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 米国に守ってもらいながら、中国の言う通りに動く韓国。気分は「もう、中立」だ。

「3NO」でTHAAD先送り

終末高高度防衛ミサイル(THAAD=サード)の在韓米軍への配備の協議が先送りになりました。

鈴置:「韓国が米国の言うことを聞くのか、中国の言うことを聞くのか」で注目を集めていた問題です(「日米の同時『格下げ宣言』に慌てる韓国」参照)。

 米韓は4月10日にソウルで開いた両国の国防相会談の後「THAADの問題は話し合われなかった」と発表しました。

 聯合ニュースの「韓米国防長官共同記者会見……THAADは論議しなかった」(4月10日、韓国語)によると、「米国はTHAADを配備する考えはあるのか。あるとしたらいつ頃、結論を出すのか」との問いにカーター(Ashton B. Carter)米国防長官は以下のように答えました。

  • THAADは本日の議題に含まれていない。理由は、まだ生産段階にあるためだ。配備の場所に関する論議もまだしていない。時期についても生産の進行状況により決定が下されるだろう。そしてこれに関連し、訓練と配備の可能性が議論されることになる。全世界の誰ともまだ、配備問題を論議する段階ではない。

星取表の判定を変更

 3月11日に青瓦台(大統領府)は「THAAD配備に関する3NO」を宣言しました。米国から要請されたこともないし、協議したことも、結論もない――から「3NO」なのです。

 はっきり言えば、韓国はTHAADに関する米国との協議を拒否したのです。さらに今回の米韓国防相会談でも、建前だけでしょうけれどそれを貫いた。だからカーター国防長官も「議題に含まれていない」と答えざるを得なかったのです。

これで韓国は中国の怒りを避けられましたね。

鈴置:ええ。中国は「配備を認めれば、戦略武器――核兵器の攻撃対象にするぞ」などと脅していました(「『核攻撃の対象』と中国に脅される朴槿恵」参照)。確かに当分の間は、韓国は脅されにくくなるでしょう。

 これまで「早読み 深読み 朝鮮半島」に載せてきた「米中星取表」。THAADの項目では「まだ完全には勝負がついていない」との判断から「―」の印を付けてきました。

 しかし「3NO」と言い出すほどに韓国が露骨に「離米従中」――同盟国たる米国の意向を無視し、中国の指令に従うようになった以上、THAADの項目は「米国が劣勢」と判断して「▼」に、中国は「優勢の△」に判定を変えることにしました。

米中星取表〜「米中対立案件」で韓国はどちらの要求をのんだか
(○は要求をのませた国、―はまだ勝負がつかない案件、△は現時点での優勢を示す。2015年4月15日現在)
案件 米国 中国 状況
日本の集団的自衛権
の行使容認
2014年7月の会談で朴大統領は習近平主席と「各国が憂慮」で意見が一致
米国主導の
MDへの参加
中国の威嚇に屈し参加せず。代わりに「韓国型MD」を採用へ
在韓米軍への
THAAD配備
青瓦台は2015年3月11日「要請もなく協議もしておらず、決定もしていない(3NO)」と事実上、米国との対話を拒否
日韓軍事情報保護協定 中国の圧力で署名直前に拒否。米も入り「北朝鮮の核・ミサイル」に限定したうえ覚書に格下げ
米韓合同軍事演習
の中断
中国が公式の場で中断を要求したが、予定通り実施
CICAへの
正式参加(注1)
正式会員として上海会議に参加。朴大統領は習主席に「成功をお祝い」
CICAでの
反米宣言支持
2014年の上海会議では賛同せず。米国の圧力の結果か
AIIBへの
加盟 (注2)
米国の反対で2014年7月の中韓首脳会談では表明を見送ったものの、英国などの参加を見て2015年3月に正式に参加表明
FTAAP (注3) 2014年のAPECで朴大統領「積極的に支持」
(注1)中国はCICA(アジア信頼醸成措置会議)を、米国をアジアから締め出す組織として活用。
(注2)中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)設立をテコに、米国主導の戦後の国際金融体制に揺さぶりをかける。
(注3)米国が主導するTPP(環太平洋経済連携協定)を牽制するため、中国が掲げる。
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