないが、関係者の見方は一致している。スパイを取り締まる法律がないからだ。
スパイ活動そのものに関する容疑で逮捕することができない日本では、今回の外国人登録違反容疑のような別件での逮捕でしか、容疑者を拘束できない。その法的限界が、今回も露呈した格好だ。3年前にも在日中国大使館の1等書記官が、警視庁公安部からスパイ活動の容疑をかけられながら法的根拠がなかったため出頭要請を無視して中国へ帰国したことがあったが、何も変わっていない。
奇遇なことに一方の中国でもこの3月、「スパイ」が話題となった。同国初の空母「遼寧」の写真などの軍事情報を外国人スパイに売り渡したとして、中国人男性2人が6〜8年の禁固刑に処されたと報じられたのだ。
ただしこうした中国のやり方は、世界的に見て全く不当とは言えない。国際社会では、他国への諜報活動を行いながら、他国からの諜報を防ぐ「防諜」に力を入れるのは当然のこと。中国は当たり前のことをしているに過ぎない。むしろ、日本国内で活動する他国のスパイやその協力者を野放しにしている日本こそが、異常なのだ。
※SAPIO2015年5月号