2015/4/12
八ヶ岳東面の静寂とリスク 八ヶ岳情報
午前3時起床、小淵沢4時出発。
4時半くらいに登山口へ着くと、ヘッデンの灯を頼りに、板の準備をしている単独登山者が居ます。
5時、私たちも出発し、すぐに板を背負った人を追い抜く。

暁の陽を受けて染まる赤岳を正面に観ながら、林道を行く
前日の雨は上がり、心配していた雪の緩みも、放射冷却でよく締まっている。

コンディションが良いお蔭で、大門沢のアプローチも、効率よく高度を稼げます

サンメドウズのスキー場は、遥か眼下になりました
両側の側壁には、あちこちに前日までの雨の爪あとである、点発生湿雪雪崩が落ちていますが、降水量は多くなかったらしく、その規模は比較的小さなものです。
例年は大規模なブロック雪崩によって、一面覆われることも珍しくない大門沢ですが、今年は遥かに楽が出来ました。

ここからはスピードダウン・・赤岳東稜のナイフリッジを行く
這松を巻くトラヴァースの度に、南斜面に乗った表層10cm余りの新雪が崩れ、古く氷化した層が顔を出すため、フラットフィッテングでは、しばしばその腐った表層に足を取られる。
ランナーはまめに取り、かつ前爪を蹴り込むトラヴァースの指示を頻繁に出しながら、慎重に進むことになりました。

上部岩壁の核心部左右の谷筋の雪は、右が何とか繋がっているようです

雪壁から狭い谷筋へ、ずれる雪とその中の氷によって、お客様が足を取られないように、ステップは念入りに刻んでいく
・・・雪はやや少なく、地熱で中が空洞になっている個所も多い。
草付きにダブルアックスを決め、前爪を蹴り込む。
小さな灌木をまとめて束ね、頼りないランナーを取っていく。
ラストは、やや育ったようなハイ松を無理やり漕いで行くと、そこは竜頭峰。
賑わう赤岳山頂や一般登山道も、間近に見て取れる。
昼も近いので一旦休憩してから、まだよく踏まれた一般道までは、慎重に進まなければならない。
ところが、その稜線上には、どう見てもクライマーには見えないサブザック姿の男性が、キョロキョロと東壁側の崖下を伺っています。
どうも様子がおかしく、足もとも心もとない。
「そこは縦走路ですけれど、何処へ行くんですか?」
と、訊けば、
「真教寺をどうも間違って登ってしまって、竜頭峰に出たんですよ。それで下山路を探しているんですけどね」
「あの?それって間違いではなく、竜頭峰に出るのが正しいんです」
そう言い聞かせても、「そんなはずはないんだけどな」
・・・地図見ろよ。
とは思ったけれど、夏道でも鎖場の続く県境尾根や真教寺尾根の下りは、雪壁の下降。
しかも時間的にも、その雪はかなり悪くなっている。
増して下山路の方角や分岐点さえ解らない登山者の下山は、危ういものになるだろう。
一歩の失敗が、取り返しの付かないミスになりかねない。
赤岳東面には、この日後方にもう一人の登山者が居るのみで、他には誰も居ないのだし、そこを単独で下山することがどういうことなのかを、とても分かっているようには思えない。
が、私たちには山で出会った登山者に注意喚起する義務はあっても、行動を制限までする権限はない。
「とにかく降りたければ、竜頭峰まで戻らなくてはいけませんよ」
後方に居たクノもやはり、
「雪が腐って下は氷化しているので危ないし、真教寺の下降は結構悪いですよ。やめた方がいい」
と各々で言い残し、私たちは車を回送してある西側へと下った。
お客様もその様子を心配されてはいたが、夕刻に駅で解散したのち、車を回収に登山口へ戻ると・・・
まだ一台、中では前夜泊もしたような登山者の車がある。
「嫌な予感がする」
と、すかさず車内を覗き込んだクノだが、積んであった山用の板を見てひとまず安心したようだ。
が、スキーの人と真教寺の人、どちらにせよ、とうに下山していないとおかしな時刻ではある。
KTを川で遊ばせつつ、私はしばらく待ってみたが、16時半を過ぎても、登山者は現れなかった。
それから二日後の、火曜日の朝。
登山者の仲間から直接、目撃情報を求める電話が入る。
行方不明とのこと。
・・・あの真教寺尾根の登山者だった。
捜索は始まっていますが、既に冷たい雨の振り続くこと三日目。
山はまた、新たな雪に覆われています。
4時半くらいに登山口へ着くと、ヘッデンの灯を頼りに、板の準備をしている単独登山者が居ます。
5時、私たちも出発し、すぐに板を背負った人を追い抜く。
暁の陽を受けて染まる赤岳を正面に観ながら、林道を行く
前日の雨は上がり、心配していた雪の緩みも、放射冷却でよく締まっている。
コンディションが良いお蔭で、大門沢のアプローチも、効率よく高度を稼げます
サンメドウズのスキー場は、遥か眼下になりました
両側の側壁には、あちこちに前日までの雨の爪あとである、点発生湿雪雪崩が落ちていますが、降水量は多くなかったらしく、その規模は比較的小さなものです。
例年は大規模なブロック雪崩によって、一面覆われることも珍しくない大門沢ですが、今年は遥かに楽が出来ました。
ここからはスピードダウン・・赤岳東稜のナイフリッジを行く
這松を巻くトラヴァースの度に、南斜面に乗った表層10cm余りの新雪が崩れ、古く氷化した層が顔を出すため、フラットフィッテングでは、しばしばその腐った表層に足を取られる。
ランナーはまめに取り、かつ前爪を蹴り込むトラヴァースの指示を頻繁に出しながら、慎重に進むことになりました。
上部岩壁の核心部左右の谷筋の雪は、右が何とか繋がっているようです
雪壁から狭い谷筋へ、ずれる雪とその中の氷によって、お客様が足を取られないように、ステップは念入りに刻んでいく
・・・雪はやや少なく、地熱で中が空洞になっている個所も多い。
草付きにダブルアックスを決め、前爪を蹴り込む。
小さな灌木をまとめて束ね、頼りないランナーを取っていく。
ラストは、やや育ったようなハイ松を無理やり漕いで行くと、そこは竜頭峰。
賑わう赤岳山頂や一般登山道も、間近に見て取れる。
昼も近いので一旦休憩してから、まだよく踏まれた一般道までは、慎重に進まなければならない。
ところが、その稜線上には、どう見てもクライマーには見えないサブザック姿の男性が、キョロキョロと東壁側の崖下を伺っています。
どうも様子がおかしく、足もとも心もとない。
「そこは縦走路ですけれど、何処へ行くんですか?」
と、訊けば、
「真教寺をどうも間違って登ってしまって、竜頭峰に出たんですよ。それで下山路を探しているんですけどね」
「あの?それって間違いではなく、竜頭峰に出るのが正しいんです」
そう言い聞かせても、「そんなはずはないんだけどな」
・・・地図見ろよ。
とは思ったけれど、夏道でも鎖場の続く県境尾根や真教寺尾根の下りは、雪壁の下降。
しかも時間的にも、その雪はかなり悪くなっている。
増して下山路の方角や分岐点さえ解らない登山者の下山は、危ういものになるだろう。
一歩の失敗が、取り返しの付かないミスになりかねない。
赤岳東面には、この日後方にもう一人の登山者が居るのみで、他には誰も居ないのだし、そこを単独で下山することがどういうことなのかを、とても分かっているようには思えない。
が、私たちには山で出会った登山者に注意喚起する義務はあっても、行動を制限までする権限はない。
「とにかく降りたければ、竜頭峰まで戻らなくてはいけませんよ」
後方に居たクノもやはり、
「雪が腐って下は氷化しているので危ないし、真教寺の下降は結構悪いですよ。やめた方がいい」
と各々で言い残し、私たちは車を回送してある西側へと下った。
お客様もその様子を心配されてはいたが、夕刻に駅で解散したのち、車を回収に登山口へ戻ると・・・
まだ一台、中では前夜泊もしたような登山者の車がある。
「嫌な予感がする」
と、すかさず車内を覗き込んだクノだが、積んであった山用の板を見てひとまず安心したようだ。
が、スキーの人と真教寺の人、どちらにせよ、とうに下山していないとおかしな時刻ではある。
KTを川で遊ばせつつ、私はしばらく待ってみたが、16時半を過ぎても、登山者は現れなかった。
それから二日後の、火曜日の朝。
登山者の仲間から直接、目撃情報を求める電話が入る。
行方不明とのこと。
・・・あの真教寺尾根の登山者だった。
捜索は始まっていますが、既に冷たい雨の振り続くこと三日目。
山はまた、新たな雪に覆われています。