この山富士山じゃありませんよ。
中国地方の最高峰大山です。
西から見た優美な姿。
ところが北に回ってみるとまるでアルプスのような荒々しさに。
変幻自在の魅力を持つ山です。
大山は生命あふれる山。
すそ野に広がるのは西日本最大のブナの森。
雨を蓄え豊かな水の恵みを生み出します。
夜の山頂では科学者を驚かす大発見がありました。
この光る物体の正体とは?麓の暮らしは大山の水に支えられています。
大山のおいしい水で作るのは…絶品の美人豆腐。
あうまい。
うまい。
山の恵みに感謝して四季を通じて行われる祭り。
人々は大山の神や仏と共に生きてきました。
病を抱えながらも冬の大山に挑戦する登山家がいます。
大山は人生に生きる力を与えてくれる山。
さああなたもこの山でライフを楽しんでみませんか?やっほ〜!初めてや。
大山に登れば飛び切りの笑顔がもらえるかも。
命暮らし人生。
豊かなライフを与えてくれる山大山に…さあようこそ。
どっしりとそびえる大山。
麓の人々はこの山を眺めながら暮らし元気をもらってきました。
おはようございま〜す。
いってきます。
地元の人は一度は必ず大山に登るといいます。
登山口で不思議な光景。
重たい石をわざわざ荷物に加えています。
一体なぜ?その答えは山頂で。
ヒントは大山への「愛」です。
(取材者)大変じゃないですか?おなかすいた〜。
山頂までは3時間の道のり。
六合目を過ぎると展望が開けます。
あらあらおとうさん。
がんばって下さ〜い。
がんばって下さいね〜。
ゴールはもうすぐですよ。
よいしょ!着いた。
やっとじゃ〜頂上!到着です。
振り返ると…。
緑の絨毯。
日本海も見えます。
周りに高い山がないので360度一望できます。
しかし35年前は全く違う風景でした。
登山客の増加が原因で植物は踏み荒らされ表土が流出はげ山になっていました。
大山の危機に地元の人たちはある取り組みを始めます。
一木一石と呼ばれる取り組みです。
まず麓から石を頂上に運び上げます。
石を埋め込んで土壌の流出を防ぐためです。
そして苗木も運び頂上の荒れ地に植えました。
運動が始まって30年。
今も石運びは続いています。
石運びの答えそれは大山の山頂を守るため。
(取材者)大変だったでしょう?うん大変だった。
(取材者)重かったんじゃない?重かった。
一度は失われかけた頂上。
ここまで緑を取り戻しました。
よみがえった大山再び人々に元気を与えています。
森の中に漂う緑色の光。
ホタルです。
ヒメボタルという陸生のホタル。
大山の麓を彩る夏の風物詩です。
このヒメボタルに興味深いうわさが。
大山の頂上で見たという目撃情報があるのです。
しかし頂上は強い風が吹き冬はマイナス15℃にもなる厳しい環境。
こんな所でホタルが生きていけるのでしょうか?じゃあ出発しますよ。
本当にホタルがいるのか。
その真偽を確かめるため去年7月学術調査団が結成されました。
夜8時半調査開始。
草むらの中を懸命に探します。
暗闇の中目を凝らすと…。
あっ光った!いました。
ホタルです。
1,700mの山頂にヒメボタルが生息している事が初めて確認されました。
「国内最高地点」で生息するホタルの可能性も。
(男性)星空とホタルの共演が…。
本当に感動いたしました。
標高の高い頂上でこれだけの発生数がいるというのは極めて特異的な生息環境じゃないかなと思います。
命のきらめきです。
未知の自然が残る大山。
また新たな発見があるかも。
大山の水は人々の暮らしを彩る「ごちそう」に欠かせません。
麓の種原集落です。
集落の真ん中に建てられた小屋。
大山の湧き水が引かれています。
(笑い声)小屋はご近所20軒が共同で建てたもの。
この日集落の女性4人が集まりました。
ごちそうの材料は大山の水と自家製の大豆です。
昔ながらの薪を使ってこだわって作っているのは…。
もうお分かりですよね。
豆腐です。
豆乳を絞り出すのは今もこの棒一本。
(取材者)力仕事ですね。
豆腐は各家庭で食べるために50年にわたって作り続けられてきました。
でも豆腐作りにはもう一つ目的があるんです。
(取材者)ここでおしゃべりするのが楽しいんですね。
そうそう。
(2人)よいしょよいしょ…。
つるつるつるつる。
あうまい!うまい!ご近所20軒が交代で作り出来上がった豆腐を配ります。
すいませんありがとうございます。
村の中を豆腐が行ったり来たり。
また来てね。
またね。
バイバイ。
(取材者)昔からこんな事やってるんですか。
そうそう。
(取材者)なくならないんですかね。
大山の水で作った自慢の美人豆腐。
市販はされていません。
ああ残念!深夜大山の頂を目指し登る人々。
神の力を求める…山頂の薬草と水を求めて登ります。
1,000年前から続くと言われています。
暗闇の中登るのは神様の目に触れる事への恐れから。
古くからの山岳信仰の名残です。
山頂のすぐ近く雨水がたまった小さな池。
水と薬草は万病に効くと信じられてきました。
かつては神事の日に病人がこれを求め麓に押し寄せたといいます。
大山の神の力が人々を癒やすと信じられてきたのです。
(拍手)朝8時無事下山。
大勢の人が待ち受けていました。
中には夜通し待ち続けていた人も。
陰干ししてお湯に入れて飲むと霊験あらたかとか。
大山の神と人々の1,000年にわたるおつきあいです。
大山は人生に不思議な力を与えてくれる山です。
麓に住むアマチュア登山家の岡田昭博さん64歳です。
40年にわたって大山に登り続けてきました。
岡田さんに山の楽しさを教えたのが大山です。
20代の頃から冬の大山に何度も登ってきました。
ところが10年前深刻な病に襲われます。
パーキンソン病です。
手足の筋肉が自由に動かなくなる難病です。
手の震え足がもたつき転倒するなど日常生活に深刻な影響が出ています。
しかし不思議な事に大山に来ると足の症状が和らぎ登る事ができるというのです。
こんにちは〜。
(児童たち)こんにちは〜!岡田さんは年に一度地元の小学校で授業を行っています。
大山に登って自分が得た事を子供たちに伝えています。
やっぱり山はそんな気持ちを養うのにねとってもいい場所だと思うんで。
大山に冬がやって来ました。
豪雪と強風で3,000m級の山に匹敵する厳しさ。
それでも岡田さんは冬の大山に毎年登る事を目標としています。
真冬の朝トレーニングに励む岡田さんの姿がありました。
足に2キロ背中に6キロのおもりをつけて歩きます。
大山に挑み続ける事が病気に打ち勝つ事につながると岡田さんは信じています。
家族は岡田さんの挑戦に複雑な思いを抱いていました。
岡田さんの挑戦の日がやって来ました。
一緒に登るのは同じ山岳会の仲間。
病気になる前からのつきあいで冬の大山を何度も一緒に登っています。
(女性)いいかな?忘れ物ないようにして下さい。
今回登るのは大山の北の壁のルート。
通常の登山道よりも傾斜がきつく困難ですが若い時から何度も登ってきた思い出深いルートです。
最初は順調に高度を稼いでいきます。
問題はこれからの急斜面。
滑落のおそれがあるので靴の裏に滑り止めの金具を取り付けます。
しかし病気の症状のため一人で付ける事は困難です。
はいいいでしょうか。
緩みなしね?大丈夫だね。
病気になって改めて仲間のありがたみを感じるようになったといいます。
更に斜面が急になるため3人がお互いをロープでつないで滑落した時に備えます。
左手の震えが止まりません。
右手一本で振るうピッケルが頼り。
うまく動かない左手で何とか壁をつかみます。
あともう少し。
疲労は限界に近づいていました。
ようやくたどりついた頂。
元気な頃は3時間で登りましたがこの日は4時間。
おつかれでした。
(女性)ありがとうございました。
お世話になりました。
吉田さんおつかれでした。
(2人)ありがとうございました。
大山の水が田んぼを潤す5月。
人々は山へ感謝をささげます。
地元の人たちが「大山さん」と呼ぶ祭り御輿行幸が始まります。
人々が担ぐお神輿。
珍しい特徴があります。
乗っているのはお地蔵様。
大山は古くから地蔵信仰で知られた山です。
この日お地蔵様に恵みを感謝し五穀豊じょうを願います。
大山さんの祭りの前日必ず山に入る人がいます。
農家の小谷節子さん85歳です。
お目当てはタケノコ。
そして庭で取るのは新鮮なフキ。
今年もたっぷり取れました。
山の幸を使った料理を作ります。
大山さんにお参りする人をもてなす「ご接待」をするのです。
40年前のご接待の一コマ。
小谷家ではこのご接待を先祖代々250年続けてきました。
ご接待は大山さんの仏への功徳。
絶やしてはならないと母から伝えられました。
ご接待を始めた頃作られたのぼりが伝えられています。
武信佐五右衛門は庄屋の主人で大山さんの熱心な信者。
村一番の農家だった小谷家に遠路はるばる参拝に来た人への接待を頼みます。
小谷家はその依頼を律儀に守り続けてきたのです。
3年前に夫を亡くして節子さんは独り暮らし。
支度も全て一人です。
ほんとだほんとだおいしいおいしい。
グ〜。
ミョウガフキタケノコ。
250年間変わらない献立です。
ご接待の場は「一息坂峠」。
かつて山道を登って来た参拝者が一息ついた事からこの名があります。
のぼりは15年前にあつらえ直しました。
通り過ぎそうな場所ですが常連さんたちはのぼりを見逃しません。
(小谷)どうぞどうぞ。
まあ一服して食べていって下さい。
(女性)ありがとうございます。
いただきます。
(小谷)煮物よかったら食べてえや。
まあたくさん頂戴します事。
このお弁当の…。
(笑い声)
(女性)はい。
(笑い声)
(小谷)ありがとうございます。
どうもどうも。
一息ついて山の中腹で行われる「大山さん」へ。
心が通い合う峠道です。
大山は人々に新たな暮らしの糧を与えてくれました。
酪農です。
標高600mのすそ野に広がる香取地区。
(牛の鳴き声)この地で酪農が始まったのは60年前。
今では乳牛1,500頭を飼育する中国地方有数の酪農地帯です。
85歳になった今も朝4時から元気に牛舎で働いています。
(一同)いただきます。
酪農は親子3代で営んでいます。
穏やかでつつましい暮らし。
しかし大山はつるえさんにこれまで何度も試練を与えてきました。
大山が与えた最初の試練それはこの土地の開拓。
かつてここは深い森でした。
開拓したのは満州から引き揚げてきた香川県出身の100家族。
命からがら帰国したものの住む所はなく国のあっせんで大山へ入植します。
人々は香川と鳥取から一文字ずつ取りこの地を「香取」と名付けました。
つるえさんも先に入植していた男性のもとに香川県から嫁ぎ夫と共に原野を切り開きました。
大山は更に試練を与えます。
せっかく作物を植えても冷涼な気候と大山特有の酸性の土壌のため何もできませんでした。
つるえさんら香取の人々が活路を見いだしたのが酪農でした。
大山の冷涼な気候は牛の飼育には適していたのです。
入植してから20年後酪農がようやく軌道に乗り人々の生活は安定するようになりました。
つるえさん共に苦労した夫には先立たれました。
今ひ孫が生まれ石原家は総勢8人の大家族に。
名前はあみちゃん。
おばあちゃんだぞ。
お兄ちゃんによう似とる。
あ〜いあ〜い。
大山で授かったぬくもりです。
一年の暮らしの節目ごとつるえさんは開拓団の墓に花を供えます。
苦労を共にした仲間が同じ墓に眠ります。
香取の発展を見る前に亡くなった仲間もいます。
この日つるえさんはひ孫の名前を夫の賢さんに伝えました。
ふるさと香川を離れ満州を逃れ大山の麓に新天地を築いた仲間たち。
かつて見上げる余裕もなかった大山。
今つるえさんのふるさとの山です。
朝ちょいちょい見るとなきれいな時があるんだわ大山が。
ここええとこええなあきれいななあ言うては眺めます。
岡田昭博さん。
毎年地元の小学校の大山登山を引率しています。
岡田さんの願いは大山のすばらしさを次の世代に伝える事。
先端にブナの実たくさんついているな。
大山の恵みで米を作り大豆を作りそして仲間と豆腐を作り。
今日も山にご挨拶です。
2015/04/15(水) 15:15〜16:00
NHK総合1・神戸
ろーかる直送便 プライムS「Life of DAISEN」[字]
中国地方の最高峰「大山」。この山が持つ貴重な生命や、ふもとの人々の暮らしと人生。大山が持つさまざまな「Life」を四季折々の美しい映像詩を交えながら伝える。
詳細情報
番組内容
中国地方の最高峰「大山」。生命、暮らし、人生などさまざまな「Life」がつまった山だ。ふもとには西日本最大のブナ林が広がり、貴重な動植物の生命が輝く。ブナ林が蓄えた水が里を潤し人々の暮らしを支える。難病を抱えながら大山登山を人生の目標にする人、戦後この地に新たな故郷を築き生き抜いた人々、大山から生きる力をもらい人生を歩んでいる。そんな大山の「Life」を四季折々の美しい映像詩を交えながら伝える。
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
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