▲有楽町のガード下
有楽町のガード下に「なにも注文してないのに、席につくなり料理をじゃんじゃん持ってくる居酒屋」があるという。なんでもその居酒屋「鳥藤」には、メニュー表すらなく、店長のおまかせコース1択だけ。決まって最後は、ミルクワンタンが出てくるんだとか。 京都でいうところのお茶漬けの役割を、有楽町ではミルクワンタンが担っているわけだ。
ガード下には、古びた味わいの小っちゃな飲み屋や、ラーメン屋、カレー屋などが並んでいる。 昼は飯屋、夜は飲み屋と、昼夜を問わずサラリーマンで賑わっている。
くだんの居酒屋「鳥藤」はこちら。
のれんにも看板にも「ミルクワンタン」と書かれてるだけなので、事前情報がなにもなければ中華料理屋だと勘違いしてしまいそうだ。
カウンター数席と2人がけのテーブルが3つ、小上がり2つのこじんまりとした店内。
見渡す限り、テーブルにも壁にもメニューはない。壁に貼られているのは、飛行機の写真とジェフ市原のポスターぐらいだ。
マスターに「何にしますか?」と問われるが、メニューがないので何があるのか分からない。確実に置いていそうな日本酒を注文した。
なにも頼んでないけど料理が運ばれてくる
▲1品目 ネギスープ
注文したのは日本酒なのだが、まず運ばれてきたのはネギのスープ。
さっぱりとしたスープで、喉を潤す。
▲2品目 なめこおろしと漬物
お次は、なめこおろしに白菜の漬物。
料理については、なんのやりとりもしていないのだが、お酒を注文した時点で、自動的にコースが開始しているようだ。
注文した日本酒が小さなヤカンでやってきた。フタを開けてみると、酒はなみなみつがれていた。徳利2~3本分はあるだろうか。下戸な私には、充分すぎる量だ。
▲3品目 めざし
日本酒をチビチビやってると焼めざしが2匹やってきた。
ここまでのラインナップ、日本酒の肴に相応しすぎる。三畳一間のアパートで、薄明かりのもと、つまみたい品々である。
▲4品目 焼き鳥とししとう
スープ、漬物、焼き魚と次いで、肉がやってきた。
もっとランダム性の高いメニュー構成なのかと思いきや、意外としっかりコース料理の段取りを踏んでいる。
▲5品目 おでん
おでんも1人前でこれだけの量がくる。大根、つみれ、厚揚げ、ちくわ、こんにゃくとかなりのボリュームだ。
横っちょについてるのは、かなり辛いタイプのカラシで、セブンイレブンのおでんカラシに匹敵するレベルだ。セブンのカラシってなんであんなに辛いんでしょう。
おでんが運ばれてきた時点で、入店から40分ほど経過している。
この時分には、カウンターは常連さんで埋め尽くされていた。ほとんどが1人客のおじさん達で、なにも言わずに運ばれてきたおまかせ料理をつまみに、黙々と飲んでいた。
こういう暗黙の了解があるお店は、ともすればストイックな空間になりがちだが、店長さんと女将さんが明るい方で、陽気に雑談をふってくれるので一見さんでも固くならずにいられる。
どうやら、他のお客さんの動向を監視していると、個人個人の腹具合によって、おまかせコースの途中で「もうミルクワンタンにして」と打ち止めにすることも可能なようだ。
▲6品目 ミルクスープ
「どうせならばコースを完走したい」と気合をいれて、昼飯を抜いてきたのだが、6品目にしてミルクスープが出てきた。人参、鶏肉、玉ねぎのはいった甘いスープは、トロミが少ないシチューって感じ。
事前に情報を得ていたミルクワンタン像にかなり近い代物だが、肝心のワンタンが入っていない。「これで終わりか、それとも続きがあるのか」とソワソワしていると
▲7品目 サラダ
続きが出てきた。やはりワンタンが入ってなかったので、最後ではなかったようだ。
7品目にして、なぜかサラダ。ミルクスープで一旦ふりだしに戻ったのだろうか。
▲8品目 とろろ芋
▲9品目 酢味噌の豆腐
とろろ芋、酢味噌がかかった豆腐とつないで
▲10品目 納豆チャーハン
かなり満腹になっているところに、ご飯ものがドシンときた。
納豆チャーハンもここの定番料理らしい。
「納豆、大丈夫なら上にかけちゃってください」とのこと。
ミルクワンタンもさることながら、納豆チャーハンもなかなか珍しい組み合わせだ。
▲11品目 ミルクワンタン
チャーハンをかっこんだところで、いよいよ出てきた、ミルクワンタン。
今度こそはまごうことなく、ワンタンがゴロゴロと4~5個入っている。
スープ自体は、6品目のミルクスープとまるっきり同じ。そこにワンタンを加えただけだ。スライムが色違いのスライムベスとして、パワーアップして現れた感じ。
ぷりぷりの柔らかいワンタンは、ツルツルといけちゃう。あたたかいスープが胃に優しい。
▲12品目 オレンジ
最後の最後に、オレンジが運ばれてきた。真のおおとりはフルーツだったようだ。
会計は1人3500円。コース料理12品にヤカン1杯の日本酒を飲んで、この価格なら納得のお値段である。
「まだ食べ足りない」という場合は、コースが終わったあとも、追加で料理を出してくれるそうだ。お腹をすかせて来店しよう。
お店の情報
鳥藤
住所:東京都千代田区丸の内3-7-9
電話:03-3215-1939
作者:松澤茂信(まつざわしげのぶ)
東京別視点ガイド編集長。
るるぶとか東京ウォーカーが積極的に載せないようなとこばっかし巡ってます。
そういう人生です。けっこー楽しいです。
(編集:編集プロダクション studio woofoo)
東京別視点ガイド:http://www.another-tokyo.com/
Twitter:https://twitter.com/matsuzawa_s