(テーマ音楽)「きょうの健康」です。
昨日から「ひざ人工関節徹底解説」と題してお伝えしています。
今日もお話し下さいますのは高知大学教授の池内昌彦さんです。
整形外科特にひざの治療がご専門です。
どうぞよろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
それではまず人工関節について説明したいと思います。
通常ひざ関節には関節軟骨というクッションがありますけれども変形性関節症になりますとクッションがなくなって骨と骨がぶつかり合うようになる訳ですね。
人工関節手術はこの関節の表面を金属で置き換えて骨と骨がぶつからないようにして滑らかに動くようにする。
こういう治療です。
ひざの痛みはこれによって格段によくなるすばらしい治療法なんですね。
ところが手術を受けてもすぐに痛みがとれる訳ではありません。
そこで今日のテーマですけれども…これについてお話をしたいと思います。
まずは手術を受けた方のVTRからご覧頂きたいと思います。
東京都に住む…右ひざが重い変形性ひざ関節症で耐えられないほどの痛みを抱えていました。
植木さんは主治医とよく相談し人工関節にする手術を受けました。
ところが手術後も痛みは完全にとれず少しひざを曲げただけで痛みが走りました。
本当に痛かったのが手術をして痛みがとれるかと思ったらでも痛みが残ったとしばらく。
残念つらいですよね。
つらいですね。
人工関節手術は骨同士がぶつかり合うような痛みというのはよくとれるんですね。
ですから歩く時の痛みというのが比較的早くとれます。
ところがVTRの患者さんのようにひざを屈伸した時の痛みこれはもう少し時間がかかるんですね。
もし痛みがあっても通常はリハビリをきちっと続ける事でおよそ3か月くらいで痛みは和らぐものです。
そもそも痛みというのはどうして少し残ってしまうんですか?そうですねそこで今日のポイントですけれどもまずこの「手術後の痛みが起こる要因」について考えてみたいと思います。
一口に手術後の痛みといいましても原因はさまざまでしてここに3つの要因を挙げておりますがまずこの手術そのものによって起こる痛みについて説明致します。
手術はひざにメスが入ります。
こちらはですね人工関節手術を受けて頂いた患者さんの傷です。
ここからですねここまで。
縦にず〜っと入る。
ひざの前に切開が入る訳ですね。
どうしてもメスが入ると傷の痛みがありますしひざの前にはこの傷を横切るように比較的太い感覚神経があるんですね。
それが犠牲になってしまうという事で痛みが非常に強いという事ですね。
通常入院はどれぐらい?通常は人工関節術後の入院期間は3週間程度であります。
ところが退院の時点ではまだ痛みというのは残っておりましてここに挙げておりますけれども術後3か月くらいは人工関節がなじむまでに時間がかかりまして…こういったような痛みが続きます。
そうしますと普通の外科手術などと比べて大きな神経があるとおっしゃってました。
で痛みが非常に激しいというか…。
強い痛みが出やすいと思います。
こういった痛みをできるだけ少なくする工夫というのが必要です。
特に術直後の痛みというのが一番強いといわれております。
最近ではですねこのように傷を小さくしたり筋肉に与える影響を少なくする最小侵襲手術あるいは痛みの感覚を伝えにくくするような神経ブロック注射こういうものを組み合わせて痛みの少ない手術が受けられるようになっています。
痛みが強いと直後からリハビリ始めるでしょうからなかなかリハビリが進まないですよね。
そうですね。
痛いのは困りますしリハビリもうまく進みません。
そこで知っておいて頂きたいのがこちら。
痛みの要因の2つ目手術前からあった痛み。
これについて知る事も必要です。
手術でとれる痛みというのは関節の痛みなんですね。
人工関節というものは関節の表面を取り替える手術です。
こちらの模型を見て頂きますと関節表面の軟骨が削れたこういう軟骨だとか骨の痛みというのはよくとれるんですけれども手術前の痛みが関節の周りの筋肉だとか腱こういった所に痛みの原因がある場合にはなかなか痛みがすっきりとれない。
あるいは長引く慢性痛の患者さんは神経自体痛みの神経自体が敏感になっておりましてそういう神経過敏の状態のある患者さんは手術の効果というのがすぐには得られないという事です。
それはその手術の前からあった痛みがそのまま継続して?継続しているという事ですね。
そして最後に手術のあと新たに起こる痛みというのも考えなければいけません。
手術を受ける前の患者さんというのはあまり歩けていない状態なんですね。
そういう患者さんが術後に歩けるようになると。
そうすると筋肉だとか腱に負担が大きくかかります。
また通常ひざ関節大きくこういうふうにO脚になっている患者さんがいます。
そして伸びきりも悪いんですね。
伸びも悪いと。
こういう患者さんを人工関節手術でまっすぐにしますしひざも伸びるようになる訳ですね。
そうすると周りにある筋肉や腱にも負担がかかると。
そしてこういうO脚の患者さんこういう姿勢になっている事が多いんですけれどもこういう患者さんが手術によってまっすぐになりますと姿勢も変わってしまいます。
ですから体のほかの部分への負担も増えて痛みが出てくる。
こういったものが手術後新たに起こる痛みです。
ひざ関節自体が新しいものを入れて正常になったとしても周りの筋肉とかが長年の歩行の形等で相当変わってる。
そうですね。
それがなじむまで時間がかかるという事なんでしょうか。
時間がかかるという事ですね。
それが手術後に起こる痛み?はい。
それも相当痛いんでしょうか?通常はリハビリ続ける事で治っていく痛みなんですが術後すぐにとれてしまうと感じられる患者さんがいらっしゃいますのでそこはやはり時間がかかるという事を知っておく必要がありますね。
本当にじゃあどうしたら…という事をすみません伺いたいんですけれども。
そこで次のポイントですけれどもこちらにあります…痛みを和らげる方法というのはいくつかありますけれども今日は自分でできる方法についてご紹介したいと思います。
特に重要だと思われるポイントは運動療法ですね。
運動療法の中でも中心になるのは太もも。
太ももの前の筋肉大腿四頭筋といいますけれどもここの筋肉を鍛える事が非常に重要です。
それがひざの痛みにも効果があるという事なんですね?非常に効果があります。
では先ほどVTRでご紹介した患者さんですけれどもある体操を取り組まれました。
手術後痛みがとれなかった植木さんは主治医に相談しました。
そして勧められたのが…この体操はひざの周りの筋肉を鍛える事によってひざへの負担が減り痛みを軽減する効果があります。
まっすぐ伸ばした脚を5秒間上げて下ろします。
植木さんはこれを朝晩20回ずつ行いました。
かなり硬いです。
この脚上げ体操を続けたところ…年取っても。
横になるスペースがあれば例えばベッドの中で起きる前にとかそういう簡単な方法で改善するんですね。
非常に簡単な方法ですね。
コツみたいのあるんですか?ええ。
先ほどの患者さんのように少しだけ脚を持ち上げるんですね。
でひざはまっすぐに伸ばすという事。
上げ過ぎるとですね…。
上げたくなりますけど。
筋肉の訓練にあまりならないんですね。
ですから20センチから30センチぐらいで止めるという事が重要です。
負荷がすごくかかるような。
そうですね。
それでもどうでしょうか痛みが消えない場合ですね。
え〜とですね術後3か月を超えても痛みに悩まれる患者さんというのは少なからずいらっしゃいます。
でこちらは外国のデータですけれども…通常は3か月ぐらいで痛みはとれるものですけれどもその後も痛みが続いて期待していたほどではなかったと。
あまりこの手術には満足されないという事が報告されております。
こちら外国のデータですけれども日本でもこのような事が起こっている可能性というのがあるかと思います。
池内さんご自身も外来で患者さんと接してらっしゃいますけれども。
そうですねこういう患者さんいらっしゃいますね。
それで最近の研究ではどのような方がこういう長引く痛みに困られるかという事が分かっております。
特にこのように痛みにとらわれやすい方痛みの事ばっかり考えてしまうような方は要注意である。
あるいは非常に不安の強い方また手術に対して過度に期待をしてしまうような方こういうような方も長引く痛みに悩まれるというような傾向があるようです。
でもやっぱり期待もしますしね。
痛みも本当に痛いとそりゃ気になりますよね。
そういう場合にはどうしたらいいんでしょうか?そういう場合には先ほどの運動療法非常に重要なんですけども次のステップとしては薬をやはり考えた方がよろしいかと思います。
こちらには術後に使われる薬の一覧を示しておりますが1つずつ紹介します。
まず消炎鎮痛薬ですね。
これは一般のクリニックで最も処方される薬の一つです。
炎症が痛みの原因である場合にはこの痛み止めよく効きます。
次にこの解熱鎮痛薬一般名アセトアミノフェンというものが使われますね。
こういった薬もこの術後の痛みに使われる事があります。
よく風邪薬などに入っている場合が…。
そういう薬です。
そしてこちら抗てんかん薬。
これは少し聞き慣れないと思いますけれども最近は神経を切った時の痛みですね。
ピリピリとかビリビリとかジンジンとかそういうような痛みに対してこの薬が有効で使われる事があります。
またこちらにありますオピオイド。
これは医療用麻薬も含みますけれどもこういった薬がほかの治療薬でどうしても効かない場合使われる事があります。
最後にこちらは抗うつ薬ですけれども抑うつ傾向の方ですね不安の強いような方こういう抗うつ薬にも鎮痛効果があるという事が分かっておりまして時にこういう薬も使われます。
上の消炎鎮痛薬ですとか解熱鎮痛薬は比較的身近な薬ですがそうじゃないものについてはなかなかやっぱり…それをのむ時若干ちゅうちょという事もあると思うんですがこれは整形外科で処方されるんですか?整形外科でもこういった薬は処方して頂けます。
そのほかの診療科と致しましてはペインクリニックといいまして痛みの治療を専門にしている診療科がありますけれどもそういう診療科でもこういった治療薬は処方して頂けますので相談されるとよろしいかと思います。
ありがとうございました。
昨日からお話を伺ってまいりましたけども今日の痛みについては痛みってやっぱり個人差が随分ありますよね。
本当そうですね。
今日は痛みの原因がさまざまという事をお話ししましたが原因が同じでも各患者さんによって痛みの感じ方は本当にさまざまです。
まずやはり痛みの原因を探る。
主治医の先生に相談して探るというような事が初めに行うべき事でありましてその後できれば原因に応じた治療を受けると。
時には非常に時間がかかる場合もあるかと思いますけれども適切な対処をすれば痛みが和らぐ可能性が十分にあるという事を知って頂きたいと思います。
そして昨日のお話では人工関節の手術というのはやはり痛みもあるしよく考える必要があるという事もよく分かりました。
そうですね。
やはり軟骨がなくなっているという事ですね。
そして保存治療をしっかりやっているという事ですね。
それでもやっぱり困る。
将来こういう事をしたいという明確な目標がある。
そういう場合に人工関節を考えられたらよろしいかと思います保存治療というのは運動も非常に効果があるっておっしゃってましたもんね。
どうもありがとうございました。
どうもありがとうございました。
2日間にわたってお話伺いました。
2015/04/14(火) 20:30〜20:45
NHKEテレ1大阪
きょうの健康 ひざ人工関節 徹底解説「手術後の痛みの対処法」[解][字]
傷んだひざ関節を人工関節に置き換える手術は、痛みをとる効果が高い。しかし手術後は通常3か月くらい痛みが残るが運動などで改善する。術後の痛みの対処法を詳しく解説。
詳細情報
番組内容
傷んだひざ関節を人工関節に置き換える手術は、痛みをとる効果が高い。しかし手術では、ひざの前側の神経を切開しなければならず、手術そのものによって新たな痛みが起こることなどから、通常3か月くらいは痛みが残ると言われる。多くの場合、この痛みは運動療法や薬などで改善するが、痛みにとらわれてしまうと痛みが長引くことがある。手術前からの関節以外の痛みは残ることも。痛みが起こる要因や、痛みの対処法について解説。
出演者
【講師】高知大学教授…池内昌彦,【キャスター】桜井洋子
ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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