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老人ホーム化する刑務所、「出るのが怖かった」−高齢化で医療費増も

Bloomberg 4月16日(木)6時32分配信

社会福祉士の支援で5年前に長崎県諫早市の養護老人ホーム聖フランシスコ園に入所した。1日のほとんど園内の農園で野菜を育てることに費やし、テレビで喜劇を見ることが楽しみだ。入所以来、犯罪は一度も起こしていない。

「今が生きていた中で一番幸せだ」と男性は養護老人ホームの4畳ほどの自室で日に焼けた顔をしわくちゃにして恥ずかしそうに笑った。「食事はおいしいし、誕生日を祝ってもらえるし、毎日風呂に入れる。刑務所から出るときに世話をしてくれた人たちを絶対裏切りたくない」。

「出るのが怖い」

高齢受刑者の多くは、孤児院で育ち、身体的、性的暴力を受けていたり、障害があるにもかかわらず家族の支援が受けられなかったりなど、難しい過去を背負っていると長崎県地域定着支援センター所長の伊豆丸剛史氏は言う。伊豆丸氏が以前に支援した元受刑者は「刑務所から出るのが怖かった」と彼につぶやいた。刑務所での生活は望んでいなかったが、外での生活はもっと嫌だったからだという。

「その言葉に、罪を犯さざるを得なかった当人と、社会的問題の根幹が濃縮されている気がした。服役を繰り返し、高齢化していくと社会復帰できる要素がだんだん削られていく。ある程度資源が残っている早いうちに介入する必要性を感じている」と伊豆丸氏は述べた。

社会福祉士の伊豆丸氏は、こういった受刑者を訪問・面接し、出所後の居住地を探す手伝いをしている。また出所を控える複数の受刑者に対して講義をしたりもする。全国の地域定着支援センターは過去5年間で1000人以上の受刑者を支援した。

再犯

刑務所や検察庁でも社会福祉士を採用し、出所予定者を地域定着支援センターに紹介したり、検事が事件の相談をしたりしている。満期高齢受刑者の再犯率は下がりつつあると法務省矯正局総務課長の大橋氏は述べた。

再犯により刑務所に収容される受刑者の約70パーセントが無職だ。政府は20年までに、犯罪や非行をした者の事情を理解した上で雇用する企業の数を現在の3倍の1500社まで増やす目標も同時に掲げた。

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最終更新:4月16日(木)6時32分

Bloomberg