鶏肉の濃厚なうまみ是非味わってみて下さい。
重厚で厳かなたたずまい。
日本美術の粋を集めた宝。
その名は…そんな国宝を軽やかな視点で身近にしてくれる人がいます。
今注目のライター橋本麻里。
国宝ブーム立て役者の一人です。
あの徳川家ゆかりの国宝建築は「デコ」?古都の寺院は平安貴族の「テーマパーク」?黄金に輝く屏風絵で桃山時代にタイムスリップ。
橋本流の切り口で国宝を体感してみましょう。
きっと日本美術が好きになるはず。
今回の旅人は前回に続き大宮エリーさん。
作家・演出家で映画やCM絵画制作など多方面で活躍中です。
おはようございま〜す。
あ〜こんにちは。
日本美術が主な領域のライター。
数々の著作を通して敷居の高い国宝を分かりやすい言葉で表現し本質をつく。
国宝ブーム火付け役の一人です。
今回はどこに連れてって頂けるんでしょうか。
もちろんエリーさんも見た事はあると思いますけれども平等院鳳凰堂ですね。
それがこの川沿いに建てられているので今日はそれを見に行きたいと思います。
平等院というと十円玉のイメージしかないんですけどね。
そう。
確かにまああれいつも見慣れている姿といえば姿なんですけれどもそれが実は実際に行くとまた東照宮のような「実はこういう事だったのか」という驚きがあると思うのでそれを見てもらいたいと思います。
じゃあ行きましょう。
京都から電車でおよそ30分。
町の中央を宇治川が流れる宇治市。
茶店が並ぶ参道をたどります。
今回のキーワードはですね「極楽浄土のテーマパーク」。
「極楽浄土のテーマパーク」…。
何ですかそれは。
お寺っぽくないですよね。
テーマパークがあるんですか?そうなんです。
まさにテーマパークとしか言いようのない…。
まあお寺ではあるんですけれどもそもそもの…朱塗りの表門がテーマパークの入り口です。
きれいだな〜。
すごいいいですね。
このアプローチすごくいいですよね。
すごいいい。
今極楽に向かってる感じです。
あっそうなんだ。
そっかそっか。
お〜!これ!?今まだ真横ですね。
すごいな真横からもうすごいね。
正面の方にこれから回っていきたいと思います。
なんかすごいなあ。
確かにど迫力。
鳳凰が羽を広げたようなフォルム。
平安時代中期藤原道長の息子頼通が池の向こうに広がる極楽浄土をイメージして造りました。
極楽浄土の中心にある中堂。
その中には西方極楽浄土の仏阿弥陀如来が安置されています。
結構斬新な考え方ですよね。
鳳凰の形をした建物でパカッとやると阿弥陀如来がいるっていう。
アハハハ!すごいよね。
なんか漫画の世界ですよね。
「マジンガーZ」みたいな。
なんか分かんないけど。
まあロボットが出てくるわけじゃないんですけどね。
なので左右に翼廊が延びていてそこに入れるような部屋があるような雰囲気がしますけれど…真ん中に灯籠があるっていうのは何か意味はあるんですか?大体普通は左右にあるじゃないですか。
これはどういう建物なんですか?ちょうど平安時代中期ですね。
藤原道長って名前は日本史で習ったと思うんですがその摂関政治が頂点に達した11世紀半ばですね。
このころっていうのはアジア全体で末法思想というある種の終末思想の流行があったんですが…。
仏教が衰え暗黒の時代がやって来るという考え。
「1052年から末法の時代に入る」と言われていました。
実際に平安時代は大地震や津波富士山の噴火疫病の流行飢饉戦乱など「平安」どころか不安の時代。
そんな人々の心を捉えたのが極楽浄土のガイドブック「往生要集」。
極楽浄土を具体的にイメージすれば極楽に近づける。
貴族たちはこぞって極楽をイメージした建物を造り始めたのです。
じゃあみんなのために造ったよという事ではないんですね。
残念ながらそこが違うんですね。
自分のためだけ?自分とうちのため。
うちの極楽浄土。
これ個人用ですか!?個人用です。
プライベートです。
ここはもともと……というのが平等院鳳凰堂なんですね。
あ〜そうですか。
それってどうですか?う〜ん…なんかみんなが疫病がはやったりしてしんどい時にみんなが来れて…。
だってテーマパークですからね。
みんな来るってイメージですよね。
そうか…。
思想ってなかなか難しいというか恐ろしいですね。
みんなに功徳を施すっていうのは昔からの考えかななんて思ってたけど。
その時の極楽マニュアルにはそうは書いてないんですよ。
そうか…。
「テーマパーク」は建物だけではありません。
頼通は自分はどう極楽へ旅立っていくのかもイメトレしていました。
その絵が平等院内にあるミュージアムに再現されています。
おお〜。
すごいなこれ。
極彩色の。
へえ〜こんな色なんですか?こんな色だったんです。
ほんとに?極楽浄土って感じしますよね。
華やかですよね。
特にあれが好きだな紺色…。
赤と緑と…すごい繊細な色使いですね。
それが…それですごく全体に華やかに見えるという。
なんか万華鏡みたいですよね。
そうです。
そういう感じです。
堂内を飾る扉絵には極楽浄土から死者を迎えに来る仏たちの様子が描かれています。
死者をお迎えに来る時は楽団つきでいらっしゃる…?そうです。
楽団で。
ただしこれもいろいろありましてこれは来迎の様子をそれぞれ描いた絵なんですが当時の考え方で「九品往生」という考え方があって…。
「九つの品」ですね。
きゅうほん。
生前にこの人間が積んだ徳とか善行とか信仰の深さとかによって迎えられる時のこのセッティングが違ったりとか浄土へ行くまでの時間が違ったりとか普通に往生するっていっても9つのタイプがある。
「九品往生」とは浄土教の経典で説かれている思想。
極楽を9段階に分け生前の行いによってそのどこかに往生できるというコンセプトです。
ちなみに2人が見ているのは下から3番目のランク「下品上生」の来迎図。
えっでも全然いいじゃん。
全然いいよ下品でも。
やっぱり阿弥陀如来はみんなにこう…。
どんな人にも救いをもたらしてくれるっていう。
それは希望が持てますよね。
うん。
お公家さんとかお金持ちの人じゃなくても上品とか行けるんですか?源信の「往生要集」なんかを読むと「お金を持ってる事が大事ではない」とか「身分が高い事が大事」とかは書いてないんですよね。
そういう事によって上品から下品まで行けるパターンが決まっているので。
仏像を作ったり仏を描いたりお経を読んだり…。
極楽浄土をいかに具体的にイメージし形にできるか。
それが当時の善行。
極楽往生への近道だったんですね。
頼通のイメトレはそれだけでは終わりません。
なんと来迎シーンの立体バージョンも作られたんです。
うわ〜!すご〜い。
大集合。
大集合ですよね。
へえ〜。
すごいですねしかし。
躍動感が。
もうまさに菩薩たちが舞い飛んでる感じ。
これ全部で現存が52体なんですけれども一部が鳳凰堂の中に実際にいまして残りの26体がここに来てるという事なんですよね。
鳳凰堂の内部で阿弥陀如来を囲むように飾られた雲中供養菩薩。
ある菩薩は楽器を奏である菩薩は祈り踊り舞う。
創建当時は彩色されていたとか。
今以上に極楽浄土らしさがあふれていたんでしょうね。
エリーさんここ26体いますけれどもどの菩薩がお好みですか?ずっと探してて結構迷ったんですけど私一番あれが…あの菩薩さんが好きです。
一番上段の…。
左から2番目の。
踊ってる人ですかね。
すごいポージングですよね。
なかなか…こういうやつです。
なかなかないですよ。
こんな楽しそうな…。
足も上がって。
天衣が…ショールみたいなのがきれいに垂れ下がって。
羽衣なのかな。
羽衣ですよねまさに天人の。
そういうダンサーもいるんですね。
ミュージシャンとダンサーがいるんです。
橋本さんのいちおしはこちらの菩薩。
手に持っているのは蓮台。
死者の魂をここへのせて極楽にいざなう菩薩です。
どうしてこれが好きなんですか?これ割と彫りが深い…。
全体的に浮き彫りとはいえ立体感があって何しろお顔が美しいなっていう。
優美な菩薩が舞う世界。
藤原道長を父に持ち自らも関白まで上り詰めた頼通。
平等院は栄華を極めた藤原氏ならではの極楽テーマパークなのです。
「このあとどうなるんだろう」というその不安の切実さが美しければ美しいほどその切実さも深いんだなとか悩みとか苦しみ…彼らが心に抱えてた苦しみが深かったんだろうなというのがなんか「美しい」って思うだけにそれが身に迫ってくる…切ない感じがしますね。
今頃何ておっしゃってるんでしょうね。
極楽にいるんですかね。
ねえ。
「造ったとおりだったな」って言ってるのか「あれ?」みたいな。
どうなんでしょうかね。
平等院から車でおよそ1時間。
京都と奈良の境山深い場所にもう一つ平安時代の極楽浄土をイメージした小さなお寺があります。
そこ無人販売所です。
「一くくり100円」。
「よもぎ入りもち朝つきました2コ入り」。
欲しかったな。
今日いない…。
残念。
ここはちょうどいい具合に向こう側が見えなくていよいよこの門をくぐると何かありそうだという造りになってるんですよね。
区切られた感じがいいですね。
ちょうどいい小ささだなあ。
そうなんですよ。
浄瑠璃寺。
平安時代中期にこの地域の豪族によって創建されました。
都から離れた場所であったため戦火を逃れ当時の姿のまま今に伝わっています。
またしても大きな池がありますね。
池が出てきました。
第2の極楽テーマパークという事なんですよね?はい。
やっぱりまたこちらに池があってあちらが浄土って事になるわけですよねきっと。
そうなんです。
それは同じなんです。
あちら極楽浄土である阿弥陀堂なんですが実はこのお寺ってもう1つ浄土があるんですね。
1つだけじゃない。
あそこ以外に。
今ならもう1つついてきます。
2つの浄土なんですね。
どこにあるんだろう。
エリーさんの後ろ側あちらに三重塔が見えますよね。
はいはい…。
あれも平安時代のものなんですが実はあそこがもう1つの浄土なんですね。
ここにいらっしゃるのかな?そうですね。
今中にぼんやり見えてらっしゃいますけれどもあの方が平安時代の薬師如来さんですね。
東にある浄土東方浄瑠璃浄土に住む仏薬師如来です。
人々の魂を現世へ送り出しこの世での苦しみを癒やしてくれる仏です。
仏の世界にはいくつもの浄土があると考えられています。
人は東の浄瑠璃浄土から現世に送り出してもらい亡くなると西の極楽浄土に迎えてもらうというものです。
でこちらから振り返ると…ここから送り出されて極楽へ迎えて下さるのが阿弥陀如来。
だから送られて迎えられるそのサイクル全体をまさにテーマパークのようなこの庭園と建物で表現してるっていう事なんですね。
三重塔から池を経て阿弥陀堂へ。
浄土の世界を立体的に体験できるまさにテーマパークなんですね。
2人も西方極楽浄土へ。
どうもこんにちは。
どうもはじめまして。
副住職に案内して頂き極楽浄土のあるじ阿弥陀如来に会いに行きます。
おお〜。
失礼します。
こちらが本堂で阿弥陀様が全部で9体並んでらっしゃるんですね。
極楽の9つのランク九品往生を絵で描くのではなく9体の阿弥陀如来で表現した…中央の阿弥陀如来は三重塔の薬師如来と対面するように配置されています。
まずはお参り。
九体阿弥陀は平安時代中期以降に流行したスタイル。
いよいよ末法の世に恐れを抱いた貴族たちはより多くの徳を積むために多数の仏像を作らせました。
その注文に対応するべく編み出されたのが仏像を分業で作り上げる技法。
この時代を代表する仏師定朝が主宰する定朝工房は100人を超える規模だったと言われています。
平安時代の九体阿弥陀が唯一残っているのがこのお寺。
一体一体よく見ると顔や体つきがちょっと違うように感じるんですが…。
全然顔が違いますねやっぱり。
体つきとかも実は意外と違ったりするんですよね。
衣の流れ方も違うし。
こちらの阿弥陀如来さんは目を閉じてますもんね。
開いてますよ。
ちょっと剥落してて。
こっちの方カッと開いてる…。
カッと開いてますよね。
経年した変化の度合いも違いますよね。
漆箔がこれは割と残っててあちら剥がれてるので目をつぶってるように見えたのかなと思いますけど。
お顔だちも違いますよね。
このお二人なんか比べると…。
全然違いますね。
だからやっぱりみんなで手分けして作ったんだと思いますけれども。
平安時代の仏師たちの個性に思いを馳せる楽しみ方もあるんですね。
こういう九体阿弥陀堂を造るのは一番最初にやったのは藤原道長なんですけれども道長自身が造った阿弥陀堂は法成寺という…今は残ってないお寺なんですが。
自分が亡くなる時にその阿弥陀堂の中に床をつくらせて横たわって9体の阿弥陀像それぞれから糸を引いてそれを握って…まさに阿弥陀と縁を結ぶという意味だと思うんですけど結縁するという形で最後は亡くなったというふうに書かれていますね。
そこまで執着があったのかなやっぱり。
「救われたい!」みたいにすごい思いが強かったんでしょうね。
そうでもしないと救われないっていう自覚があったんじゃないですかね。
そんな感じがしちゃいますよね。
極楽浄土のテーマパーク。
その美しく壮大な空間は1,000年の時を超え生きる事死ぬ事の意味を私たちに静かに語りかけています。
平安時代…今から1,000年前の人たちが抱えていた同じ不安な気持ちを今の自分たちも同じように持ってるんだなってそういう事を確認するだけでもこういう場所に来る意味はあるのかなと思ってます。
まあ思えば今にも通用するなと。
日本がいろいろ震災があったり…。
各地でたくさんありましたよね。
東北とか広島とか。
その平安時代にとっては極楽浄土テーマパークでこういうふうにあるんですけど私たちの時代のそれに当たるものは意外とないんじゃないかなとは国宝を見て感じたというか。
今現在そういう視点で皆さんがこういう所にいろんな不安とか執着とかそういうの捨てていっときだけでも楽になってもらうためのものとして会いに来るというのもいいんじゃないかなっていうふうに個人的には思いました。
番組に合わせて情報満載のテキストもどうぞ。
2015/04/14(火) 11:30〜11:55
NHKEテレ1大阪
趣味どきっ! 国宝に会いに行く 第2回「平等院鳳凰堂・浄瑠璃寺」[解][字]
エッジのきいたキーワードを切り口に国宝の魅力をわかりやすく伝える「橋本麻里と旅する日本美術ガイド」。今注目のライター橋本麻里があなたを国宝ワールドへナビゲート!
詳細情報
番組内容
案内役の橋本麻里さんは、美術を主な領域とするライター。日本美術の粋、国宝に出会い、現地でその魅力を体感すれば、日本美術の自分なりの楽しみ方がわかるという。今回は「平等院鳳凰堂」と「浄瑠璃寺九体阿弥陀仏」。キーワードは「極楽浄土のテーマパーク」。平安貴族たちは飢饉や大地震が続いた世を憂い、極楽をイメージした建物を作り、救いを求めた。極楽へ誘う仏が千年の時を超え私たちに伝えることとは?旅人:大宮エリー
出演者
【案内人】ライター、明治学院大学・立教大学非常勤講師…橋本麻里,【旅人】大宮エリー,【語り】中谷文彦
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趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
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