溢れている。そう言った類いの、ネガティブパフォーマー

　ネットで情報を調べられる時代になった今、バカだけど行動力だけある営業マンが好成績を叩き出すのは至難の業となった。
　どこの分野だろうと、這い上がるのは厳しいだろう。
　学生時代からコツコツ積み上げてきた人間は、大量にある知識の中から創造性のあるアイデアや解決策を導き出し、高次元で仕事をしている。
　そうしたクオリティの高い人達を追い越すのは、相当な時間が必要であるし、世の中も人も常に動いている訳だから、気づいた頃には周りのレベルも遙かに高まっている。
　常識レベルの知識を身につけた時点で、周囲の人間は何十段も高みにいる。
「一度落ちた人間は強い！　だから不屈の闘志で蘇れ！」
　こうしたアドバイスがあったとしても、それはまともに空を飛翔していた人間に対するものだ。
　土の中に長年埋まり続けていた奴に向けたメッセージではない。

２０歳を超えて、格差の底辺にいると感じたら諦めよう

「人間は生きているだけで幸せなんだ」
　これに類する言葉が書かれた本だけを読んで生きて行こう。
　ユーチューバーも、ニコ生主も、ブロガーも、芸人も、役者も、席はパンパンに埋まっている。
　それでも保険など掛けずに突っ込んだ人間の０．１％ぐらいは、有名になる場合もあるから、ダメなら死のうって気概を持って立ち向かうならありかもしれない。
　つまり、成功の定義＝金銭的豊かさだと思っている、知識も経験も蓄積してこなかった人達は、本気で下克上を目指すなら、精神的豊かさを捨てなくてはならない。
　ダメなら人生終わりだな……。
　このように憂鬱とラブラブしながら生き続けるのだ。
　底辺層の物語がスタートしているなら、もう一時停止も利かない。
　グローバル化が加速して、今よりもっと苦痛に満ち満ちた生活が始まる。
　肉体的には国が面倒を見てくれる可能性は高いが、心までは知ったこっちゃないの一言で片付けられてしまう。
　若い女子と華麗なる夫婦生活を送っている友人を見て、どん底に落とされた気分になっても誰も救ってくれない。
　ほの暗い底の底で、うぉーんうぉーんっと泣き叫んでも無駄だ。
　それでも粗悪な食べ物を落としてくれるから安心しよう。最低限腹を満たしながら生きて行く事は出来る。つまり、不幸に長生きするのみだ。
　そうなってしまえば、テレビもネットも核兵器並の攻撃力を持っているように見えてしまう。
　笑顔溢れる家庭の様子、ぺちゃくしゃ喋って高額所得、自分よりずっと若いモテモテ成功者。
　人間は比較を辞められない。
　だから、下の下の下の下の下で生きざるを得なくなったなら、情報を捨てるべきだ。

太陽を浴び、肉を食らい、昼間から酒を飲んで寝よう

　はてなのアカウントも削除する必要があるかもしれない。
　高齢者の自宅に鍋を持って伺い、「おかずが余っているなら……」と泣き出す必要もあるだろう。
　落ちぶれたらぶっ飛ぶしかない。
　落ちぶれたら我を忘れるしかない。
　落ちぶれたらクレイジーに立ち回るしかない。
　間違いなく格差の広がる日本なのだから。

これからは、どれだけ気狂いを演じられるかが重要になって来る

　土下座や、鼻血を流す練習もしておくべきだ。
　ヤバイ奴、可哀想な奴、怒らせてはイケない奴。
　そうした人間を死ぬまで演じるのだ。
　野生の猿だとか、カラスだとか、人様に迷惑を掛けてもパワーを漲らせながら生きている。
　こうした動物をメンターとして、日常生活を送るべきだろう。
　社会貢献をすると幸せになる。
　こんな考えに縛りつけられていては、落第組はうつ病を発症してしまう。
　カラスは毎日迷惑を掛けているが、あの喧しい泣き声から察するに、幸福度はすこぶる高いと判断出来る。

人間は人間の敵だ。他人は自分の敵で、自分は他人の敵だ

　引きこもりやニートの経験だとか、百万円近く借金をしていただとか、自殺を考えていただとか、童貞だとか、貧困だとか、友達が一人もいないだとか、どれもこれも退屈なステータスだ。
　まだその辺に転がっている、人面石の方がよっぽど面白い。
　この世は一部の優秀者と、ダメ人間に分かれている。
　だから、どれだけ自分の情けなさを世界にアピールしようと、「うんうん。共感出来るよ。特別ではないけどね？」と鬱陶しい顔をされるだけだ。
　人は誰も、他人に興味がない。
　けれど、ハゲやデブを見つけると、目が離せなくなる習性がある。
　人は誰も、他人のコンプレックスをあざ笑う事に快感を覚えるからだ。
　大爆笑するには、現在進行形である事が必須だ。
　さっきパチンコ店で２０万円飛んだ。リボ払いのせいで破滅しそうだ。これからって時に禿げてしまってフラれた。
　リアルタイムの不幸を見ると、地上に降りてくる神様を見るような好奇心で、観察をし続ける。
　つまり人は、他人に興味はないが、今この時点で受けているダメージについて知りたくてしょうがないのだ。
　だから、これから格差が広がると、より冷たい目線が飛んで来ると覚悟しよう。
　深い底に落ちてしまった者達は、毎日石を投げられ、泥土を口の中に詰められ、吐瀉物を塗りたくられる。

人はお前そのものに興味がない。けれど、痛がっているお前は大好きだ

　世界は理不尽で薄汚い。
　常軌を逸している。あまりにも野蛮だ。汚れきった精神性。
　どれだけ怒りをぶちまけた所で、人間は死ぬまで変わらない。

　だったら、持ちうる力を全部解き放とう。
　我慢をする必要などないのだ。
　他人のせいにしよう。他人に責任を擦り付けよう。他人のスネにしゃぶりつこう。
　法律を守り、道徳を壊す。
　猿のように早朝から騒ぎ、カラスのように街中で残飯を食い散らかそう。
　怒られたら泣こう。叩かれたら失神するまで転がってしまおう。
　知らない人をじっと見つめて困惑させよう。
　日本の上流ラッパー・呂布カルマが、
『覚醒剤使わなくたって、人間辞められるぜ』
　と、言っていた。
　底辺に落ちたら、動物になれば良い。
　子猿を憑依させて、見知らぬ人からバナナを貰って暮らすのだ。
　働く必要なんてない。頑張る必要なんてない。本もペンもいらない。
　純粋な生身で地球を徘徊していればそれで良い。

自分だけを愛して生きよう

　みんなが自分だけを愛する世界になれば、規律も何もなくなり、今ある世界がガタガタと崩れて行く。
　そうすれば、総理大臣だろうが、政治家だろうが、大物芸能人だろうが、関係がなくなる。
　我々が猿だった時代を取り戻せ。
　ワガママな絶叫が地球を周回する人生を望むのだ。

　それが、底辺に落ちた際にやるべき事である。
　せっかく生きているのに、他人に付き従う必要などまるでない。
　一人一人が粗暴な王様のように生きれば、世の中問題だらけになる。
　それが幸福の始まりなのだ。
　問題を作って、みんなで解決。
　この連続だ。
　社会的地位を、役割を、名声を次々破壊しては、また再生する。
　一部の人間だけに、素敵な居場所が与えられるなんて狂っているにも程があるじゃないか。

　順繰り回すべきだ。
　ロシアンルーレットを参考にして地球を再構築しようよ。
　キレ者でも、美人でも、善人でも一発で倒れてしまうかもしれない。
　そんな危うい世の中を、みんなでせっせと作ろう。

　野蛮さの中で、幸せは輝く。