(テーマ音楽)四国高知県の南の端足摺岬に近い竜串湾です。
かつての海底が隆起した海岸線。
波や風が幻想的な景観を生み出します。
湾内には暖流黒潮が育む日本屈指のサンゴ群集とそこに集うたくさんの生き物たち。
この時期カラフルなウミウシの仲間も一斉に姿を見せ始めます。
早春一足早く竜串の海に訪れた命の芽吹きを見つめます。
高知県西部に位置する竜串湾。
足摺宇和海国立公園の中にあります。
黒潮が近くを流れるため一年を通して温暖な海です。
無数の岩が陸地に突き刺さる串のように見えます。
これが「竜串」という地名の由来。
竜の形をした陸地が串刺しになったような不思議な地形です。
およそ2,000万年から1,500万年前ちょうど日本列島が出来た頃の地層があらわになっています。
ここは海のプレートが陸のプレートにぶつかる場所。
その圧力で海岸が隆起し地層が傾いているのです。
足元にある突起。
アナジャコの巣穴の化石です。
アナジャコが砂に掘った穴の内面が固まり風化せずに残りました。
生物の生きた痕跡をとどめている事から「生痕化石」と呼ばれます。
竜串湾の特徴的な地形は海底まで続いています。
春この海に姿を現す小さな生き物がいます。
体長およそ2センチ。
冬の間成長し春になるとよく目にするようになります。
「海の宝石」とも呼ばれるウミウシたち。
竜串には日本に生息する種類の1/3近くがいます。
黒潮に乗って南からやって来る種類も多いため300種以上が見られるのです。
ウミウシは貝殻が退化した巻き貝の仲間。
背中に突き出たエラで呼吸します。
こちらは…突然飛び出てきたのはなんと口。
岩に付着した小さな生き物を食べています。
沿岸を暖流黒潮が流れる竜串湾。
日本屈指のサンゴ群集が形成されています。
このテーブル状のサンゴはミドリイシの仲間。
岩場に多いサンゴです。
沖縄などの亜熱帯とは異なり竜串の海は温帯に当たります。
黒潮の影響で冬でも海水温が16℃を下回る事がないためおよそ100種類のサンゴが生息しています。
サンゴは「ポリプ」と呼ばれる小さな個体が集まって出来ています。
形は違いますがこれもポリプ。
その一つ一つが海中のプランクトンを食べて生きています。
長く大きいポリプが波に任せて揺れるハナガササンゴです。
竜串湾は温帯に生きるサンゴの貴重な生息地になっています。
陸と海で豊かな表情を見せる竜串。
その一角に白い砂浜の広がる特別な場所があります。
ここで見られる不思議な景観。
岩に無数の穴が開いています。
まるで蜂の巣のような形です。
比較的もろい砂岩に海水が染み込み岩の表面が徐々に削られて出来ました。
この穴をうまく利用している生き物がいます。
直径僅か5ミリ。
貝の仲間ですが肺で呼吸し水を嫌います。
風や波をしのげる穴の中は格好の住みかです。
海の中にも特別な世界が広がっています。
岩のように見える塊実はサンゴの仲間。
その大きさは東西45メートル南北26メートル。
日本最大級です。
一年を通して穏やかな内湾だからこそここまで成長し続けたのです。
板を縦に組み合わせたような複雑な形をしたシコロサンゴ。
その隙間はたくさんの魚たちに身を隠す場所を与えています。
サンゴの下には空洞が生まれています。
そこに群れていたのは無数の魚たちです。
本州中部より南に生息する魚でここでは一生をシコロサンゴ周辺で過ごします。
現れたのは…こうした大型の肉食魚も小魚を狙って集まってきます。
150年以上の長い年月をかけて形づくられた巨大なサンゴ。
湾内で最も多くの生き物が見られる竜串湾の命の揺りかごです。
春の大潮。
潮が引いて現れる竜串の海岸線は一年で最もにぎやかな季節を迎えます。
春の日ざしで藻類が成長。
それを食べているのはウミウシの仲間…こちらは直径2センチほどの…どうやら繁殖の相手を見つけたようです。
岩に産み付けられた黄色い塊。
カラマツガイの卵です。
こうした光景が磯のあちこちで春の終わりまで続きます。
海の中も繁殖の季節です。
見つけたのは白いウミウシ。
よく見ると2匹が寄り添っています。
その上に見えるのは卵の塊。
こちらも無事に子孫を残したようです。
来年の春には再び小さなウミウシが姿を現してくれるはずです。
高知県の南の端に広がるサンゴの楽園竜串湾。
一足早い春が訪れたこの海で数々の命が受け継がれていました。
はいどうぞ。
2015/04/12(日) 07:45〜08:00
NHK総合1・神戸
さわやか自然百景「高知 竜串の海」[字]
高知県竜串には、およそ100種のサンゴが生息、日本最大のシコロサンゴの大群落が広がる。海底に姿を現わすのはカラフルなウミウシたち。海中に訪れた春の息吹を描く。
詳細情報
番組内容
四国西南部、足摺宇和海国立公園内の高知県竜串。海岸にはプレート運動と風や波が作り出した奇岩が並ぶ。それが沈降してできた海底には、およそ100種の多種多様なサンゴが生息、日本最大のシコロサンゴの大群落やエンタクミドリイシの平原に様々な生きものが集まる。冬、竜串の海底に姿を現わすのはカラフルなウミウシたち。日本のウミウシの4分の1にあたる300種以上が生息する。竜串湾の海中に訪れた春の息吹を描く。
出演者
【語り】安部みちこ
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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