ここから本文です

老人ホーム化する刑務所、「出るのが怖かった」−高齢化で医療費増も

Bloomberg 4月16日(木)6時32分配信

医療費

受刑者の医療費も年々伸びている。法務省によると、14年度の薬剤費および医療機材費は過去9年で倍増し、年間60億円だった。受刑者の病院搬送も9年で倍増し、12年に1278件に上った。

厚生労働科学研究「罪を犯した障害者の地域支援に関する研究」は、03年に元衆議院議員の山本譲司氏が自身の刑務所での経験を基にした著書「獄窓記」(ポプラ社)で刑事施設に在所する障害受刑者の実情を紹介したことを契機に始まった。研究報告後、政府は09年から47都道府県に地域定着支援センターの設置を進め、社会復帰支援を行っている。

累犯者問題は06年1月、西日本旅客鉄道の下関駅が放火されて74歳の男性が逮捕されたとき、社会的にも注目された。容疑者は、事件の8日前に刑務所から出所し、空腹と寒さに耐えられず、刑務所に戻りたくて放火したと供述した。知的障害を持ち、事件それ以前も放火、放火未遂を繰り返し、10回服役した経験があり、人生の40年以上を刑務所の中で過ごしていた。

病気

法務省矯正局総務課長の大橋哲氏は、「彼らはどこのセーフティーネットにも引っかからず、刑務所に落ちてきてしまった人たちだ。本来、福祉を受けていれば正常な生活をしていた人たちで、福祉へつなぐことでそこに戻していこうとしている」と述べた。

法務省によると、12年度の時点で、受刑者の3分の2は何らかの病気に罹患(りかん)していた。循環器疾患が一番多く、続いて精神および行動障害だった。

受刑者の高齢化に対応するため、刑務官は介護士のような役割も果たしている。福島刑務支所長の赤間ひろみ氏によると、高齢で障害を持つ受刑者の排せつ物清掃や、歩行補助を娘や孫の年齢の刑務官が担当している。

隣接する福島刑務所(男性刑務所)は1月、4人の受刑者を病院搬送した。その警備に刑務官24人を割かなければならなかったため、現場に残った刑務官への負担が増えたと所長の太田実氏は述べた。

6ページ中3ページ目を表示

最終更新:4月16日(木)6時32分

Bloomberg

 

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画