花燃ゆ(15)「塾を守れ!」安政の大獄に熱い心で挑む志士 2015.04.12


天皇の許可なく欧米列強と通商条約を結び開国に踏み切った井伊直弼は反対派の人々を次々と処罰。
井伊の右腕間部詮勝を暗殺しようと企てた吉田寅次郎はその過激な言動を恐れた長州藩によって再び野山獄に投獄された。
安政6年1月。
杉家に寅次郎のいない正月が来た。
(鈴の音)寅次郎が獄を出てから3年。
かつて野山獄にいた囚人たちの中でただ一人高須久子だけがみずから獄に残っていた。
(文)寅兄。
(梅太郎)母上が大福餅をこしらえた。
握り飯と寅兄がお好きなきんぴらも。
(寅次郎)そこに置いておいて下さい。
後で頂きます。
寅。
一年で一番めでたい正月じゃ。
一日ぐらい学問を休んだらどうじゃ?今日という日は今日かぎりで消えていきます。
貴重な一日をむだに費やす事はできません。
今は寅兄も塾も大変やけどでもすぐにまた…。
僕は信じています。
真心を尽くせば必ず伝わる。
藩の方々にも稔麿君にも伊之助にも。
稔麿君と江戸の久坂君にこの手紙を送って下さい。
はい。
(間部)都では徳川の天下を批判するものとして吉田松陰のうわさがたびたび。
(井伊)うわさではなく確たる証拠を探せ。
はっ。
水戸はじめこたびの処分を不服とする者どもが不穏な動きを見せております。
ご身辺にはくれぐれも…。
心配無用。
死は覚悟の上じゃ。
はっ…。
ここでやらんでいつやる。
誰に命を狙われようと一歩も引くつもりはない。
(雲浜)うっ!ぐあっ!一味の名を明かせ!さような者はおらぬ!ぐあっ!
(晋作)井伊の赤鬼が梅田雲浜様を拷問しとるらしい。
(玄瑞)もし雲浜先生の口から松陰先生のお名が出たら…。
(桂)久坂。
松陰先生からの手紙じゃ。
先生からですか?
(寅次郎)「藩に邪魔立てされようと僕は老中間部を討つつもりです。
江戸の君たちにも力を借りたい」。
どねぇすれば…。
俺は乗らんぞ。
間部一人殺したところで何もならん。
久坂。
分かっとると思うが今は…。
分かっちょります!
(滝)ええ匂い。
寅兄に…旦那様から。
退屈しとるから喜ぶでしょう。
早う持っていってあげんさい。
はい。
私にも?どうかしました?どねぇした?
(テーマ音楽)・「愚かなる吾れのことをも」・「友とめづ人はわがとも友と」・「吾れをも友とめづ人は」・「わがとも友とめでよ人々」・「吾れをも友とめづ人は」・「わがとも友とめでよ人々」・「燃ゆ」江戸の久坂と高杉さんから手紙が届きました。
来たか。
(玄瑞)「間部老中要撃策拝読致しました。
先生のお覚悟感激に堪えません。
しかし今義の旗を立てて決起する事は容易な事ではございませぬ。
今はどうか胸中の志をお抑え下さい。
時をお待ち下さい」。
寅兄…久坂も申しております。
今はどうか…。
久坂高杉までもこのありさま。
(寺島)小田村伊之助様!お話がございます!
(品川)お顔も出せんですか!
(靖)やはり卑怯者ですね!
(寿)あなた方いい加減になさい!せっかく寝かしつけた赤ん坊が起きるでしょう!
(伊之助)一体何の騒ぎじゃ。
(前原)抗議に参りました。
抗議?思うたからです。
動かん藩の諸悪の根源は小田村様なのではないかと。
はて。
わしが何かしたんかのう?松陰先生を獄につないだ張本人が何をおっしゃる!?村塾を潰したんもあんたなんじゃないんですか?私たちはもう議論する事もできません!ほう。
ならばひとつ議論しようじゃないか。
ちょうど休みで退屈しとったところじゃ。
ふざけんでつかぁさい!すぐに松陰先生を獄からお出し下さい!寅次郎は投獄されて当然。
村塾は潰されて当然。
そうは思わぬか?思いませぬ!野村靖。
寺島忠三郎。
品川弥二郎。
血気盛んは若者の特権じゃが君らは一度でも老中暗殺の是非を自分の頭で考えたか?猿でももちいと頭を使うぞ。
(3人)何ですと…!動かん藩の代わりに私たちは命を懸けて国を守りたいんです。
前原一誠。
君は目出村の出じゃったな。
君にとって守るべきは目出村でありその民ではなかったんか?この日本国を守る事がやがては目出村の…。
ならば幕府の老中を暗殺する事で目出村の民がどう飢えから救われる?玉木彦介。
お父上の文之進様は寅次郎の兵学の師じゃ。
実の息子としてあの天才と比べられるんはさぞかしつらかろう。
猛々しい事をやってのけようとするんはお父上に認められたいゆえか?
(彦介)断じてそのような事はございませぬ。
亀太郎。
君は魚屋というよりすばらしい絵描きと聞く。
絵筆を刀に持ち替えて人を殺すだけの意味が君にはあるんか?入江九一。
君が口数が少ない訳が俺には分かるぞ。
君は江戸を見てきた。
この連中がいかに世間知らずかを本当は分かっとるはずじゃ。
(九一)そねな事は…。
君らが恐れるに足らんのはこの中の一人として己の本心から動こうとしとる者がおらんからじゃ!まことに何かをなそうとする者は世間を知り人を知り藩という組織の動かし方を知ろうとするもんじゃ。
そういう人間が君らの中から現れた時藩は君らを初めて恐れその声を聞くじゃろう。
お待ち下さい!まだ話は終わっちゃおりません!言いたい事好き勝手言いよってから!久坂。
松陰先生から手紙が届いた。
(寅次郎)「血判状をもらい憤慨に堪えません。
君たちは命を懸け志を遂げるために江戸に行ったんではなかったんですか?僕は君たち友と志を分かち合ってきたつもりじゃ。
もはや志を持たん君たちとは絶交するしかない」。
絶交じゃと?相変わらずお熱い人じゃ。
こっちの気持ちも考えんと困ったもんじゃ。
萩の田舎に引きこもっとると世相も分からんようになるんかのう。
松陰先生を愚弄するんか?あ?絶交されたんやぞ!お前にとって先生はそねなもんじゃったんか!じゃあどうせえっちゅうんじゃ!先生のご機嫌とりに2人で事を起こして死ぬか!?村塾はもうないんじゃ!俺たちの帰る場所はもう…!また塾生たちへのお手紙を。
江戸の桂様より手紙が届きました。
(百合之助)おお。
桂様は何と?寅次郎と塾生たちとの手紙のやり取りをやめさせるようにと。
えっ?
(桂)「松陰先生の言葉にあおられた塾生が事を起こすのを未然に防ぐためです。
幕府は今幕府を批判する者たちの証拠を探しております。
ご公儀を批判する手紙が幕府の手に渡れば先生の身にも危険が及びます」。
塾生たちの手紙は寅次郎に渡さず杉家にとどめておくようにと。
でも塾生の皆さんとのつながりを断たれてしもうたら寅兄は…。
寅を守るためじゃ。
(福川)藩からのお達しじゃ。
筆とすずりをお預かり致す。
(久子)あの方から言葉を取り上げるなんて…。
(鈴の音)松陰先生からの手紙か。
(前原)伏見要駕策?江戸に向かわれる敬親公を京の伏見で待ち伏せしそのまま天子様のおられる御所へお連れし攘夷決行のお許しを願い出る…。
天子様に…。
先生はこれを私たちにやれと?先生の密書をもって説得すればご重役も殿も動くと。
失敗したら死罪じゃろ?それを覚悟でやれっちゅう事じゃろ。
誰が…行く?
(亀太郎)俺…行けん。
すまん!俺行けん!寅兄。
差し入れ。
母上からつるし柿です。
「寅は甘いもんが好きやから」って。
手紙は…。
えっ?久坂君たちからの返事です。
いえ…まだ届いておりません。
前原君たちからは?いえ。
稔麿君は?手紙を送ってからもうひとつきほどになる。
これをお宅で預かっておいて下さい。
(玄瑞)「今はどうか胸中の志をお抑え下さい」。
なぜじゃ…。
(百合之助)許す事はできん。
寅次郎!父を殺せ!なぜ…。
(稔麿)僕は先生の大義のためには死ねません。
なぜ分かってくれん!お前はもはや先生と呼ばれるに値せん!なぜ分からん!守らねばならんのじゃ。
国を…この国を!回想
(文之進)公のために尽くすんがお前の役目じゃ!長州をお前が守らなければ母も父も兄も皆死ぬんだぞ!守らねば…。
皆に伝えねば…。
どうして寅兄にあねなうそを?うそ?「寅兄を獄につなぐよう藩に言うたんは自分だ」って。
お前にはうそはつけんな。
久坂は浮気の一つもできんか。
からかわんでつかぁさい。
寅次郎は俺の事をまだ友と思うてくれとるじゃろうか。
藩命により投獄されたとなればあいつはますますかたくなになるじゃろう。
じゃが友にそうされたんなら少しは己を省みてくれるかもしれん。
もし俺を友と思うてくれておればじゃが。
なぜ皆が禁じられた本を読もうとするんか。
知りたいからです。
学びたいからです。
変えたいからです。
今までの学問じゃもう日本国は守れん!もうず〜っと目が合わんような気がして…。
目が?すぐそばで話しとっても寅兄の目はずっと遠くを見とるようで…。
このまま行かせとうないんです。
戻ってきてほしい。
お天気の事とか…晩ごはんのおかずの事とかもう…何でもない事でええからまた前のように寅兄と話したい。
せわぁない。
あいつはきっと戻ってくる。
そう信じよう。
敏…。
何を…。
伏見要駕策…。
味方…。
信じる…。
「一番悲しいのは声が届かん事」。
「一番悔しいんは伝えようとしても受け取ってもらえん事」。
敏…。
待て…。
待て。
待て!敏三郎!福川様!福川様!
(福川)何じゃ?弟を止めて下され!敏三郎!敏…。
行ってはならん。
敏三郎大事な仕事を頼む。
家に戻って母上に伝えてくれ。
差し入れのつるし柿ありがとうあんしたと。
さあ柿を一緒に食べよう。
ほぉべたがほろけるぞ。
どうされたんですか?うん。
寅が退屈しとるじゃろうから。
家族の手紙ならおとがめもなかろうと今皆で話して。
「たとえ野山やしきにおいで候ても…」。
野山やしき?獄やなんて言い方母は好かんです。
(笑い声)私も書きます。

(百合之助)そのすずり…。
はい。
寅のそばにない日はなかったのう。

(靖)今決断しなければ手遅れになります。
(九一)私が行きます。
死ぬつもりか?夢があるんです。
夢?私たち兄弟は食うていくために好きなように学べんかった。
身分にかかわりなく学びたい者が学べる場を作りたい。
それが私の夢です。
松陰先生は認めて下さった。
「すばらしい志じゃ」と。
「僕と共に作ろう」と。
私は先生の事を裏切る事はできません。
幸いうちは2人おる。
どちらかが生き残ればええ。
誰かほかに行きたい者はおるか?構わん。
あとの事は頼みます。
お待ち下さい兄上!私が行きます。
靖…。
松陰先生とのつきあいは私の方がずっと長い。
志を示さんままでは生き恥をさらすばかりです。
兄上行かしてつかぁさい。
(すみ)兄上!待って!行かんで!すみ…。
2人とも行かんで!お願い!すみ大声を上げんな。
兄上!何で?何でそねな事せんといけんの!?そんなんむだ死にやろ!言うな!すみ…。
優しい兄上の方がうちの家には必要じゃ。
すまん。
すみ…元気でな。
兄上…。

(ふさ)文。
文!ふさ。
すみ?どうしたん?うそつき…。
えっ?兄上たちを危険な目に遭わせる事はない?うそばっかり!このままじゃあんたの兄上に殺される!お願い!助けて!助けて!助けてお願い!助けて…。
どうした?あの松陰先生はもうおられんじゃろうか…。
何があった?助けて下さい!野村を…野村を止めてつかぁさい!京で騒動を起こす前に!野山やしき…。
(足音)兄上。
野村さんが脱藩して京へ向かいました。
寅兄が授けた策を実行するために。
野村君が?藩から追っ手が出た。
野村はじきに捕らえられるじゃろう。
それを知って入江九一が自首してきた。
策の首謀者は自分じゃと。
兄弟ともども岩倉獄へつながれる事になろう。
寅兄…。
これはやはり兄上のおそばに…。
寅兄の字が好きです。
人を知りたい世界を知りたいという熱意にあふれた右肩上がりの字が。
好きです。
寅兄の言葉が。
寅兄の言葉は人を救うとる。
まっすぐで温こうて優しゅうて前を向く元気をくれる。
すごい事です。
寅兄はそのまんまですごい人なんです。
帰ってきてつかぁさい。
英雄になんかならんでええから。
そのまんまのただの兄上として。
どうか…どうかどうかどうか帰ってきてつかぁさい。
ただの…兄として…。
みんな寅兄が大好きなんです。
どうか帰ってきて…生きてつかぁさい。
私たちと一緒に。
酷な事を言うのう。
それは僕の人生ではない。
文。
兄は死にたいんじゃ。
こねな僕でも死んでみせれば心を動かして立ち上がる人間もおるじゃろう。
僕がそうしてみせなければどれだけ待ったところで志を持った者たちが決起する事は永遠に来ん。
僕はもう…死ぬ事でしか生きられん。
お前の死に場所はこねぇなところじゃない。
顔を上げろ寅次郎!いつになろうと君は僕を止める事しかできん。
死ねん人間だからじゃ。
君も久坂たちも。
「死ぬ覚悟はある。
じゃがむだ死にはせん」。
そねな事はうそじゃ。
「時が来る。
今ではない」。
そう言い続けて何をなす事もなく人生が終わるんじゃ。
声をあげん者に声が届かん者の気持ちは分からん。
事をなさん者に失敗した者の気持ちは分からん!伊之助!いつだってお前ははたで見物するだけじゃ。
お前など友ではない。
藩の犬め。
お前など友ではない!口先だけは立派な事を言うて何の行動もなせず…。
そういう人間を僕は最も憎む。
僕も同じじゃ。
憎む!僕は僕を憎む!何の役にも立たん!世のため人のために…何も!くそっ!ああっ!僕には真心が足りんのじゃ。
僕の至誠は伝わらん!その証拠に僕はいっつも間違うた。
僕は何をなした!?すべて失敗じゃ。
猛々しい事をすると口では言うといて何をなす事もできん。
何もなせずに生きる事が…恐ろしいんじゃ。
(寅次郎の泣き声)
(泣き声)
(富永)いよいよ死罪か。
(寅次郎)ついに来たんです。
この時が。
じかに私の意見をぶつけるんです。
お前が死ぬべきは今ではない。
お知恵をお貸し下さい。
文。
私は死なん。
お見逃しなく。
兄上…。
入江九一と野村靖の兄弟は萩の城下松本川に近い土原に生まれました。
兄九一は二十歳の頃家督を継ぎ弟の靖は父親の旧姓野村を継ぎます。
松陰が高杉晋作に宛てた手紙には九一について「一目で心が通じた」と記されています。
後に松下村塾四天王の一人と称された九一は久坂玄瑞らと外国船を砲撃するなどその向こう見ずなまでの行動力で松陰の教えを忠実に守りました。
弟靖は維新後松陰神社の創建や松陰の著作を世に広めるなど松陰の思想普及に力を注いだのです。
遺言により靖は松陰の墓のそばに埋葬されました。
激動の時代を駆け抜けた兄弟の思いは今も語り継がれています
2015/04/12(日) 19:15〜20:00
NHK総合1・神戸
花燃ゆ(15)「塾を守れ!」安政の大獄に熱い心で挑む志士[解][字][デ]

幕府要人の暗殺を計画したとして、吉田松陰(伊勢谷友介)は野山獄に投獄される。しかし獄中でも計画実行をあきらめず、塾生たちに手紙を書く兄に、文(井上真央)は…。

詳細情報
番組内容
幕府要人の暗殺を計画したとして、吉田松陰(伊勢谷友介)は野山獄に投獄された。松下村塾も閉鎖されることになり、塾生たちはやり場のない憤りを、小田村伊之助(大沢たかお)にぶつける。一方、松陰は獄中でもあきらめることなく塾生たちに手紙を書き続け、じょういの決行を指示する。そして悩んだ塾生たちは…。文(井上真央)は死をも恐れず、さらに若者たちを巻き込もうとする松陰に、もとの兄に戻ってほしいと語りかけるが…
出演者
【出演】井上真央,大沢たかお,伊勢谷友介,東出昌大,高良健吾,原田泰造,優香,久保田磨希,森永悠希,瀬戸康史,劇団ひとり,佐藤隆太,要潤,大野拓朗,音尾琢真,鈴木伸之,阿部亮平,内野謙太,冨田佳輔ほか
原作・脚本
【脚本】大島里美

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
ドラマ – 時代劇

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz

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