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マクドナルドの「時給1500円」で日本は滅ぶ。 (中嶋よしふみ SCOL編集長)

シェアーズカフェ・オンライン 4月16日(木)5時58分配信

先日、ファストフード店の時給を1500円以上に上げるべきだ、というデモが各地で開催された事が報じられていた。

「ファストフード店などで働く人の賃金アップを求める世界的な取り組み「ファストフード世界同時アクション」に合わせ、東京・渋谷など24都道府県30都市で15日、アルバイトの若者らが時給1500円の実現を訴えるアピール行動をした。
<ファストフード>世界同時 賃上げ1500円アピール 毎日新聞 2015/04/15」

ファストフードを象徴するマクドナルドのキャラクター・ドナルドに白塗りで扮したデモ参加者もいたようで、実際に目にした人も居るかもしれない。

時給が低いから生活が困窮している、だから時給を上げれば生活は改善する、という事なのだろう。さて、これは正しいのだろうか。結論から言うと100%間違いだ。もしファストフード店の時給が1500円以上になればマックもロッテリアもモスもすべてのお店がつぶれる。

■デモは誰にアピールしていたのか?
時給は都道府県ごとに最低賃金が定められている。これを上回る限りいくらに設定するかは企業側の自由だ。そう考えるとこのデモは誰に対して何を要望しているのかさっぱりわからない。経営者へのお願いなのか、政治家への要望なのか、それとも世間に向けたパフォーマンスなのか、全く持って意図も目的も不明だ。

ただ、意味が分からないと切り捨てるのも可哀想だ。加えて給料が上がる事自体は悪い事ではない。では給料アップはどのように実現する事が正しいのか、今回のデモを材料に考えてみたい。

■デモの主張はファストフード店を壊滅させる。
まず、あえて重箱の隅をつつくようなところから議論を始めると、たとえばファストフード店だけが最低賃金を時給1500円に上げればいけない、というおかしな法律が実際にできたとする。そこで起きることはファストフード店だけが価格を大幅にアップせざるを得ず、他の飲食店やコンビニエンスストア、お弁当屋などに客が流れてファストフード店が壊滅する事だ。

つまりこのデモの内容をストレートに受け取ればファストフード店を壊滅させる主張だという事になる。マクドナルドやモスバーガーの利益率は、2・3%程度で、他のファストフード店も同水準だろう。従業員の大半を占めるアルバイトの時給がこれだけ上がれば、まともに経営できるはずもない(マクドナルドは利益が出ていた頃)。

ファストフード店の時給を上げろという主張の真意は、おそらく業種を問わず従業員の最低賃金を上げるべきだ、という事だと思われる。最低賃金の大幅な引き上げは低い時給で働いている人にはプラスになりそうだが、果たして何が起きるだろうか。

■時給1500円の世界で起こる事。
まずは雇用が減る。給料の高い従業員を雇うとよそと競争が出来ない。全業種の従業員が時給1500円以上なら条件は同じじゃないか、と思われるかもしれないが、今までは人の手でやっていたことが、高コストになるのなら機械に置き換えよう、という事になる。

半導体を作る工作機械などを見れば、現在の機械がどれだけ素早く、複雑な動きが可能かわかるだろう。飲食店のかなりの部分がオートメーション化も可能だと思われる。今までは高価な機械と人手を比較して割安なほうが選ばれていたのが、時給が高くなれば機械でやろうという事になる。

現在、アマゾンの配送センターでは急激な機械化が進んでいる。1万5千台ものロボットを導入する事で500億円から最大1000億円の人件費を削減しているとも伝えられている。こういった事例からわかることは、解雇は規制できても雇用は強制できない、という事だ。

■時給1500円で国内産業は空洞化する。
次に起こることは国内産業の衰退だ。人件費が上がればあらゆるモノの価格が上がる。すると企業にとって仕入れコストが上がる。これを抑えるには海外からの輸入品で代替しようという事になる。今までは輸送コストなどを考えれば国産品のほうが安かったものが人件費の高騰で割高になれば輸入品に切り替えよう、という事になるだろう。

産業空洞化を押しとどめるために関税も上げてしまえ、という事になれば相手国にも関税をあげられて、外貨を稼ぐ輸出産業が壊滅するだろう。現実的に考えて高い賃金を維持するために関税を引き上げることは不可能だ。

そして言うまでもなく価格上昇で需要が減る。販売価格が上がっても所得が増えていれば問題ない、という事なのかもしれないが、すでに書いたように国産品が可能な限り輸入品に置き換えられ、国内で回っていたお金が海外に流れるだろう。結果として雇用が減り、負のスパイラルとなる。

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最終更新:4月16日(木)6時30分

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