3月11日。
岩手宮城の海産物などを扱う特設市が都内で開かれました。
(松本)新鮮なんで。
鮮度が命なので。
はい。
今回の主人公松本裕也さんです。
三陸のわかめを売っています。
IT企業に勤める会社員と聞いていたのですが…。
実はこの特設販売被災地の漁師と彼が勤めるIT企業が共同で進めるプロジェクト。
松本さん自らわかめを手に声を張り上げます。
いらっしゃいませ〜。
石巻の生わかめいかがでしょうか。
一方こちらは自宅。
大勢の若者たちが集まっています。
平日の夜というのに勤め帰りの会社員が次々とやって来ます。
地元どこ?地元福岡。
あっ俺も福岡。
えっここも福岡。
マジで?なに中なに中?
(笑い声)この夜初対面の人も含めなんと5人も泊まっていきました。
一体どうなっているんでしょう?驚きのライフスタイルを送る彼の生き方とは?ハハハ!じゃんけんしようか。
「人生デザインU−29」。
(取材者)おはようございます。
おはようございます。
松本さんの職場があるのは六本木にある最先端の高層オフィスビル。
有名検索サイトを運営する大手IT企業です。
…を超えます。
松本さんの部署はその名も…国内や海外の問題に対し社会貢献の活動を行っています。
大きな災害が起きた時インターネットを通じて募金を集めるのが主な仕事です。
昨年セルビア共和国の大洪水のあとおよそ8,700万円の募金を集めセルビア大使館に届けました。
それを見てると…ボランティアって社会を変えるかも。
松本さんがこう思うようになったのは大学生の時。
地域おこしの活動で遊歩道を造った時の経験からでした。
更に地元の人に感謝される喜びを感じる事もできました。
大学卒業後松本さんがこの会社に就職したのは個人のボランティアでなく大手企業だからこそできる事があると考えたからです。
ボランティアの楽しさを広め支援する仕事をしたい。
しかし仕事となると楽しい事ばかりではありません。
今松本さんが担当しているのはボランティアを募集する特設サイト。
200人以上の参加者を集めるのがノルマです。
募集を開始してから3週間。
応募の数はまだ全体で半分程度。
うまく人が集まっていない団体のページをチェックします。
(取材者)今はちなみに何人ぐらい来てるんですか?期限は残り1週間。
ノルマを達成できなければ希望してようやく配属された社会貢献チームから外されるかもしれません。
わ〜これは大変ですよ!やるしかないじゃないすか。
はい。
この日上司からボランティアの応募状況について報告を求められました。
(箕輪)うぃっす。
でどうよ。
どうよ。
ハハハ…。
もうちょっと…
(箕輪)そうだよね〜。
上司の箕輪憲良さん。
子どもの学習支援のサイトを立ち上げた手腕を評価され政府のブレーンとしても働くインターネットのエキスパートです。
そうなんですよね〜。
企業の社会貢献をアピールするのがこの部署の使命。
常に具体的な数字で結果を出さなければなりません。
個人のボランティアと違う厳しい世界です。
松本さんが暮らすのは会社から電車でおよそ30分の町。
賃貸アパートを借りています。
(取材者)こんにちは。
あっこんにちは。
よろしくお願いします。
よろしくお願いしま〜す。
松本さんは妻の舞さんと2人暮らし。
(舞)あっこんにちは。
よろしくお願いします。
はじめまして。
(取材者)お願いしま〜す。
2人が出会ったのは6年前。
ボランティア活動の現場で知り合い昨年の4月に結婚しました。
舞さんはNPOの職員。
学童支援の仕事を担当しています。
日曜日の朝食この日は舞さんが料理を作りました。
(舞)うそこれだよ。
あ〜結構きたね。
いいじゃん。
夫婦共働きの2人。
料理も家事も交代で分担しているそうです。
(2人)頂きま〜す。
20代は仕事を優先したいという2人。
…なのですが新婚の舞さん松本さんにちょっと不満があるようです。
うんうまい。
ハハハハ!ボランティアでは人を喜ばせるのに舞さんに対してはまだまだのようです。
これはちょっとまずいんじゃないですか?松本さんの月収は残業代を合わせておよそ30万。
これを夫婦2人の生活費に充てています。
そして舞さんの収入は全て貯金しているそうです。
仕事は月曜日から金曜日。
土日は基本的に休みます。
というのも松本さんプライベートの時間はこだわりの過ごし方があるのです。
(ドアチャイム)
(2人)あ来た。
ハハハハハ。
びっくりするぞ。
日曜日松本さんの家に次々に来客が…。
お邪魔します。
靴はね外置いちゃっていいよ。
この日訪れたのはなんと8人。
松本さんは友人たちがいつでも遊びに来られるよう自宅を開放したいと考えています。
このライフスタイル「住み開き」とも呼ばれています。
(笑い声)結婚するの?え〜!え本当にするの?いやまあ…うん。
する。
おめでとうございま〜す!
(拍手)こちらがこの日の主役。
ヒラメヤリイカなど伊豆半島の網代に水揚げされた新鮮な魚です。
漁業のコンサルタントをしているメンバーが持ち寄りました。
じゃあみんな乾杯!
(一同)乾杯!趣味も業種も異なる多彩なメンバーが集まるため思いがけない話題が飛び交い盛り上がります。
あっおいしい!来週1日もいねえよ俺。
えっどこいるの?へ〜!あなご?へ〜。
え〜!いいな〜!いや楽しそう。
自宅を舞台に新たな出会いが生まれる。
これが住み開きの楽しさなんですね。
そんな感じだよね。
あこんにちは〜。
(2人)こんにちは。
今日はよろしくお願いします。
(2人)よろしくお願いします。
この日松本さんはボランティア活動によく参加している大学生を会社に招きました。
特設の募集ページで思うように参加者が増えないのはなぜか?ユーザーの立場から意見を聞き改善のヒントを探るためです。
以前は個人としてボランティアに気軽に参加していた松本さん。
今は参加者を集める側に変わり人の思いをつなぐ難しさを感じています。
どういうところを見たかっていうのをちょっと聞きたいなと思って。
ふ〜ん。
なるほどなるほど。
松本さんは学生が募集サイトのどの部分に目を留めページを閲覧してゆくのか注意深く見守りました。
あ〜そっちの目線。
なるほど。
あ〜。
学生たちは既に応募者の数が増えている団体から順にページを閲覧しました。
その結果まだ応募者が少ないボランティア活動のページは見過ごされてしまいました。
なるほどね。
ハハッ。
ユーザーの立場から観察する事でそれまで気付かなかった改善点が見えてきました。
ありがとうございます。
翌日。
(ノック)松本さんが訪ねたのは…。
はい。
こんにちは〜。
おはようございま〜す。
よろしくお願いします。
どうぞ。
よろしくお願いします。
松本です。
学習支援に取り組むNPO法人のオフィスです。
参加者を増やすアイデアについて提案するためです。
キッズドアというこのNPOは今回120人のボランティアを募集しています。
しかし応募者の数は伸び悩み半数に達していません。
このNPOの募集が伸びなければ200人以上の参加者を集める松本さんのノルマも達成できません。
(笑い声)人の興味を引くには写真が大事!松本さんは活動内容をより具体的に伝える写真がないか粘り強く交渉しました。
このNPOの魅力を最大限にアピールすれば参加者を増やせるはずだ。
松本さんはそう考えています。
どうもありがとうございました。
ありがとうございます。
募集サイトの締め切りまで残り4日。
いかに応募者の数を増やすか松本さんふんばりどころですね。
夜の10時。
残業を終え帰宅した松本さんを待っていたのは…3人の若者たち。
中にはこの日初めて松本家にやって来たメンバーも。
子ども向けのゲームを作ろうと集まった教育に関心のある若者たちです。
平和の大切さを子どもたちに考えさせたいそうだけど。
なかなか高度なゲームですね。
このお金の格差とかを見た瞬間に…。
(ドアチャイム)来ちゃった。
(ドアチャイム)どうぞ〜!あオタツか。
仕事帰りの会社員が更に加わりました。
あっこんにちは。
こんにちは。
タツヤ君です。
この集まりは作り上げたゲームを小学生たちに無料で提供するのが目標です。
それぞれの日常の仕事を離れ社会に関わっていく。
これもまた住み開きだからこそできる活動だと松本さんは考えています。
ついつい話に熱中してこの夜5人が泊まっていく事に。
じゃお休みなさい。
お休みなさ〜い。
休日。
松本さん妻の舞さんとやっと2人きりのデートかな?実はここ松本さんがボランティアで通い続ける場所なんです。
千葉県富津市にある金谷という町です。
かつては良質の石材を産出して栄えていましたが今は高齢者が目立つ町になりました。
この町を元気にしたい。
松本さんは7年前から町おこしの活動に通い続けています。
知人が古民家をカフェに改装する時もボランティアで手伝いました。
町の裏山が荒れていると聞き雑草を切り払い山道をきれいに整備しました。
おはようございま〜す。
おはよう。
(舞)おはようございます。
今では地元の人ともすっかり顔なじみです。
山の遊歩道を整備したのをきっかけに訪れる人が増え始めました。
おはようございま〜す。
でも女子だったら大丈夫。
女子?
(笑い声)この日松本さんは東京から移り住んだ友人を訪ねました。
この町を盛り上げていこうという仲間です。
こちらは彼が去年から運営しているコミュニティースペース。
アトリエも兼ねています。
お〜雰囲気のある空間ですよね。
お店を改装したアトリエはまだ片づけ中。
今日はそのお手伝いです。
松本さんは今も月に一度はやって来てこの町と関わり続けているのです。
おっ!ハ〜イ!ふらっと現れたのは外国人の旅行者。
あ〜。
宿泊のお礼としてアトリエで使ってと流木を持ってきてくれました。
わ〜!あ〜!ワオ!ジャーマニー。
フレンチ。
あ〜…って何だっけ?
(笑い声)考えてそれ!こうした思いがけない出会いもボランティアの楽しみなんですよね。
バイバ〜イ!
(一同)バイバ〜イ!バイバイ。
チャオ。
7年間通い続けた松本さんたちの活動もあり町に定住する若者も増えました。
ボランティアが地域や社会を変える力になる。
松本さんは改めて感じています。
そんな松本さんに質問です。
どんどん送り込めるようになっていく事が自分の役割だろうと思うし。
そういう意味で…いつかそれを引っ張っていけるみたいな…。
…だけど難しいんだろうね。
頑張ってよ。
ね〜。
ヘヘヘヘ。
「地域や社会のために働きたい」。
そう願う松本さん。
共に歩む舞さん。
2人で過ごす日曜日です。
ボランティア募集締め切りの前日。
上司に最新の状況を報告します。
ノルマは200人。
果たして結果は?…っていうところまで来ていて。
残り2人。
課題クリアーは間違いなし。
松本さんは人数が伸び悩んでいた募集サイトの応募者を増やすため閲覧者を誘導する仕掛けを新たに加えていました。
写真だったんだよね。
子どもの表情が見える写真を増やした事で募集ページへのアクセスが急増。
3日間で19人の応募が増えました!すごいいいプロモーションだよね。
そうですね。
ハハハ!違うか。
ハハハ!2015/04/13(月) 19:25〜19:50
NHKEテレ1大阪
人生デザイン U−29「IT企業・ボランティア支援担当」[字]
東京の大手IT企業の社員、松本裕也さん・29歳。NPOのボランティア募集サイトを担当する。プライベートでも社会貢献に専心。連日自宅には若者が続々来訪する。
詳細情報
番組内容
東京にある大手IT企業の社員、松本裕也さん・29歳。国内外の災害への募金プロジェクトやNPOのボランティア募集サイトが担当だ。プライベートでも社会貢献やボランティア活動に取り組む。自宅アパートには、志を同じくする若い会社員たちが昼も夜も続々来訪。いわゆる「住み開き」と呼ばれるライフスタイルを実践し、人と人の出会いとつながり作りを目指している。社会の為に活動する生きがいと楽しさを追求する姿を見つめる
出演者
【語り】松坂桃李
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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