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【社会】

「最高の決定」万感 高浜再稼働認めず リスク恐れず申し立て

笑顔で記者会見する河合弘之弁護士(前列右から3人目)ら=14日、福井市で

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 東京電力福島第一原発事故から四年余り。十四日の福井地裁の仮処分決定は、高浜原発二基の再稼働差し止めを命じた。申立人は今後の本訴訟で関電側が勝った場合、多額の損害賠償を請求される可能性がある。だがリスクを背負いつつも「福島事故の悲劇を繰り返さない」との決意を胸に、闘ってきた。 

 午後二時すぎの福井地裁前。「全面勝訴。考え得る最高の内容です」。雨の中、集まった支援者の前で、弁護団の河合弘之共同代表が声を張り上げると、涙ぐむ人も。掲げた垂れ幕には、「司法はやっぱり生きていた」。原告住民らの思いが込められていた。

 近くのホールで開かれた報告集会で、河合代表が「徹底的に戦う最大の武器を手にした。きょうから第二ラウンドが始まる」と自信に満ちあふれた声を響かせると、会場は大きな拍手に包まれた。

 大阪府高槻市の水戸喜世子さん(79)は、芝浦工業大の教授だった夫巌(いわお)さんの遺志を継ぎ、仮処分申し立てに参加した。約二十九年前に亡くなった巌さんは放射線物理学の専門家として講演会や論文を通じて原発事故による被害の危険性を訴え、科学者の立場から反原発運動を支えてきた。

 「原発には潜在的な危険があり、最悪の事故が起きる可能性がある」との巌さんの警告もむなしく、福島では事故が起きた。「夫の訴えを決して無駄にしない」。事故後に脱原発運動に参加し、昨年五月に判決が出た関電大飯原発3、4号機の差し止め訴訟にも原告に加わった。

 しかし今回の仮処分では、申立人の間で損害賠償への不安が広がった。仮に再稼働差し止め決定が出ても、関電が本訴訟に持ち込み、負けた場合は稼働が遅れた日数に応じて、数億円にも上る損害を関電から請求される恐れがある。

 実際、九州電力川内(せんだい)原発の再稼働差し止め仮処分(鹿児島地裁)で、住民の多数が申し立てを取り下げた。

 自営業松田正さん(65)=福井県坂井市=も、弁護士から仮処分のリスクについて念押しをされた。説明を聞き、泣く泣く参加を断念する知人もいた。しかし「原発を止めるチャンスがあるのなら、家や土地など惜しくない」と、水戸さんらとともに昨年十二月、申し立てに踏み切った。

 

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