1猫のしっぽ カエルの手・選「春の大掃除」 2015.04.12


京都市の北三方を山に囲まれた里大原に暖かな日がさし始めた。
ようやく訪れた春の光に小さな命たちが輝いている。
大原にある築100年の古民家。
ここでたくさんのハーブや花を育てながら日々を暮らす人がいる。
彼女もまた春を心待ちにしていた。
イギリスから日本に来て39年。
この家と美しい自然にひかれ大原に住むベニシアさん。
この箱は「コールドフレーム」というんですけどその名前「コールド」は寒い時よく使うものです。
冬の間に何か種をまいたらここに置いておきます。
で霜が降りても大丈夫になって。
数日の間コールドフレームに入れ大原の気温に慣らした苗を庭に植える。
ここ黄色の花壇。
黄色と白い花が咲く花壇ですから。
それでいつもキンセンカこの辺植えます。
ベニシアさんの庭はいくつものテーマに分けて造られている。
ここはイギリスのコテージガーデン風。
成長した花の色や背丈をイメージして苗を植えていく。
ここはブルーの花壇でこっちはピンクと赤の花壇です。
でブルーの花は矢車草。
去年から種で結構大きくなってます。
でその後にミドルセージとかブルーの花とかハーブが全部出てくるのね。
でピンクはベルガモットがメインになるんですけどまだ小さいからそれまで何か面白いことがあったらいいと思ってるからジギタリスとピンクの矢車草ちょっと買いました。
ここにちょっと植えようかなと思って。
あとこのデイジー。
ピンク。
この辺にします。
大体低い花は外のほうで高い花は真ん中という感じで考えるからデイジーは低いからこの辺で。
植える時想像しないといけない。
カラーのこととか高さのこととか。
イメージ的に頭の中に思って植えたらすごいきれいな庭が出来る。
幾重にも重なり花壇を彩る植物たち。
今年はどんなふうに咲いてくれるのか期待に胸が高鳴る。
これからの季節途切れることなく花を楽しめるように時期をずらして育てていく。
キンセンカなどの種をまきコールドフレームへ。
5月までこの中で苗に育てまた庭に植える。
ベニシアさんの生活はいつでも植物と一緒。
昔から人は植物と寄り添って暮らしていた。
平安時代カエデは万葉集の歌で「カエルの手」と詠まれた。
ヨーロッパにはキャットテール「猫のしっぽ」という愛らしい名前の植物もある。
昔の人のように親しみを込めて植物に呼びかけていこう。
ベニシアさんはそう思っている。
祖国イギリスから遠く離れた日本で暮らすベニシアさんの大切な宝物母の形見でもあるそれは300年前に作られたという銀のランプだ。
これはお母さんが生まれたお城のでお母さんにとってすごく大事な物だったからそれが私にあげたかったのうれしかったし。
10年前のクリスマスの日で「これベニシアにあげたい」って。
でもらったんですよ。
すごくうれしかった。
ベニシアさんの母ジュリアナさんはイギリスの貴族。
次女として生まれたベニシアさんは幼いころを広大な敷地に建つ宮殿で過ごした。
身の回りのことは何もかもお手伝いさんがやってくれる毎日。
母親とは限られた時間しか会えなかった。
やがてそんな生活にむなしさを感じて世界中を旅するうち21歳で日本へとたどりつく。
結婚して4人の子どもをもうけ自然豊かな大原に安住の地を求めた。
日本で生きていくことに強く反対した母。
けれどもこのランプをくれたころにはきっと認めてくれていたはず。
ベニシアさんは柔らかい明かりに母を思う。
ベニシアさん家の前の畑でもハーブや野菜を育てている。
今日はスペアミントを収穫。
ミントもたまに早くカットするほうがいいのね。
しないとこの辺の葉っぱが落ちるから。
こんな感じね。
1年中取れるスペアミントは料理だけでなく床掃除にも便利。
去年考えたレシピですから結構簡単にできるのね。
材料はスペアミント。
ミントは殺菌作用の力があるから春の大掃除でとても家中がミントの香りになるからうれしいです。
あと酢も入れます。
あと普通のせっけんのパウダー。
一番最初はこのスペアミントここに入れて煎じる。
ミントの中のパワーを出すために10分ぐらい煎じる。
もう匂いしてますね。
ミントがいい香り。
そしたら大体このぐらいのちょっと茶色っぽいグリーンの感じ。
こします。
はいオッケー。
でせっけん入れます。
で酢入れて。
あとは混ぜれば完成。
ベニシアさん今日は大掃除をするつもり。
春の掃除。
イギリスはね冬はすごい暗くてほんで春になると日にちが急に長くなるのね。
そしたらお掃除やりたい。
窓開けて家の大掃除はスプリング・クリーニングという。
だから今日はスプリング・クリーニング頑張ります。
スペアミントのせっけん水。
使う時は水で薄めて。
今日はこれからスプリング・クリーニング春の大掃除。
ベニシアさん頼もしい助っ人を呼んでいた。
(戸の開く音)あおはよう。
おはようございます。
いい天気で良かったね。
どうぞ上がって下さい。
はい。
今日はちょっと春の大掃除みたいにしようと思ってるのね。
じゃ頑張りましょ。
やって来たのは親友の…そのぐらいかな。
頑張りましょ。
前田さんに手伝ってもらっての大掃除。
まずは孫たちが破いてしまった障子の張り替えから。
前田さんのほうが力があるから。
畳やふすま障子など日本家屋には独自の手入れが必要。
前田さんがいつも教えてくれる。
ここの家初めて来た時マエちゃんといろいろやったの覚えてるけど。
それでねもう湿ってきたらいいと思いますしね。
14年前大原に越してきた時も荒れ果てていたこの古民家を一緒に掃除してくれた前田さん。
ベニシアさんは親しみを込めて「マエちゃん」と呼んでいる。
なんか思い出す。
初めの1か月ここで。
天井とか全部真っ黒だったからね。
すごかったもんね。
私その時仕事1か月休んで毎日掃除。
でマエちゃん結構手伝ってくれたのよねその時。
マエちゃんのほうがなんか張り切ってた。
そうかもわかりませんね。
放置されていた築100年の古民家に住むためにやることは山のようにあった。
そんな時いつもそばにいてくれたのが前田さんだった。
2人の出会いは24年前。
当時仕事と子育てに追われていたベニシアさんは体調を崩した。
そんな時友人が家事全般に堪能な前田さんを紹介してくれた。
以来英会話学校のスタッフとして優秀なハウスキーパーとして時には子どもたちの面倒も見て前田さんはベニシアさんを支えてきた。
今や友情を超えて家族のような絆で結ばれている2人。
今日は特別これ入れる。
香り?先ほどのせっけん水を水で薄めてペパーミントのエッセンシャルオイルを加える。
こうすると更に香りが引き立つ。
すごい香り。
イギリスにはない雑巾がけのやり方は前田さんに教わった。
姉が妹に教えるように日本のしきたりを何度も何度もベニシアさんに教えてきた前田さん。
優しいけれどはっきりと物事を言う前田さんにベニシアさんは助けられてきた。
次はワックスで家具磨き。
使うのはイギリス風の蜜蝋ワックスと日本伝統のハゼの蝋ワックス。
これ新しく作った。
何と思う?何で作った?分かるわよね。
これね書いてあるんですけどハゼ。
日本のハゼのワックス。
なんかかゆみが気になるって聞いたから今日初めて。
でこれはマジョラムを入れた私。
イギリスでは家具磨きで大体ラベンダーじゃなくて本当はマジョラムを使う。
前田さんこの家具をやってくれる?はい。
私向こうで。
どっちがきれいになるのか。
どうかな。
市販のものに一手間加えた特製ワックスで前田さんと磨き比べてみる。
ピカピカになりそう。
あきれいになる。
こうやって拭くのは力?いい運動。
力要りますね。
どっちがきれいに磨けるのかワクワク。
「家事も楽しく」がベニシアさんのモットー。
ベニシアこんなぐらいきれいに光ってきたよ。
どちらがきれいですか?ほら。
香りいいでしょ。
匂いがここもいいよね。
日本の物を日本で使うべきかな。
合ったものをね。
やりやすかったですよ。
ハゼにマジョラムを混ぜたワックスと蜜蝋にラベンダーを混ぜたワックス。
どちらも甲乙つけがたいほどピカピカになった。
大掃除の仕上げはベニシアさんの部屋。
何入ってるか忘れた。
重たい。
だいぶ開けてない。
子どもたちの…。
作品ですか?作品とか。
昔日本は何入れたんだろう?宝物入れるとこ。
隠したい物入れる。
ラブレター入れる。
でも大切な物を入れてたでしょうね。
あ〜。
余った壁紙などにラベンダースプレーを吹き棚の中に敷く。
これなんか例えば下着とか。
たんすにでもいいんですか?うん。
たんすでもいい。
こうすれば香りが良い上に虫がつきにくくなる。
う〜ん!ラベンダー!破かないように。
いやだから虫も来ないようにも。
そう?イギリス流の家事はベニシアさん主導で。
ちょっと乾かすほうがいいね。
ちょっとだけ。
入れる前に。
こっちをチョウチョにして下さい。
次は日本の風呂敷の使い方。
これをねこう。
ああ!ベニシアさんどうしても縦結びになってしまう。
前田さんに風呂敷のきれいな結び方を教わる。
そうしたらねキュッとこうしてきれいにチョウチョになるんです。
へえ初めて。
きれいでしょ?このほうが。
きれいですね。
ベニシアさんの自分でやってちょうだい。
こう斜めに。
ベニシアさんはイギリスの文化を。
前田さんは日本の知恵を。
こうしていろいろなことを教え合い分かち合ってきた2人。
輪になったとこだけをここへ出すんです。
ほんでリボン同士だけをちょっと引っ張るの。
これこれ。
不思議。
毎日新しいこと習う。
私何年日本にいてそれ分からなかったかしら。
そうですか。
まああの…時々気にはなってたけどね。
(笑い声)幼い頃母親と一緒に過ごす時間が少なかったベニシアさんにとって前田さんは母の心を教えてくれる人。
ありがとうマエちゃん。
今日すごい事習った。
「えっ!?」って言って。
風呂敷。
大原のすぐ南岩倉。
休日の午後はハーブティーを楽しむ前田さん。
2人の子どもが独立した今は夫憲二さんとの2人暮らし。
ハーブや花を育てるのはガーデニング大好きの憲二さんの担当。
香りしてる。
ホントだ。
ええ香りしてるわ。
レモングラスなんですけどね。
毎年レモングラスは2株だけ買って植えてでそれを収穫して乾燥してそれで十分。
2本植えといたら1シーズン大体いけるぐらいは取れるぐらいに。
土をなぶるというかまあ植物には興味があったというかねそんなんで。
まあこれは乾燥したやつやけどミントとかレモンバームとかミックスして生の葉をそのままでというのが。
(敏子)それベニシアさんの影響です。
ベニシアさんと仲良しの前田さん夫婦。
玄関先には10年前にベニシアさんからプレゼントされたローズマリーが元気に花を咲かせている。
前田さんの唯一にして最大の趣味それは絵を描くこと。
10年前ベニシアさんの知人に絵を習ったのがきっかけ。
ほぼ毎日目に留まった物をスケッチする。
後振り返った時も「いつ行ったかしら」と思ってこれを繰ったら分かりますので。
まあ言ったら絵日記のようになってるんです私から見れば。
今まで描いた絵は数千枚に及ぶ。
植物以外にも気になった物は何でも絵に描いてしまう。
これベニシアの家です。
ここはね。
これお隣さんですので裏の杉山ですか。
ベニシアのうちへ行く時か帰る時におうちへ行く手前で描いてるんですけどね。
前田さんお気に入りの作品。
ベニシアの学校の生徒さんがブドウをお土産に下さったんです。
それで「かわいい!きれいな!」思って「ありがとう」言って学校のキッチンに置いといたんです。
そしたらね下りてきたらベニシアがつまんでたんです。
「待って下さい!」言うて。
こんだけベニシアが食べた後なんですけどね。
それでもそのまま持って帰ってきて描いたんですけどこれは大好きな1枚なんです。
大掃除を終えた2人。
ハーブティーで一休み。
ベニシアさんにとって前田さんは家族のような存在。
私「日本のお母さん」言ってるけど本当は「日本のお姉さん」。
お母さんまで年上じゃない。
あのう…「前田さんいるからできる」っていつも言うの。
はっきり言うんだもの。
他の人言わない。
遠慮して。
でも前田さんはっきり言うもんね。
「これは駄目ですよ」とかはっきり。
それ言ってくれるほうがいいのね。
そうしないといつまでも分からないから。
すごくアドバイスしてくれたね。
こんなに身近に外国の方と接するのももちろん初めてですしね。
生活の違いあるし文化の違いでいろんなことをちょっと教える言うたらおかしいですけど「日本だったらこうですよ」「このほうがいいですよ」いうのはたくさん言ってきましたけど楽しくなかったら多分続いてないと思うんです。
なんかいろんなことをやったよね。
そうですね。
でも一番の友人よ。
あれあの本作ったの覚えてる?子どもの本。
何かあったの?この間出てきたんよあれ。
前田さんよう作ったわと思って。
どこから出てきたの?悠仁の部屋。
覚えてます?覚えてる。
これ何歳の時に作った?すごいねこれ。
15年前ベニシアさんの息子悠仁君のために縫い上げたキルトの絵本。
生後1か月のころから前田さんが面倒を見ていた。
悠仁が言葉を発した順番に私は作ったつもりなんです。
アップルやね。
バナナ。
あの時生まれて…?1か月ぐらい。
1か月ぐらいでもう悠仁見てくれたね。
いや懐かしい。
前田さんに助けられ多くのことを学んだベニシアさん。
控えめだけど心の強い日本の女性の姿を前田さんの中に見ている。
残しといてくれはってありがとうございます。
悠仁の部屋から出てきたの?うん。
へえ!だから悠仁はやっぱり前田さんがすごい大切な人と思ってる。
そう!よかった。
春の風が吹く大原でスケッチを楽しむ2人。
でも下も随分きれい。
カーペットみたい。
うんカーペットみたい。
どこにしようかな。
なんか神社ムチャクチャ難しい。
ね。
難しい。
日本で出会った大切な人。
それぞれの生き方をそっと受け入れて豊かな時間が流れていく。
2015/04/12(日) 18:00〜18:30
NHKEテレ1大阪
猫のしっぽ カエルの手・選「春の大掃除」[字]

冬の寒さが和らいだ京都大原。古民家に暮らすベニシアさんはこの時期イギリス流の大掃除をする。親友を助っ人に呼び二人でハーブを使った掃除を楽しむ。

詳細情報
番組内容
冬の寒さが和らぎ、暖かな日ざしが心地よい早春。京都・大原の古民家に住むベニシアさんは、イギリスの風習であるスプリングクリーニングにならって、家の大掃除をする。「日本の母」とベニシアさんが慕う前田敏子さんを助っ人に呼び、ハーブを使った手作りの掃除道具を使う。前田さんはベニシアさんが日本の文化になじめるよう、家事から子育てまで支えてきた恩人。掃除を済ませた後は、共通の趣味であるスケッチに出かける。
出演者
【出演】ベニシア・スタンリー・スミス,【語り】山崎樹範

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
趣味/教育 – 園芸・ペット・手芸

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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