アシアナ機事故:機内混乱「赤ちゃん大丈夫か」「死意識」
毎日新聞 2015年04月15日 11時45分(最終更新 04月15日 15時13分)
着陸に失敗して乗員乗客計27人が負傷した14日夜の広島空港(広島県三原市)のアシアナ航空機事故。雨の中、緊急脱出装置で機外に逃れた複数の乗客が撮影した動画には「赤ちゃん大丈夫か」と叫ぶ人や、乗務員に食ってかかる乗客らしい人の声など、生々しい音声が収録されていた。多くの乗客が「死を意識した」と話す混乱の様子が伝わってくる。
動画の一つは、韓国で家族旅行をした帰りに事故に遭った広島県安芸高田市の男性会社員(29)が機内から脱出した直後、家族を連れて走って逃げながら撮影したもの。消防車のサイレンが鳴り響き、遠くに機体が見える。暗闇の中、女性が「逃げて! 赤ちゃん大丈夫ですか」などと叫んでいる。
男性によると、着陸の5分ほど前、高度を下げる機体が大きく揺れた。着陸と同時に「バーン」という大きな音がして上下に揺れ、乗客の女性らの「キャー」という悲鳴が機内に響いた。両側の窓の外に火柱が見え、床から出る焦げ臭い煙で視界が悪くなり、機内は一気にパニック状態になった。
機体が停止すると、客室乗務員が機体中央の両側の非常口を開けようとしたが、開かない。乗務員までが冷静さを失っている様子を見て、男性は「もうだめかもしれない。外に出られない」と思ったが、後方から「逃げてください」と乗務員の声が響き、何とか機外へ逃れた。
男性は「機体が爆発するかもしれないと恐怖でいっぱいだった。家族を守ろうと、急いで逃げた。とにかく焦っていた」と話す。
もう一つの動画は、別の男性(58)が、機体から脱出した直後にデジタルカメラで撮影した。撮影時間は約20秒。傾いた機体や消防車、逃げる人影のほか、女性が甲高い声で乗務員をののしるような声が収められている。
事故から一夜明けた15日、広島空港は滑走路の閉鎖が続く影響で航空便の欠航が相次いだ。2階出発ロビーでは、搭乗予定客らがキャンセルや別便への振り替えの手続きをしていた。