2015年4月15日01時36分
「原子炉を運転してはならない」。福井地裁は14日の仮処分決定で、福井県高浜町の関西電力高浜原発3、4号機の再稼働禁止を命じた。原発の運転を即時に差し止める初の司法判断に、申し立てが認められた住民らは喜びにわいた。一方、再稼働に期待する地元自治体からは反発の声が上がり、戸惑いが広がった。
仮処分決定が申立人側に伝えられた直後、申立人代表で福井県敦賀市議の今大地(こんだいじ)晴美さん(64)らが、福井地裁の入り口から笑顔で駆け下りてきた。
「司法はやっぱり生きていた!!」。勢いよく幕を掲げると、関西や九州などから駆けつけた約150人の支援者から「おめでとう」「よく頑張った」と歓声と拍手がわいた。弁護団共同代表の河合弘之弁護士は、「最高の内容」とひときわ大きな声をあげた。
申立人らは近くの会場で記者会見に臨み、「最大の特徴は(福島原発の事故後に原子力規制委員会がつくった)新規制基準の不備を厳しくつき、無効性を明らかに宣言したこと」とする声明文を読み上げた。河合弁護士は「原発の規制基準を作り直すところから出直せというのが裁判所のメッセージだ」と指摘した。同じ弁護団共同代表の海渡雄一弁護士は「宝物のような決定だ」と笑顔を見せた。
「喜んでくれていると思う」。申立人副代表を務める大阪府高槻市の水戸喜世子さん(79)は、記者会見で夫の遺影を掲げ、声を震わせた。芝浦工業大教授だった夫の巌さんは「脱原発」の草分けとして知られ、各地の訴訟で「原発事故は広い範囲に被害を与える」と証言してきた。
水戸さんは福井地裁が昨年5月に関電大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の運転差し止めを命じた裁判の原告でもある。樋口英明裁判長が判決で「原発の危険性の本質、その被害の大きさは福島の原発事故で十分に明らかになった。危険性の判断を避けることは裁判所の責務の放棄だ」と述べたことに胸を打たれ、中国語や韓国語などに翻訳してネットで発信した。
しかし、関電は判決を不服としてすぐに控訴。再稼働に向けて手続きを進める姿勢が許せず、今回の仮処分の申立人になった。「科学者は100%安全だと保証できないものは動かしてはならない」。元京都大助手で物理学者でもある水戸さんは力を込める。
弁護団の中には表情を引き締める人もいた。福井地裁前で喜ぶ支援者らの輪にいた地元の笠原一浩弁護士(39)は「戦いはこれから」と話した。
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