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ライターの大塚幸代さんが亡くなりました(「訃報です」制作日記より)。連絡を受けてからもうしばらく経ちますが、今なおはっと思い出してどうしていいか分からなくなります。
2002年のサイト開始からずっと書き続けてくださった大塚さんの記事のなかで、一番好きなもの、印象に残っているものをライターや編集部の面々に聞きました。 この記事が追悼記事にあたるのかと思うと「追悼」という言葉の意味に驚いてしまいます。そんななかで選んだ記事たちです。 > 個人サイト デイリーポータルZ 記事は公開順に並べました。
2003年炎天下 中央線ウォーク (2003/8/6)
> 歩くだけで元気になれるなら、もっともっと歩きたい。歩かせてくれ。
この記事、「歩かせてくれ」で終わっているので覚えてます。 ある特定の文章は人の気持ちをざわつかせたり、行動を起こさせたり、念力みたいなことができます。 大塚さんもその力を持ったひとりでした。 ネットの向こうの遠くにいる人を指一本触れずに動かす。ほんとに超能力です。 この記事もプツッと終わってて、全然まとまってません。 混乱を混乱のままうけいれて、混乱している自分をそのまま伝えてます。気の利いた言い回しでもないし、むしろ放り出したような書き方なのにひっかかります。 でも、きれいにまとめるなんて嘘くさくてかっこわるいし、このほうが誠実である気がします。 自分でも扱いきれない大物の魚を釣り上げてしまって、ビチビチ動いてるあいだに読者に放り投げてるような感じ。 そんなもの受け取った方だって困るわ、という話です。 なんて語ってしまいましたが、ただ単に大塚さん得意技の悩んでる風文体かもしれないし、どっちも正解だろうしどっちでもいいしもうどっちかわからないですね。(林 雄司) 青くする実験 (2003/11/12)
僕は昔から、大塚さんの食べ物記事が大好きでした。美味しいものが好きなはずなのに、どこか食事そのものに対して突き放したような不思議な距離感があって、クールでいいなと思っていました。 初めて読んだ(たぶんそのはず)大塚さんの記事がこの『青くする実験』だったから、そういう印象が強くなったのかもしれません。文章を盛り上げながらも冷静に食事をもてあそぶ感じが本当に格好良かった。 ギャルになりたかった(2003/11/12)
この記事のまとめを読んだ時のインパクトは10年以上たった今でも忘れません。 「スッキリする」が、これだけわかりやすく生々しい言葉になっているのが衝撃でした。うまいこと言ってやろうという気負いがなく、さらっと書いた感じなのが(たぶん本当にそうなんだと思います)生々しさを増しているような気がします。 大塚さんの文章はこれに限らず突然脳にささってくるような表現が出てきて、はっとさせられることがありました。その中でも一番インパクトがあったのがこのまとめです。一生忘れられないと思います。(べつやくれい) 2004年新宿の紙きれをバッジ化する (2004/2/25)
実は、ベトナムフェスで…。 (2004/6/9)
「すいません、まずは、ベトナムフェスとは関係ない話から、きいてください」と、ついていないある日の記述から始まる記事。本文では大塚さんがいつもいっていた「息をとめて対象に一歩寄る」方法で撮影された写真でベトナムフェスが無理やり上げたようなテンションでレポートされて、最後に抽選でベトナム行きの旅行券が当たるという。それで戸惑って終わります。
戸惑って終わる! 初めて読んだときに、この衝撃は大きかったです。衝撃度でいえばその当たったチケットで行ったベトナムレポートのほうがもっと大変なのですが、ついていない日々と幸運の戸惑いがしっかり地続きなのが印象的で読んでから今まで何度も何度も思い出しています。(古賀及子)
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