ふるさと再生 日本の昔ばなし 2015.04.12


(拍手)え〜十人十色とか申しまして人は顔かたちが違うように性格も人それぞれでございます。
さてここは寅さんの住む貧乏長屋。
なにやらぞろぞろと人が集まってまいりました。
(寅)実はな今日は俺の生まれた日なんだ。
(八)生まれた?
(松)おめえが?
(竹次)どこからわいてきた?この野郎!ぼうふらじゃあるめえしどぶからわいてきたわけじゃねえや。
おふくろの腹の中からに決まってんだろ。
なんだ普通じゃねえか。
普通ってやつがあるかいあたりめえのことだ。
まあせっかくみんなが集まったんだ。
茶でも飲みながら子どもの頃の話でもしようじゃないかね?いい大人が集まって茶はねえだろ酒はねえのかい?おめえが銭出すなら買ってくるぜ。
あっ茶でいいや。
子どもの頃っていえば松公は泣き虫だったな。
虫を見ただけですぐ泣いちまう。
バカ野郎今じゃ虫を見つけたらペロッと食っちまうわ。
ギャ〜!
(笑い声)松公ペロッと食うんじゃねえのか?突然出てきたんでびっくりしただけだ。
確かまっちゃんはヘビも嫌いだったな。
ああヘビと聞いただけで寒気がすらぁ。
ヘビだけじゃないぞウナギもドジョウもうどんもそばも長いものは全部いけねえ。
だからふんどしも締めねえ。
(梅吉)汚ねえ野郎だなふんどしくらい締めろよ。
(松)梅吉は何が怖いんだい?俺か?俺はカエルだね。
カエルを見ると身がすくんじゃう。
竹次は?
(竹次)俺はナメクジ。
ヘビにカエルにナメクジじゃ苦手同士の三すくみだ。
(松)違えねえ。
ところで寅の字は何が怖いんだい?俺はアリが苦手だね。
アリが集まってくるのを見るとゾッとするね。
へえじゃあ暑い日にアリを集めて家に持っていってやるぜ。
すまねえな。
ってそんなもんいらんわ!八てめえは何が怖いんだ?俺か?俺はなんといっても馬がいちばん怖い。
あのでっかい鼻の穴に吸い込まれちまうかと思うと死にそうになっちまう。
ギャ〜!うわ〜!!
(熊)やいやいてめえら!ヘビだのカエルだのナメクジだの挙げ句の果てにアリに馬だと。
いいか人間様がいちばん偉いんだぞ!そんな強いお前さんのことだい。
この世のなかに怖いもんなんてねえんだろうね。
あったりめえだあるもんかい。
よく考えてみろよよく探したらあるかもしれねえぞ。
うるせえなないっつってんだろ。
おめえらとは違うんだ。
おめえだって人の子だ。
ひとつくらいは怖いものがあるはずだ。
しつこいなないっつってんだろ。
人がせっかく忘れようとしてるのに思い出させやがって。
思い出すってことは何かあるんだね怖いものが。
あったって言うもんかい末代までの恥だ。
言うことが大げさだねいったい何が怖いんだい?言わねえよ言うとおめえたちが笑うから。
笑わねえよ。
笑う。
笑わないってば。
本当に笑わねえだろうな?もし笑ったらただじゃすまねえぞ。
実は…。
うん?まんじゅうが怖い!
(笑い声)ほら笑った笑った笑った。
あいや笑ったんじゃなくてさ驚いたんだ。
熊さんほどの豪傑がまんじゅうが怖いなんてウソだろう?いや本当だ。
(熊)とにかく俺はまんじゅうを見ると寒気がして震えが止まらなくなるんだ。
唐まんじゅうは?
(熊)ああいう値段の高いのがいちばん怖い。
(2人)そばまんじゅうは?やめてくれ!人が怖いって言ってるのに。
気持が悪くなってきた。
そいつはまずいね隣の部屋でひと休みしなよ。
すすまねえうっ…。
おいみんな聞いたかおかしな奴がいるじゃねえか。
まんじゅうが怖いだって言いやがら。
いつも威張ってる奴がよ。
(みんな)イヒヒヒ。
どうだい奴をまんじゅうで脅かしてやろうじゃないか。
おもしろいけどまんじゅうと聞いただけで顔色が変わるくらいだから死んじゃうよ。
それくらいで死ぬような奴じゃねえや。
まんじゅうのあんこで死んだらあん殺だ。
シャレ言ってねえでとっととまんじゅう買ってこい!
(みんな)へい。
(寅)これだけありゃ十分だろ。
じゃあ俺がこいつを奴の枕もとに置く。
そしたら奴を揺り起こしてパッと逃げるからないくぞ!
(寅)おい熊さん起きろよ熊さん。
ついうとうと…うわ〜ままんじゅうだ!大変だ助けてくれ!ヘヘ。
熊の奴まんじゅう見て震えてやがらざまあみやがれ。
(熊)うわ〜まんじゅう怖い!ヘヘヘあっ!おいおいお前だけ楽しんじゃいけないよ。
そうだ俺たちにものぞかせろ。
少し様子がおかしいんだ。
野郎怖い怖いと言いながらまんじゅう食ってるぜ。
あっしまった!一杯食わされた。
(みんな)なんだって!?おい熊公てめえまんじゅうが怖いなんてぬかしやがって騙したな。
怖いから食われる前に食ってやるんだよ。
あ〜怖い怖い。
(松)ふざけた野郎だ。
俺たちの銭で買ったまんじゅうだぞ!あ〜怖い怖い余ったら家に持って帰ってやっつけてやる。
ずうずうしい野郎だ。
熊てめえが本当に怖いものは何なんだ?ヘヘこのへんで濃いお茶が1杯怖〜い。
(みんな)うわ〜。
『まんじゅうこわい』の一席これにて。
(拍手)昔越後のある村にたいへん臆病な男がおりました。
あっかか起きてくれ早く。
もう毎晩毎晩私はイヤだよ。
男は1人で小便にも行けず毎晩女房に連れていってもらっていました。
かか終わったぞ。
あっあれかかどこへ行った?ここにおるよ。
ふわ〜。
本当にかかか?うわ〜お化けだ!もういいかげんにしておくれ。
かか待ってくれうわっ。
毎晩毎晩こんな調子だったので女房もほとほと困っておりました。
それから何日か経った雨上がりの夜のことです。
あっあ〜かかかか早く。
もう私はイヤだよ。
かかいるか?
(いびき)かか終わったぞ。
お〜かかここにいたか。
もう。
いつものように小便が終わって家に入ろうとしたとき。
うん?あ〜かか化け物が出た助けてくれ!男の首根っこを冷たい手が押さえ込んだのでした。
あんた。
化け物だ助けてくれ!バカだねいい歳をしてなに言ってるんだい。
化け物なんているわけないだよ。
いやいるいる冷たい手で化け物がオラの首根っこをつかまえてるだ。
つかまえてる?そんな…どれどれが化け物だ?なんじゃ?女房がよく見るとなんのことはない。
男の首根っこに雨だれが落ちたのでした。
ほ〜れ見てみなよ。
化け物の正体はあまんぶちだが。
あまんぶち?あああまんぶちじゃ。
本当に化け物はあまんぶちか?あまんぶちとは雨だれのことです。
ひゃ〜。
ほれ見たかい?化け物はあまんぶちだがな。
本当じゃ。
ほんじゃ化け物はみんなあまんぶちだか?そうだよ化け物なんかいねえんだよ。
なにもおっかながっちゃなんねえんだ。
そうかようわかった。
化け物というものはあまんぶちだな。
そうせば今日からオラ何もおっかなくねえど。
これで楽々しただ。
それからというもの男はたいへん気が強くなって何にも怖いものがなくなりました。
ちょうどその頃隣村に通じる峠の道に毎晩のように化け物が出て怖がって誰も通れないという話が伝わりました。
男はこの話を聞くとどうせその化け物はあまんぶちだろう。
その化け物はオラが退治してくれると物干し竿1本持って出かけました。
そして峠の中程まで来たとき…。
とびつこ〜んとびつこ〜ん。
でたな!あまんぶちめ!とびつこ〜んとびつこ〜ん。
とびつこ〜んとびつこ〜ん!とびつこ〜んとびつこ〜ん!とびつかばとびつけ!あまんぶちなか知れたもんじゃ!とびつこ〜んとびつこ〜ん!とびつこ〜んとびつこ〜ん!とびつこ〜ん。
あまんぶちめ!とびつこ…あっ!あっ!竿で尻をつつくと化け物は逃げ出しました。
あまんぶち待て〜!そして橋の真ん中まで来ると川へ飛び込んでしまいました。
あ!あまんぶちめどこへ消えた出てこい!おや?化け物の飛び込んだ川の中をつつくとチャリンチャリンと妙な音がしました。
おかしな音だ何だろう?すると川底に大きな瓶がありその中に大判小判がザックザックと入っていました。
こらまぁ大した宝物だ。
いったいどうしたことか。
おかしなこともあるもんだ。
男は瓶を抱き上げ橋の上に置きました。
すると瓶が突然…。
昔オラは金持ちのおとっつぁんの持物だったけどもおとっつぁんがオラをここに埋めたまんま死んでしもうた。
オラは一生の間このひゃっこい水の中にいるのも嫌だし世に出て誰かに使ってもらいたいと思ってただ。
どうせ使ってもらうなら勇気のある人がええだ。
それでわざと化け物になって毎晩人を探していたどもどれもこれも意気地のないおっかながりやばっかでみんな逃げてしまった。
ところがお前さんはえらいもんだ。
ちっともおっかながらんでオラの後を追っかけて来て銭瓶を見つけてくれた。
まことにありがたい。
どうかお前さんの好きなようにオラのこと使ってくれんかい。
なんとも不思議なこともあるもんだと思い男はその銭瓶を家に持って帰りました。
かか終わったぞ!あっそうか化け物なんかオラ怖くねえだ。
フフ…。
化け物なんてもんはあまんぶちや銭っこザクザクの銭瓶みてえなもんでちっともおっかなくねえだ。
どんとこいってんだぁ!こうして男は怖いものもなくなり銭瓶のお金で女房と2人一生安楽に暮らしたということです。
昔むかしあるところに流れの速い川があった。
少しでも雨が降ると山からどうっと水が流れ込み濁流となった。
橋は何度かけても…。
あっという間に流されてしまうのだった。
あの川の流れに負けぬ強い橋があったらなぁ。
うむ。
川の向こうと行き来もできぬ。
まったく不便でならぬ。
町でいちばん腕のいい大工を雇おうかのう…。
おお!それは名案じゃ!いちばんの大工を呼ぼう!おおこれはまことに手強そうな川じゃ。
町いちばんの大工は川の様子をみに村へとやって来た。
雲行きが怪しいひと雨きそうじゃ。
今日は引きあげたほうがよさそうだのう。
いや雨が降るなら都合がよい!どれほどの流れになるか見ておこう。
む!川はごうごうと音をたてあちこちで渦を巻き岩にどうどうとぶつかり合っている。
この強い流れじゃ橋桁なんぞいっぺんに流されてしまうぞ。
ん!?目の前の流れから泡が湧き起こり渦を巻くと…。
大きな鬼が現れた。
うわぁ!そこで何を考えておるのじゃ?は橋を…ここの川に架けねばならんのじゃ。
ふぅ〜んほんなら俺が架けてやろうか。
えぇ!?その代わりお前の目ん玉もらうぞ〜。
あぁ驚いた勝手なことを言うもんじゃ。
橋を架けるのはこのワシじゃというのに…。
けれども鬼の言ったことがどうにも気になる大工は次の日の夕暮れにまた川へ行ってみた。
ここれは!するとどうだ鬼が言ったとおりそこには半分だけ橋が出来上がっていた。
こりゃ〜立派な橋じゃ。
ひぃっ!どうじゃ橋は半分まで架けたぞ。
言ったとおりお前の目ん玉もらうぞ。
待ってくれ!なにかその…。
他に手はないのか?手ならそこについておろう。
ん!?そそうではなく目ん玉取られるのは嫌じゃから…。
ん〜なら俺の名前を言い当てたらお前の目ん玉もらうのをやめてやってもいいぞ。
な名前?わからんときはお前の目ん玉もらうぞ〜。
あいつ本気で俺の目ん玉取るつもりだ…。
大工は恐ろしくなり走り出した。
鬼に見つからぬとこまで行こう!鬼の名前なんぞわかるわけねえどうしたらいいんだ!できねえこと言って無理やり目ん玉取るつもりなんだ!大工は夜通し山の奥まで逃げていった。
山の間の小さな野っ原に出たときのこと…。
なんだ?ん〜。
(手鞠唄)こりゃ手鞠唄だ!大工は唄のするほうへ近づいていった。
こんな山奥でいったい誰が手鞠唄なんぞ…。
大工が草むらから覗くと…。
「早く鬼六まなく玉…」月明かりの下小さな女の子が唄いながら鞠をついていた。
「早く鬼六まなく玉」「持ってこぉえばえ〜ぃな」はっ!「早く鬼六…」角だ!鬼の子か?はっ…。
鬼六…まなく玉…?「早く鬼六まなく玉」大工はそっとその場を後にした。
次の日の夜大工はおそるおそる川へ戻った。
ややっぱり…。
そこには弓形をした美しい橋が出来上がっていた。
うっ。
橋は出来た。
お前の目ん玉もらうぞ。
ま待ってくれ。
ん?な名前を当てればいいんだったな!あ〜言った言った当ててみれぇ。
お前の名前は鬼太郎!ガハハ違う。
鬼次郎!それも違う。
お鬼五郎!それも違うぞ〜。
「早く鬼六まなく玉」わかった!お鬼六だ!なにぃ!?ぐ…ぐわあぁ…。
鬼は口から泡を吹くとそのまま川の中へ消えてしまった。
ハァハァ…。
助かった…。
鬼の作った橋はどんな大水にも流されず村の者たちは川向こうへの行き来がうんと楽になった。
それにしても立派な橋を作ったものだなぁ。
「早く鬼六まなく玉」「持ってこぉえばえ〜ぃな」2015/04/12(日) 09:00〜09:30
テレビ大阪1
ふるさと再生 日本の昔ばなし[字][デ]

「まんじゅうこわい」
「雨だれの化物」
「大工と鬼六」
の3本です。お楽しみに!!

詳細情報
番組内容
私たちの現在ある生活・文化は、昔から代々人々が築き上げてきたものの進化の上にあります。日本・ふるさと再生へ私たちが一歩を踏みだそうというこの時にこそ、日本を築いた原点に一度立ち返ってみることは、日本再生への新たなヒントになるのではないでしょうか。
この番組は、日本各地に伝わる民話、祭事の由来や、神話・伝説など、庶民の文化を底辺で支えてきたお話を楽しく伝えます。
語り手
 柄本明
 松金よね子
テーマ曲
『一人のキミが生まれたとさ』
 作詞・作曲:大倉智之(INSPi)
 編曲:吉田圭介(INSPi)、貞国公洋
 歌:中川翔子
 コーラス:INSPi(Sony Music Records)
監督・演出
【企画】沼田かずみ
【監修】中田実紀雄
【監督】鈴木卓夫
制作
【アニメーション制作】トマソン
ホームページ

http://ani.tv/mukashibanashi

ジャンル :
アニメ/特撮 – 国内アニメ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32118(0x7D76)
TransportStreamID:32118(0x7D76)
ServiceID:41008(0xA030)
EventID:36574(0x8EDE)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: