-安倍首相は慰安婦連行に「強制性」があったかどうかに特にこだわっています。
「慰安婦問題が台頭した初期に、韓国で『(日本の軍警が韓国人女性を)奴隷狩りをするかのように連れ去った』などの主張が広まった。こうした主張は明らかに事実と異なる部分がある。日本の右翼傾向がある一部の学者は(そうした初期の間違いを口実に)『銃刀を使って連行した証拠はない』と主張した。さらに、『慰安婦は売春婦だ』という主張も広まっている。安倍首相もこうした論理の影響を受けているようだ。多くの研究を見ると、元慰安婦のほとんどは旧日本軍の委託を受けた業者にさまざまな手段で連行された。これら業者は女性たちを旧日本軍所有の船舶に乗せ、中国や東南アジアの慰安所に連れて行った。慰安所で強制されて生活していたという点は認めなければならない」
-慰安婦問題をいつ、どのようにして知りましたか。
「1950年代の在日韓国人小説家・金達寿(キム・ダルス)=1919-97年=が書いた『玄界灘』という小説を読んだ。そこに慰安婦の話が出てくる。この問題こそ植民地時代に行われた『最も残酷なこと』だと思っていた。だが、その時は証言もなく、きちんと研究する人も少なかった。91年の金学順(キム・ハクスン)さんの証言がすべてを変えた。その証言がきっかけで93年に日本政府が慰安婦問題を認める河野談話を出した。続いて95年の村山談話で慰安婦問題の原因となった植民地支配を謝罪した。知識人たちが政治家や官僚を説得してアジア女性基金を作った」
-しかし、今は韓国でむしろ反発を買っています。
「当時、日本政界の3分の1は『国の名義で植民地時代を反省してはならない』と考えていた。若い政治家たちのリーダーだった安倍首相もその1人だった。大蔵省=当時=も反対した。基金側関係者は『何かしなければ。不十分な措置だとしてもひとまず始めよう』と言った。日本国民の募金を『償い金』名目で日本の首相の謝罪の手紙を添えて元慰安婦に渡すことにした。これが韓国をかえって激怒させた。多くの元慰安婦が『日本政府の正式な謝罪でないなら、こんな金はいらない』と言った。韓国では『アジア女性基金は結局、元慰安婦をだまそうという策略に過ぎなかった』と批判の声が上がった。だが、決してそうではなかった。限られた条件の下で心から努力した。ただ限界があった。振り返ってみると、慰安婦問題を解く『きっかけ』だったと思う。それを逃した。私の責任も大きい」