親指シフト用かな配列を拡張する配列(NICOLA拗音拡張配列)を考えましたので、下において提案し、配列ファイルと導入方法を公開いたします。
(参考画像:現在amazon.co.jpで15540円で売られている親指シフトキーボードThumb Touch FKB7628-801)
背景
パソコンで日本語を入力する際、ローマ字入力している方がほとんどだと思います。
しかし、ローマ字入力だと、キーを覚えやすい反面、同じ内容を打つにも打鍵数が多く左手の小指への負担が大きく、また、頭のなかで「かな」を「ローマ字」に変換してから入力することになって思考の妨げになるというような短所があります。
かな入力で有名なのは、JISかな入力と親指シフト(NICOLA)入力です。
(参考画像:JISかな配列)
JISかな入力だと、キーボードの4段を使うことになってキーボードを見ないで入力する「タッチタイプ(ブラインドタッチ)」が難しい、拗音(ゃゅょぃっ等)はもちろん、濁音(ば等)、半濁音(ぱ等)を別のアクションで入力することになるという短所があります。
親指シフト入力方式は、元々富士通がワープロOASYS用に開発したものですが、その後、権利がフリーであることを明言し、日本語入力コンソーシアム(NICOLA)にて若干の拡張が行われました。
親指シフト(NICOLA)入力だと、キーボードの3段しか使わないのでタッチタイプが可能で、濁音、半濁音をワンアクションで入力することができます。
最近になって、勝間和代さん、姫野カオルコさんなどの文筆家やブロガーなどの影響で、親指シフト(NICOLA)入力を新たに始める人も増えています。
上の写真のような専用のキーボードを使う必要はなく、通常の106/109キーボードでも、左シフトキーに「スペース」キー、右シフトキーに「変換」キーというように専用ソフトウェアによって割り当てることで、親指シフトを実現することができます。
(参考画像:親指シフトの配列 ― 上段のかなはストレートシフト(近い方の親指シフト)で、濁音はクロスシフト(遠い方の親指シフト)で入力します。)
しかし、親指シフト(NICOLA)入力では、拗音(かな+ゃゅょぃっ等)の入力は、別のアクションで入力する必要があります。
また、近年、文字キー同時押下による文字入力が可能になってきました。パソコンの処理能力が上がったことや、サポートするソフトウェアが出てきているためです。
そこで、親指シフト(NICOLA)入力との互換性を保ったまま、文字キー同時押下による拗音をワンアクションで入力することができる文字配列を考えることにしました。
目標
●NICOLA完全上位互換(NICOLAとして問題なく使用可)
●文字キー同時押下による拗音入力を「っ」も含めて完全サポート
●覚えやすく、例外は基本的にはない(ことを目指す)
NICOLA拗音拡張配列の説明
上記のように、親指シフト(NICOLA)入力だと、濁音、半濁音をワンアクションで入力することができます。親指シフト(NICOLA)入力については詳しくはこちらやこちらを。
本NICOLA拗音拡張配列では、文字同時押下によって、NICOLA入力はすべてそのままで、これに加えて、拗音(かな+ゃゅょぃっ等)入力をすべてワンアクションで行えるようにします。
これによって、日本語を考えるリズムで文字を入力することを目指しています。
(NICOLA拗音拡張+αのレイアウト ― クリックして表示される高解像度画像を保存してワープロソフトに貼り付けて印刷することができます。段ごとに切ってディスプレイの縁に貼り付けることをお薦めします)
※緑色は左シフトキー、水色は右シフトキーとの同時押下時のかな、ピンク色がメイン拗音キー、オレンジ色がサブ拗音キー、灰色が第3拗音キーです。
■基本方針
(A)NICOLAで割り当てられている前かなのキー +
(B)NICOLAで割り当てられている拗音の小さい文字
を同時に押下します(理想)。
しかし、これだと重複する音があるので、(B)を2~3用意します。
■詳細
拗音の小さい文字を、(1)ぁゃ、(2)ぃ、(3)ぅゅゎ、(4)ぇ、(5)ぉょ、(6)っ の6つのグループに分けます。
(1)~(5)のグループに対してそれぞれ、メイン拗音キーと、サブ拗音キーがあります。「(6)っ」にはさらに、第3拗音キーがあります。
| (1)ぁゃ | (2)ぃ | (3)ぅゅゎ | (4)ぇ | (5)ぉょ | (6)っ | |
| メイン拗音キー | ゃのキー(R) | ぃのキー(B) | ゅのキー(F) | ぇのキー(P) | ょのキー(L) | っのキー(:)(無シフト音用) |
| サブ拗音キー | ぁのキー(Q) | . | ぅのキー(Z) | O | ぉのキー(/) | @(濁音用) |
| 第3拗音キー | Mのキー(ストレートシフト音・半濁音用)(例外的) |
各文字キーと、メイン拗音キーとを同時に押下すると、キーに割り当てられたメインの文字(主に下側の黄色い文字)の拗音が入力されます。
各文字キーと、サブ拗音キーとを同時に押下すると、キーに割り当てられたサブの文字(主に上側の文字や濁音)の拗音が入力されます。
例えば、「しゅ」は、S+F、「じゅ」は、S+Zで、「ちぇ」はU+P、「にぇ」はU+Oで入力します。
(6)っの場合は、メイン拗音キーでは下側の清音、サブ拗音キーでは濁音、第3拗音キーでは、ストレートシフト音(鍵盤の上に記載のかな)や半濁音(ぱぴぷぺぽ)の拗音が入力されます。
(2)ぃのメイン拗音キーには、Bではなく「.」キーを割り当てています。Bキーは押しメイン拗音キー、サブ拗音キーと離したかったからです)。
表:可能性がある拗音の組み合わせ
「前かな」のキー割り当ては、「ぢ」のみ例外的になっていますが、通常は使わない拗音なので実質的には問題ないかと思います。
以上が「NICOLA拗音拡張」についての説明です。
下の配列ファイルでは、下記の拡張も行っています。
●「よ」を「;」のストレートシフトにも割り当てました。多くの106/109キーボードで右シフトキーが「変換」キーである場合、Yのストレートシフトが難しいからです。
●数字キーの段(4段目)のクロスシフトに、!、―(ダッシュ)、…、→、「」、■、[]、●、『』を割り当てました。「」、[]、『』を入力すると、括弧の中にカーソルが移動します。
●半角入力時に「:」キーを「/」キーの右に移し、「:」キーにBackSpaceを割り当てました。
●こちらと同様に「無変換(又はタブなど)」+文字キーで、「削除」「後退」「半角/全角」などの機能を割り当てられるようにしました。なお、やまぶきRで「拡張1」キーを設定しなければこの機能を使用しないことができます。
やまぶきRで「拡張1」キーとして設定した[無変換]キーなどを押しながら、
Q,W,E,R,T,Y,U,I,O,P,‘
A,S,D,F,G,H,J,K,L,+,*
Z,X,C,V,B,N,M
のキーを押すと、
無,逃,V1D(無変換),V1C(変換),終,機2,機3,上,無,前,無,無
無,VF0(英数),VF2(ひらがな),VF3(全角/半角),消,後,家,左,右,終,無,無
無,前,次,前,前,次,入,下,無,無,無
のキーを押したことと同じようになります。なお、「逃」はエスケープキー、「入」はエンターキー、「空」はスペースキー、「後」はバックスペースキー、「消」はデリートキー、「挿」はインサートキー、「上」「左」「右」「下」はカーソル移動キー、「家」はホームキー、「終」はエンドキー、「前」はページアップキー、「次」はページダウンキー、「無」は割り当て無しです。
配列定義ファイル
やまぶきR(Windowsのみで動作)用の配列定義ファイルを公開します。
NICOLA拗音拡張+α.yab(V.0.92d) (右クリック→名前を付けて保存)
導入方法
やまぶきRというフリーソフトをダウンロードしてインストール(最新のWindows 8.1 64bitなどでも使えます)
(2)やまぶきRのショートカットを「スタートメニュー」の中の「スタートアップ」に作成(こちらやこちらが参考になります)
※これでWindows起動時にやまぶきRが起動するようになります(常駐します)。やまぶきRを起動しないようにするには、やまぶきRをアンインストールしたり、「スタートアップ」にあるショートカットを削除します。
(3)上記配列定義ファイルを「layout」フォルダ(C:\Program Files\yamabuki_r1.11.0\layout のようなフォルダ)などにコピーします。
(4)やまぶきRで設定します。上記配列定義ファイルを指定し、例えば、左シフトキーに「Space」キー、右シフトキーに「変換」キー、拡張1キーに「無変換」キーを設定します。(設定画面を追加予定)
上のThumb Touchのような親指シフトキーボードでは、左シフトキーに「無変換」キー、右シフトキーに「変換」キー、拡張1キーに「Tab」キーを設定するといいと思います。
(5)日本語かな漢字入力システム(MS-IME、ATOK、Google日本語入力など)で、(4)で拡張1キーとして指定した[変換]キーなどを(文字未入力時、入力時などで)「割り当てなし(無効)」に設定します。文字入力モードは、ローマ字入力です。
(標準的なMicrosoft IMEでの設定はこちらやこちらが参考になります)
謝辞など
このNICOLA拗音拡張を考えるにあたっては、親指シフト配列、NICOLA配列はもちろん、蜂蜜小梅配列の思想が大きな動機付けになりました。また、やまぶきR、DvorakJなどのソフトウェアなしでは到底実現できないものです。これらの開発者の方々には厚く御礼を申し上げます。
改善など
改善したほうが良い点などあると思いますので、このページのコメント欄にてご意見、ご要望をお願いいたします。
履歴
■2015/4/15: Ver.0.90公開。その後、第3拗音キーの位置、(2)ぃのメイン拗音キーの変更、バグのために、Ver.0.92まで更新。
ご要望、ご意見、バグ報告などありましたら、コメントをよろしくお願いします。