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【高浜原発仮処分】
政府と足並み揃わぬ司法判断、エネルギー議論の未熟さが問題
原発の安全性を評価する基準としては「世界一厳しい」とされる日本の新規制基準に適合した関西電力高浜3、4号機の運転を、福井地裁は認めなかった。安全性が確認された原発を順次稼働させるという政府の方針に、司法の足並みが全くそろわない背景には、日本のエネルギーをいかに確保していくかについて、社会的な合意が十分になされていないことがある。
原発とエネルギーをめぐる議論は、東京電力福島第1原発事故から4年を経てもなお進展がみられない。政府・与党は、選挙で主要な争点とすることを避けるなど原発の持つメリット、デメリットについての議論をリードしてこなかった。
こうした中で、司法は判断の根拠を誰もが否定できない「人格権」に求め、リスクはみじんも受け入れないという極論に走ったといえる。
政府は今年に入ってようやく、平成42年の電源構成比率(エネルギーミックス)の検討を始めた。原子力の比率を全体の20%程度に回復させるなど具体案づくりを進め今夏に決定する見込みだが、本格的な議論はこれからだ。
原発は、他の科学技術と同様に完全な安全性を確保することはできない。ただ、原発がなくては日本経済が立ちゆかなくなることや、地球温暖化対策が大幅に遅れて社会的に大きなリスクを抱え込むことになるのも明らかだ。
社会を維持していくために何を優先し、どんな対策を講じて、リスクにいかに備えるのか。広く共有できるエネルギー政策の具体像を描くことが求められる。(板東和正)