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アルバムを作りながら、父ともう一度 会話をしてるような感じがしましたね

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伝説のフォークシンガー高田渡が息子・漣に引き継いだ生活者の歌

インタビュー・テキスト:金子厚武 撮影:西田香織(2015/04/14)

近年の細野晴臣は音楽を「考古学」として捉え、地層を掘り起こすことによる発見を若い人に伝えることで、意欲的に音楽文化を継承しようとしている。そして、日本のフォークという地層を掘り起こしたとするならば、絶対に避けて通れないのが高田渡の存在だ。生涯、酒と詩を愛した吟遊詩人として知られ、2004年の映画『タカダワタル的』によって、彼の生き方の虜になった人もきっと多いはず。北海道での急逝から今年で早10年。初のオールタイムベスト『イキテル・ソング~オールタイム・ベスト~』と、息子の高田漣によるトリビュート盤『コーヒーブルース~高田渡を歌う~』は、いわば音楽の歴史をたどる旅であり、親子の歴史をたどる旅でもある。

高田漣といえば、細野晴臣からくるり、星野源に至るさまざまなミュージシャンのバックを務め、ペダルスティールをはじめとしたマルチな弦楽器奏者として知られている。また、ソロアーティストとしてもインストゥルメンタルを軸に作品を発表してきたが、東日本大震災をきっかけに日本語の歌へと傾倒し、今回遂に人間・高田渡と正面から向き合ったのである。この日の取材では、「音楽家」としての、そして「父」としての高田渡について語ってもらうと同時に、自身のこれまでの歩みについてもじっくりと振り返ってもらった。高田漣の饒舌な語り口からは、やはり父親の姿を連想せずにはいられなかった。

PROFILE

高田漣(たかだ れん)
1973年、日本を代表するフォークシンガー・高田 渡の長男として生まれる。少年時代はサッカーに熱中し、14歳からギターを始める。17歳で、父親の旧友でもあるシンガーソングライター・西岡恭蔵のアルバムでセッション・デビューを果たす。スティール・ギターをはじめとするマルチ弦楽器奏者として、YMO、細野晴臣、高橋幸宏、斉藤和義、くるり、森山直太朗、星野源、等のレコーディングやライヴで活躍中。ソロ・アーティストとしても今までに6枚のアルバムをリリース。2007年、ヱビス<ザ・ホップ>、プリングルズのTVCMに出演。同年夏、高橋幸宏の新バンド構想の呼びかけにより、原田知世、高野寛、高田漣、堀江博久、権藤知彦の計6人で「pupa」結成。映画、ドラマ、舞台のサウンドトラックの他、CM音楽も手掛ける。
高田渡トリビュート
TONE - 高田漣

震災直後、アコースティックギターを弾いて歌うという父のシンプルなスタイルこそが、一番ダイレクトに伝わることにようやく気づいたんです。

―漣さんが高田渡さんの音楽と真剣に向き合い始めたのは、東日本大震災のチャリティーで、“鉱夫の祈り”を歌ったのがきっかけだったそうですね。

高田:それまでは正直、自分の音楽活動において歌に対するウェイトはすごく低くて、インストゥルメンタルやアレンジメントのほうにベクトルが向いていたんです。でも、震災直後にライブで電気が使えない状態になったときに、アコースティックギターを弾いて歌うという、父のシンプルなスタイルこそが、一番ダイレクトに伝わることにようやく気づいたんです。

高田漣
高田漣

―チャリティーで“鉱夫の祈り”を選曲したのは、何か理由があったのでしょうか?

高田:震災直後に思ったのは、「今歌う意味がある言葉を歌いたい」ということでした。そのときのムードと“鉱夫の祈り”の歌詞が非常に合致していて。それからいろいろなイベントで自分がギターを弾いて歌うことが増えて、父の世界に近づいていきました。すると、子供の頃の経験が蘇ってきて、日本語で歌うことにどんどん興味が湧いてきたんです。



―逆に言うと、それまでインストをメインにしていて、ルーツミュージックに則した楽器を使いながらも、エフェクトをかけたりしていたのは、父に対するある種の反発があったということなのでしょうか?

高田:そう思う人も多かったと思うんですけど、意図して反発したことはありません。父とは17歳のときからずっと一緒に演奏していたし、僕がファーストアルバムを出したときも父が帯を書いてくれたり、ずっと応援してくれてましたし。エフェクトを使っていたのは、自分の使ってる楽器を時代にフィットさせる方法論としての意味合いが強かったですね。


レコードが消えてCDに変わったことで、古い音楽と新しい音楽が並列に流れてくる時代になった。僕の音楽性はそこで形作られた部分が大きいです。

―漣さんはYMOからも大きな影響を受けていると思いますが、それを発展させて、自分なりの方法論で音を鳴らしていたと。

高田:僕にとってのYMOって、音楽家として以上に「おらが村のスター」という感じだったんですよね。というのも、細野(晴臣)さんは昔、父のプロデューサーでしたし、藝大にいた頃の教授(坂本龍一)は父の友人のバックで演奏していました。それに、父が晩年に作品をリリースしていたレーベルのオーナーが(高橋)幸宏さんのお兄さんでしたし……。そんな彼らが、ずっと売れずじまいだったフォーク界隈から初めてマスに出ていった。YMOってお笑い番組の『THE MANZAI』に「トリオ・ザ・テクノ」として出たことがあるんですよ(笑)。だから僕にとってはある種のアイドルというか、芸能人だったんです。

高田漣

―世代的にも、いわゆる「YMOチルドレン」の方々よりちょっと下ですもんね。

高田:そうなんです。ホントにすごかったときのYMOをリアルタイムで体験できたのは、まりん(砂原良徳)さんやテイ(・トウワ)さん、高野(寛)さんみたいに、ちょっと年上の世代ですね。

―だからこそ、漣さんはペダルスティールなどを使いながら、自分なりの道を追求してきたと。

高田:そういうことです。あと最近つくづく思うのは、僕は1973年生まれなんですけど、高校から大学くらいで一気にレコードが消えて、CDにメディアが変わったんです。その後に何が起きるかっていうと、いわゆる再発ブームが始まって、古い音楽と新しい音楽が並列に流れてくる時代に急に変わっていきました。例えば、プリンスの新譜と、ボブ・ディランの1960年代の作品が、自分の中で同列になったんです。今のYouTubeの文化もそうですが、僕らの世代にも同じようなミクスチャーが起こって、急に地平が広がっちゃった感じなんですよ。同世代のくるりの岸田(繁)くんとかもそうだと思うんですけど、僕の今の音楽性も、そこで形作られた部分が大きいんです。


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