所得や資産の格差問題は、過去最悪となった「子どもの貧困」と関係がある。生活が苦しいため、勉強したくても十分にできず、希望の仕事に就けないこともあるからだ。そんな貧困の連鎖を断ち切ろうと学生らが支援に乗り出している。政府も対策に本腰を入れるが、こうした取り組みを後押しできるかがカギだ。

■「正社員になって貧しさから抜け出せるかも」

 今月2日夜。東京都豊島区の施設に、弁護士や大学生が10人ほど集まった。パソコンも使って、子どもたちに社会や英語などを教えている。あきてマンガを読み始める子どもに、「先生」役の女子学生が辛抱強く声をかける。「もう10分だけ勉強しない?」

 「子どもサポーターズとしま」。大学生が中心になって、週2回、子どもの学習をボランティアで支援している。「生徒」は、小学生から高校生まで10人ほど。ひとり親だったり、生活保護を受けていたりと家庭の事情は様々だ。

 「彼はあまり勉強してないけど大丈夫かな」

 「何か引け目を感じているのかもしれない」

 「授業」が終わった後は、学生同士で気になったことを話し合う。経済的な支援はできないが、少しでも勉強に前向きになってほしいとの思いからだ。

 ここで先生を続けてきた男性(23)は4月、都内のIT企業に就職した。自らも母子家庭で育ち、生活保護を受けながら国立大の夜間学部を卒業した。「正社員になって貧しさから抜け出せるかもしれない。お金のない人の気持ちがわかる大人になって、支援の現場に戻ってきたい」という。