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スケルトンの奴隷商 作者:いり

エイディアスの骸骨商会

はじまりの廃村

廃村へとやってきた。
人が住まなくなったその村は、至る所から雑草が伸び、崩れた屋根、打ち壊された家々など、至る所が荒廃していた。
聞いた所によると、何ヶ月か前にモンスターの群れに襲われてほとんどが全滅。
残った村人も別の村に散り散りになったらしい。
それは俺にとって、とても好都合だった。

「隊長、警戒たのむ」

背後についてきていた隊長に指示を出す。
隊長は分かったとでも言うようにカクカクと顎を揺らした。
隊長は声も無く身振り手振りで回りにいた部下達に指示を出す。
隊長の命令を受けて、カクカクと部下達は顎を揺らす。
さて、どこから探そうか。
散開していくみんなを見つつ視線を巡らすと、早速目当ての物を見つけた。

血の跡だろうか。
風化した漆喰の壁に落書きしたように黒い染みが踊っている家。
その前に白い塊がある。
遠目には石のようだ。
しかしそれには大きな穴がふたつ。
さらにその下にひとまわり小さな穴がひとつ。
風雨にさらされ、綺麗に漂白されていた。

ドクロだ。

シャレコウベとも言うだろう。
その下には体の骨が無造作にまとめられたかのように積み上がっている。
簡単に骨の状態をチェックする。
状態は良い。
胸の辺りにいくつか砕けている部分もあったが、これくらいなら魔法で十分に修復が出来る。

腰に下げていたリングにまとめられていた古鍵のひとつを右手に取り、左手を積み上げられた骨にかざす。

一瞬だけ目を閉じ、再び開くのに合わせて頭の中で魔法式を展開した。

左手から骸骨に光の粒子にも似た物が放たれ、集まっていく。
光の粒子は世界に干渉し、書き換え、そして力を発揮する魔法のコード。
それに合わせて念じる。

応えよ。
力を求めよ。
そして我に従え。
下れ。

魔法の進行に合わせて手にした古鍵に黒いもやのような物が集まっていた。
展開しているのはアンデッド創造魔法、ネクロドライブ。
死せる肉体に再び造られた魂を吹き込み、偽りの再生を与える魔法。
それがただの骸骨をアンデッドのモンスター、スケルトンへと変えていく。

骸骨を見れば、元が戦士だったのか、それとも一般人だったのかはある程度分かる。
この骸骨はただの村人Aだったのは間違いない。
これで造れるのはただのスケルトンだろう。

素体となる骸骨にも格があり、より強い素体の骸骨を使えば上位のスケルトンを呼び出す事が出来た。

魔法のコードに引かれるように、やがて骸骨の頭が浮かび上がった。
頭だけじゃない。
肋が、背骨が、腕が、骨盤が、脚が、そしてすべての骨がまるで人体標本のように宙に引かれていき、立ち上がる。

「ネクロドライブ」

言葉に応じて手にした古鍵に集まっていたもやがその中へと吸い込まれた。
魔法の完成。
それとともに、立ち上がった骸骨がかくかくと顎をならす。
これでコイツは路傍の石と変わらなかった骸骨から、俺によって造られた魂を持つスケルトンへと生まれ変わった。

「良し。俺の言う事が分かるか?」

かくかくと顎を鳴らす。
良し。分かっているようだ。

造られた存在とは言え、スケルトンにも意志はある。
スケルトンの格にもよって程度は変わるが、きちんと思考も存在している。
その思考が言葉としてコイツから発せられる事は無いが。

高位のスケルトンには自在に話す者もいるらしい。
ただ言葉を交わせなくとも、使役する術者とスケルトンの間にはある種の絆がある。
そのためか、気配というか雰囲気が伝わってきて、言いたい事は何となく理解する事が出来る。

「それじゃあ取りあえずは俺に付いて来い」

かくかく。
顎を揺らすと新顔スケルトンは俺の後ろへと移動した。

さて、掘り出し物はあるか?

手にしていた古鍵を胸から下げた鎖、既にいくつかの古鍵がぶら下がっているそれに付け、村の奥へと足を踏み出した。
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