印南敦史 - アイデア発想術,スタディ,仕事術,書評 07:30 AM
「A4メモ」でシンプルに可視化すれば、心のモヤモヤがスッキリする
『1分書くだけ 世界一シンプルなこころの整理法』(赤羽雄二著、朝日新聞出版)は、ベストセラー『ゼロ秒思考』の著者による新刊。職場の人間関係や不安などを解消するための、独自の方法が紹介されています。いったい、それはどんな方法なのでしょうか? 序文には次のように記されています。
必要なのはペン1本とA4の紙。
1分間、書くだけで、モヤモヤが晴れ、こころの奥底から自身がわいてくる。
(中略)
だまされたと思ってまずは1枚、書き出してみてください。
驚くほどこころがすっきりし、様々なことがクリアに見え、さらには人間関係にもよい効果が表れてきます。
つまり、書くことによってこころのなかのモヤモヤを捨て去るという手段。具体的なメソッドを、第3章「世界一シンプル! A4メモの書き方」から引き出してみましょう。
こころのなかをすべて書き出す
悩まずに「考える」ためには本質的な問題を特定することが重要で、そのために効果的な方法はA4メモなのだといいます。A4メモは著者が始めたメモの書き方で、ごく当たり前のように見えるものの、全体的に見ると、メモの書き方、使い方としては「かなりユニーク」なのだそうです。
朝起きてから寝るまでの間、頭に浮かぶこと、モヤモヤすること、気分が悪いこと、こうしようと思うことを全部書き出していきます。しかもA4用紙に一件一葉で、1ページ1分程度で書きます。(42ページより)
それだけのことで頭がすっきりして、どんどんことばが湧いて出るようになるとのこと。そして自分の気持ちがはっきりと目に見えるようになり、モヤモヤが驚くほど解消されていくのだといいます。
人は誰でも、悩んだり考えすぎたりしてそのよさを発揮できないもの。しかし頭の中身や気持ちの揺れをA4メモに書き出していくと、悩みが減少し、気持ちが整理され、行動に移せるようになるというわけです。(42ページより)
1分で書く
思いついたことばをタイトルとして左上に書き、右上に日付を書き、本文は20〜30字。これがA4メモの基本。20〜30字の本文はただの箇条書きではなく、タイトルに関してある程度細かく書くことがポイント。このプロセスによって、言語化の能力が大いに刺激されるといいます。
また、1ページを1分で書くことも大切。「たった1分で?」と思いたくもなりますが、いざ書いてみると意外とできるもの。多くかかったとしても1分半くらいだそうです。
もしも急いで書かなければ、同じ内容を3分も4分も、あるいはそれ以上かけて書いてしまいがち。悩みに悩むからこそ時間がかかってしまうということで、それでは生産性が違って当然です。しかし速く書くことには、生産性以上に大きな2つのメリットがあるのだそうです。
まず第一に、1分程度で書いていれば負担にはならないため、いつでもささっと書けるということ。これは継続するうえでの鍵にもなるといいます。第二のメリットは、1分程度で書けば、頭に浮かぶことが消える前に、忘れず漏らさず書いてしまえること。忘れず書き留めるようにしていると、モヤモヤが減り頭のなかが常に整理され、全体を見渡せるようになっていくといいます。(43ページより)
一件一葉で書く
A4メモを書く際は、1ページにあれこれ詰め込まず、一件一葉で書くことがポイント。たとえば、「なぜ昔、会議の開始時刻に集まってくれないのか」ということが頭に浮かんだらそれで1ページ、別のことが頭に浮かんだらそれで1ページというように、1ページに1テーマだけを書くというスタイルです。
1ページに詰め込もうとすると、どんどん足していって別件まで書いてしまうことに。するとカテゴリーごとにフォルダ分けするときなどに困り、余計に時間もかかり、精神的な負担も大きくなっていくといいます。もちろん、スピードを重視するという大事な習慣も身につかないわけです。(44ページより)
タイトルを書くときの3つのコツ
A4メモのタイトルを書くときは、3つの方法があるそうです。第一は、思いついたこと、モヤモヤすること、気になることをそのまま書き出していくという普通の書き方。第二は、「多面的に書く」方法。そして第三は、「深掘りして書く」やり方(第二、第三については後述)。
多面的に書くとは、いま気になっていることをさまざまな角度から見るということ。そうすることにより、びっくりするほど状況をよく理解できるようになるといいます。つまり、自分の心のなかを鏡に映し出すように見ることができるということ。だからこそ、少し込み入った場合は「多面的に書く」ことがいいわけです。(46ページより)
いろいろな角度から多面的に書く
たとえば上司とのコミュニケーションがうまくいかずモヤモヤすることが多い人は、気になることをまずメモに書いてみる。「上司とのコミュニケーションを改善するには」というタイトルが浮かんだなら、A4用紙を横書きにして、そのタイトル通りの内容を手書きで書くのだそうです。
それだけでも完成ですが、「重要な内容なのでもうちょっと書いてみたい」という場合は、次のように似たようなタイトルを思いつくままに書いていく。いろいろな角度から書いているので、「多面的に書く」と呼ぶわけです。
・どういうとき、上司とのコミュニケーションがうまくいかないのか
・どういうとき、上司とのコミュニケーションがうまくいくのか
・上司とのコミュニケーションをいつもうまくできる部下はどうしているか
・上司とのコミュニケーションをいつもうまくできない部下はなにが問題か
・自分と上司とのコミュニケーションを客観的に見るとどう見えるか?
・上司にはどういう悩みがあるのか
・上司のコミュニケーションスタイルはどうやってできあがったのか
・上司はなにをコントロールしようとしているか
・上司が苦手なコミュニケーションのスタイルは
・上司は部下に対してどう考えているか
(48ページより)
こうして違う角度から書いてみると、さまざまなことが見えてくると著者はいいます。そして、ひとつひとつについて思ったことを書き続けると、さらに気持ちがすっきりすることに。言い換えれば大半の悩み、モヤモヤは、自分を客観視するとかなりの程度まで消えてしまうということです。(47ページより)
深掘りして書く
「深掘りして書く」とは、ひとつのタイトルでメモを書いたあと、その各行をタイトルとして新たに4~6ページの新しいメモを書くこと。まとめページがあって、それぞれを詳しく説明していくようなイメージです。
また、深掘りメモの各行をタイトルにして、さらに書き進めることも可能。こうして書き続けると、悩んでいることが10〜30ページのメモになるわけです。1ページを1分〜1分15秒程度のスピードで書いたとすると、10〜40分で書き終えることができます。そして、たったそれだけのことで、思いついたことや不安が本当はどういうものだったかが、かなり見えてくるようになるそうです。(50ページより)
悩みや不安、モヤモヤしていることを溜め込んでおくと、どんどん深みにはまっていったとしても当然。しかしA4メモの習慣をつければ、そんな状態を避けることができるかもしれません。
(印南敦史)
- 1分書くだけ 世界一シンプルなこころの整理法
- 赤羽雄二朝日新聞出版