こんにちは、アッションの西川です。
DSPやDMPがある程度広がり、一息ついたところで、広告の費用対効果を更に下げるためにサイトのCVRをあげていくという「サイト改善市場」が大きく注目されています。
その中でも注目ツールは、ユーザーのページ内での動きを把握できるヒートマップツール(ユーザー解析ツール)と、その解析で建てた仮説を高速に検証するためのA/Bテストツールです。
しかしながらよくある疑問としては、
「どのツールを導入したらいいのかわからない!」ということですよね。
私も調べてみたところ情報収集中のWebマーケターの方々が比較検討しやすくなるような各社ベンダーの情報がまとまった記事があまり無いように思ったので、
A/Bテストツール提供ベンダーとして情報をまとめてみました。
国内ヒートマップ・A/Bテストツール提供5社の相関図
ブログ冒頭の相関図にまとめましたが、ヒートマップツールでは老舗のクリックテールと人気上昇中のPt engineが主要2ツールです。
A/Bテストツールでは知名度No.1のOptimizely、クラウドソーシング機能や各社との提携で話題のKaizen Platform、低価格と高性能でジワジワ導入社数を増やしているVisual Website Optimizerの3つが主要どころでしょう。
相関関係、連携関係を見てみましょう。そもそもですが、ユーザー動向解析ツールであるヒートマップツールと、仮説・デザイン検証を高速化するためのABテストツールは非常に相性が良いです。
そのため、最大手ABテストツールのOptimizelyとはクリックテール、Pt engineどちらも連携対応が完了しています。
世界第2位の導入実績を誇るABテストツールVisual Website Optimizerもクリックテールと連携していますね。
それでは各ツール毎の特徴や提供企業、どんな企業に向いているのかを見ていきます。
ヒートマップツール 2社概要と比較
ヒートマップツール2社は明確に価格帯が異なっているところが面白いですね。
クリックテールは他社ツールにはないユーザーのマウスの動きを録画する機能や、ページに何秒滞在した後どのどのボタンをクリックしたか、などページ内でのユーザーの動きが秒単位までわかる詳細な解析機能に磨きをかけています。
それに伴い、高価格帯に移行し、ターゲットも大手ポータルサイト、大手ECサイト運営企業に絞っています。過去提供していた無料トライアルも現在行っていないようです。
一方、Pt engineはWeb決済を導入することによって人的コストを極限まで抑え、機能制限のあるプランでは永久無料でツールを提供しています。
機能としてはマウスレコーディング機能(ユーザーのマウスの動きを録画する機能)やマウスムーブヒートマップ(ユーザーのマウスの動きの軌跡を表すヒートマップ)がなかったりとクリックテールよりは劣る印象ですが、Google Analyticsのイベント設定が全てPtengine内で完結したり、Google Analyticsのデータが管理画面で見れたりと、使いやすさと低価格により導入社数はものすごく増えています。
どちらのツールを導入したら良いか、という点に関しては、
大規模EC・ポータルサイト運営企業で、高精度なユーザー解析により本格的にページ内解析を行っていきたい企業であればクリックテールを、
それ以外の企業であればまずはPt engine無料版を使ってみて、有料版を検討すれば良いのではと思います。
クリックテールはGoogle Analyticsなど定量的解析ツールだけではわからないユーザーの動きを徹底的に解析するのに非常に長けている・これ以上よいツールは無いといえるツールですし、
PtengineはGoogle Analyticsやヒートマップなど全ての情報を1つのツールで1元管理し、解析の確度を上げながら工数を減らすことに長けているツールです。
そもそもの設計思想、ターゲットユーザーが明確に異なるので、用途に応じて使い分けましょう。
A/Bテストツール 3社の概要と比較
A/Bテストツールに関してはKaizen Platformがクラウドソーシングを活用した独自路線・アウトソーシング推進路線を進む一方で、OptimizelyとVisual Website Optimizerが価格帯や機能で差がありつつも真っ向勝負しているところです。
Kaizen Platformさんはツールを通じて実績のあるグロースハッカーに遠隔でサイト改善作業を全てお任せできる機能の拡張を進めています。
少し前にも各業界ごとに実績のあるグロースハッカー数人で組成したチームを専属グロースハッカーとして契約できるプランを発表していましたし、「社内にグロースハックするリソースがない企業でもグロースハックできる世の中を作る」という設計思想の体現のために邁進しているようです。
しかしツール費用が基本月額50万円~の2年契約ということもあり、資金に余裕のある企業向けに作られています。
ただし、大規模代理店が購入したアカウントをクライアント向けに安価に提供していたりもするようなので、必ずしも自社で購入せずともKaizenさんを使うことはできるかもしれません。
「A/BテストツールといえばOptimizely」といわんばかりの知名度を誇るOptimizelyはというと、米国Optimizely社が15年内にリクルートさんとイー・エージェンシーさんをパートナーとして日本法人を立ち上げると先日リリースがありました。
Optimizely陣営もその知名度と実績を武器に14年末頃にプランを改定し、機能制限のある永久無料プランを利用するか、月額数十万円する有料プランを利用するか、の2択で現在プラン提供しています。
知名度も実績もあるツールなので、日本国内では大手クライアントをメインターゲットに拡販していく戦略でしょう。
世界的にもA/BテストツールNo.1の知名度と導入社数を誇るため、他社ツールとの連携が容易な点は見逃せません。
最後にVisual Website Optimizerはというと、国内での認知度は月間検索数をベースにするとOptimizelyの1/10程度ながらも、
最先端のWebマーケターの中ではじわりじわりと認知度や人気を高めているツールです。
月間10万UUテスト可能なプランが月額10万円~使える、という競合2ツールの1/3程度の価格帯や、
ヒートマップ機能が無料で付いている点、非同期型タグ採用でページ読込速度を低下させない、といった独自機能を付加することで、価格と機能で差別化を図っています。
国内では独占パートナー(独占代理店)としてVisual Website Optimizerを提供するアッションは機能面でOptimizelyと勝負することはもちろんのこと、「価格面のツール導入ハードルを下げてより多くの企業に導入して」もらい、導入社数を増やす戦略です。
こうして見ていくと、
資金面に余裕がありクラウドソーシングを活用したいならKaizen Platform、
社内で利用したくて、実績や他社ツールとの連携を第1に考えるならOptimizely、
社内で利用したくて、まずは低価格に導入したい、ページ読込速度は遅くしたくない、ヒートマップも見てみたいというニーズがあるならVisual Website Optimizer、
という使い分けができるのではないでしょうか。
各ツール・各社の検索動向と今後の戦略
縦軸にGoogleでの月間検索回数(回)、横軸に直近1年(月)を用意し、この1年間での各ツール名(ローマ字、日本語合わせ)の検索数推移をまとめました。
認知度が高ければ良いツール、さらには自社に最も適したツール、ということは全くないですが、
世の中での認知度を相対的に比較するためにGoogleの各ツールおよびベンダーの検索数をみていきましょう。
まず最初に目につくのが、青色のグラフのPt engineさん。この1年で検索数を300⇒2900と約10倍に伸ばしています。後ほど詳しく見ていきますが、ソーシャルメディアとブロガーを巻き込んだマーケティング戦略がうまくいっているのでしょう。
同じヒートマップツールという括りでは、クリックテールは検索数をこの1年で減らしています。
ABテストツール3つを見ていくと、Kaizen PlatformとOptimizelyが微増で現在2,000回/月程度です。クラウドソーシングならKaizen、インハウスならOptimizely、という住み分けになっていそうです。残り3つ目のVisual Website Optimizerは超低空飛行です。ただこの低空飛行でも国内330社の導入実績です。検索数と導入社数、シェアの相関性も今後調べてみると面白いかもしれません。
さて、検索数の推移と合わせて、プレスリリースなどもチェックしながら各社の戦略も分析していきます。
ClickTale
- 関連ワード検索数(2015年2月時)
クリックテール:550回
Clicktale:500回
Click tale:50回
ギャプライズ:1,600回
世界で100,000社以上が導入するクリックテール関連のキーワード検索ボリュームは昨年から比較すると若干減少傾向にあります。
前述のとおりクリックテール自体も低価格帯でWeb広告を多用しマスを取りに行く戦略から、限られて大手企業向けの高付加価値・高価格帯路線に変更しているためリスティング、ディスプレイ、リマケ関連のWeb広告出稿もだいぶ抑えているためそれも相まって検索数も減少傾向にあるのでしょう。
実際にクリックテールとAdobeさん共催で2月にセミナーを開催していたりと、Adobeさんのターゲットとなるような企業をクリックテールもターゲットにしている証拠です。
また、ベンダーのギャプライズさんはLPOカンパニーとして圧巻の検索数です。
現在ではクリックテール以外にも競合解析ツールのシミラーウェブ、レビュー獲得ツールのヨットポの代理店も務めています。
「クリックテール」検索回数
「clicktale」検索回数
「click tale」検索回数
「ギャプライズ」検索回数
Ptengine
- 関連ワード検索数(2015年2月時)
ptengine:2,900回
ptmind: 400回
今では「ヒートマップツールといえばPtengine」といわんばかりの破竹の勢いのPtengineさんですが、
1年前の検索数は以外にも300回程度。グローバルでの導入社数は約20,000社程度みたいです。
増加傾向に転じた2014年8月前後に何があったか見てみると、
インフルエンサー、ソーシャルメディアで影響力があるユーザー、向けに無料でツールを提供し、ソーシャルの力を利用して知名度を上げていく戦略を打ち出したところでした。
Ptengineさんのマーケティング戦略はこのソーシャルメディアやインフルエンサーをうまく活用するというところが非常にうまくいき、14年8月以降に順調に検索数と認知度を伸ばしています。
Pt engineも昨年秋ごろまでは積極的にフェイスブック広告出稿を行っていましたが現在は出稿されていないようです。
今後の戦略としては価格帯は抑えたまま、ブロガーを多く囲っている企業や、はてブやWordpressなどブロガーが当たり前のように使うツールとの連携や無料提供を強化していきながら、一気にユーザー数拡大を狙う戦略と分析できます。
Ptmind、インタースペースと業務提携〜アクセストレード会員へPtengine特別プランを提供〜
はてなブログユーザーへ、アクセス解析ツール「Ptengine」特別無料プランの提供を開始〜はてなブロガーはヒートマップを利用したコンテンツ分析が可能に〜
「ptenigine」検索回数
「ptmind」検索回数
Kaizen Platform
- 関連ワード検索数(2015年2月時)
Kaizen Platform:2,400回
カイゼンプラットフォーム: 300回
Kaizen Platformさんはメディア露出がうまく、定期的にプレスリリースを配信していたり大きくニュースに取り上げられたりしていることが要因となり、1年間を当して安定的に検索数を確保しています。
直近の15年2月に増えているのはグロースハック大賞の授賞式を行ったり、特化型グロースハックチーム提供開始のニュースが拡散された影響でしょうか。
また、前述のとおり、方向性としても他の2つのA/Bテストツールとは異なる動きをしています。
「社内にグロースハックするリソースがない企業でもグロースハックできる世の中を作る」という設計思想の体現のために、Kaizenさんを使って社外からグロースハック可能な人材の育成に力をいれています。
なんといってもクラウドソーシングで企業のグロースハックを実現するための1番のハードルは、グロースハックを全てお任せできる人材の確保につきますからね。そう考えると、今後も人材派遣企業や大学・専門学校と連携した動きが多くなることが予想されます。
「Kaizen Platform」検索回数
「カイゼンプラットフォーム」検索回数
Optimizely
- 関連ワード検索数(2015年2月時)
Optimizely:1,600回
オプティマイズリー: 400回
イー・エージェンシー:1,000回
世界でも日本でも知名度No.1を誇るA/BテストツールOptimizelyですが、15年に入ってから検索数を増やしています。このあたり、まだまだ日本では「A/Bテストツール」市場自体が伸び盛りにあるように思います。
また、特記すべき点としては、先月15年3月にも、米国本社とリクルートさん、イー・エージェンシーさんがパートナーシップを組み15年内に日本法人を立ち上げることがプレスリリースとなり話題となりましたね。世界的ツールが本格的に日本進出を果たすようです。
余談ですが、現在Optimizelyの公式サイトからお問合せをするとイー・エージェンシーさん経由で日本語対応していただけます。
今後の戦略としては、クリックテールと同じく実績を元に高価格帯に移行していくのでしょうか。集客方法としては現在の動きをみていると、Web広告というよりもリクルートさんやイー・エージェンシーさんのブランド力も活用しながら、プレスリリースやセミナーをうまく活用して集客する方向と分析できます。
価格帯は、昨年14年末のプラン変更によって、いろいろな条件の下で月間5万UUまでは永久無料で使えるプランか、月額数十万円~の有料プランか、にわかれました。
大規模サイトで本格的にOptimizelyを利用したい場合には有料プランに移行せざるを得ませんが、まずは無料プランで使い勝手をみてみるのも良さそうです。フリーミアムでまずはユーザーを惹きつける戦略はPtengineと似ている所があります。
「Optimizely」検索回数
「オプティマイズリー」検索回数
「イー・エージェンシー」検索回数
Visual Website Optimizer
- 関連ワード検索数(2015年2月時)
Visual Website Optimizer:160回
アッション: 590回
Visual Website Optimizerは国内ではOptimizelyの影に隠れてなかなか認知されていないA/Bテストツールですが、意外にも世界4,500社、国内330社の導入実績を誇っています。
検索ボリュームで1年前と比べたら増加しているものの、今回紹介した全ツールの中でも最低の160回ほどです。
日本国内では弊社アッションが独占パートナー(代理店)としてサポートや導入支援を行っていますが、昨年末あたりから積極的にリスティング広告やフェイスブック広告などを活用し認知度アップに励んでいます。
プレスリリースはなかなか出せていませんが、Web広告を見ていただければ分かる通り、今後の方針としては競合2ツールよりも低価格でA/Bテストツールを提供することで導入社数を増やしていく方針です。
「Visual Website Optimizer」検索回数
「アッション」検索回数
まとめ:1年後の16年4月、この勢力図がどうなっているか要チェック!
ヒートマップツールとA/Bテストツールの主要ベンダー5社の比較や各社の戦略をまとめてみましたが、盛衰の激しいWeb業界では来年の今頃何が起こっているか想定できませんね。
この記事で記載したこと状況が来年どう変わっているのかを楽しみにしながら、みなさまの状況にあったツールを選んで頂く一助になれば嬉しいです。