訃報:ギュンター・グラスさん87歳=独作家
毎日新聞 2015年04月13日 19時54分(最終更新 04月13日 23時20分)
ドイツメディアによると、長編小説「ブリキの太鼓」で知られるドイツのノーベル賞作家、ギュンター・グラスさんが13日、独北部リューベックで感染症のため死去した。87歳だった。
現ポーランド北部グダニスク(旧ダンチヒ)生まれ。1956年に詩人としてデビューし、59年に出版した「ブリキの太鼓」で、成長が3歳で止まった少年から見たナチス社会のゆがみを描き、世界的な名声を得た。「ブリキの太鼓」は映画化され、80年の米アカデミー賞外国語映画賞に輝いた。99年にノーベル文学賞を受賞。主な作品に「猫と鼠(ねずみ)」、「犬の年」などがある。
戦後左派言論人の代表格として知られ、社会民主党を支持。同党主導のブラント政権(69〜74年)がソ連、東欧との和解を進めた東方外交を支援した。ナチスの罪を批判、反原発運動を進め、移民の受け入れを主張するなど左派のシンボルだったが、2006年に自伝的小説「タマネギをむきながら」で、17歳の時にナチス親衛隊の軍事組織(武装SS)に所属したことを告白し、厳しい批判にさらされた。
12年には独紙などにイスラエルの核兵器保有を批判する詩を掲載、ナチスによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の過去を持つドイツで「ユダヤ国家」のイスラエルを露骨に批判するのは異例で、国際的に反発を買った。昨年、小説をこれ以上書かないと宣言していた。【ブリュッセル斎藤義彦】