“ゲームデイトナ志木 復活プロジェクト” ~リポート【第1回】:中心人物の松田氏、堀氏に聞く「なぜ?」~(1/2)

インターネットを通じて一般から始動資金を集めるという、ユニークな“ゲーセン再建”の試みを追うリポート記事。第1回目はプロジェクトの中心人物にインタビューを敢行した。

●プロジェクトにまつわる「なぜ?」を聞く

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 惜しまれつつ閉店した名門ゲームセンターを復活させるために、インターネットを通じて一般から始動資金を集めるという、ユニークな“ゲーセン再建”の試みが展開中だ。そのゲーセンとは、埼玉県志木市の“ゲームデイトナ志木”(以下、志木デイトナ)だ。
 そのニュースを最初にお伝えしたのは、2015年3月16日の記事、ソーシャルスポンサーを募ってゲーセン復活を目指す“ゲームデイトナ志木 復活プロジェクト”が始動。かつてない試みとあって、ネットを中心にさまざまな意見が見られた。 

 ファミ通ドットコムでは、今後、数回に分けてこのプロジェクトを追うリポートを掲載していく。今回は、このプロジェクトの中心人物である松田泰明氏(ゲームニュートン代表)と、パートナーである堀 福太郎氏(ソーシャルスポンサーサービス“Hoober”(フーバー)代表)に、このプロジェクトを始めた意図や、プロジェクトにまつわる多くの疑問を直接聞いてみた。

 閉店や規模縮小などネガティブな話題が多い昨今のゲーセン業界のなかで、前例のないこの再建の試みは光明となり得るのか? またどんな影響をもたらすのだろうか?……リポートでは、現場の声を可能な限りすくい取って一部始終を追っていきたい。


【プロフィール】
松田泰明氏
“ゲームニュートン”(東京都板橋区)代表。ゲームセンターの経営者であると同時に、全国規模の対戦格闘ゲーム大会の主催、運営を数多く手掛ける。エンターブレイン(当時)主催のイベント“闘劇”の中心スタッフとしても活躍。

堀 福太郎氏
スポンサーPR活動を通じて、“支援を受けたい活動”と“支援したい企業”を結び付けるマッチングサービスを提供する“Hoober”(フーバー)の代表。Hoober公式サイト


●「みんなで参加するゲームセンター復活活動」が始まるまで

――“ゲームデイトナ志木 復活プロジェクト”、発表後の反響はいかがですか? ファミ通ドットコムでニュースを掲載したあとにネットに挙がったゲームファンの声を見ると、肯定的な意見と、そうでない意見や疑問が半々、という感じがします。

松田泰明氏(以下、松田) ネットだけでなく、私の周辺でも多くのご意見をいただいて、その反響の大きさに驚いています。サイトではすべてを説明しきれていない部分もありまして、疑問や質問などもいただいています。この点については言葉が足らず恐縮です。

堀 福太郎氏(以下、堀) このような声をいただきまして、今後、弊社のサイトでもFAQを公開したり、問い合わせのフォームなどを明確にしていく予定です。少しお待ちいただければと思います。

――今回はそのあたりの“疑問”も含めて、直接おふたりにプロジェクトを立ち上げた意図をおうかがいできればと思っています。まずは、このプロジェクトの始動の経緯から、教えていただきたいのです。

松田 もともと“ゲームデイトナ志木”(以下、志木デイトナ)さんとはつながりがありまして、何とか“志木デイトナ”を続ける術はないだろうかという相談をいただいたのが発端です。じつはいまのオーナーである高野さん自身も、以前のオーナーさんの時代に経営が困難になったときに、“志木デイトナ”の灯火を消したくないという理由で経営を引き継いだ方です。地元の老舗店舗ですからね。今回のお話を聞いて、ウチで何とか経営を引き継げないだろうか? と考えてみたのです。

――“志木デイトナ”は2015年1月末日に閉店をしていますが、相談の時期としてはその直前あたりのタイミングということでしょうか?

松田 ええ。お話を進めさせていただくなかで、オーナーさんにお願いしてこれまでの店舗の運営コストや、インカムなどまでも詳しく開示していただきました。閉店の理由というのは、もちろん経営的な事情によるものだったのですが、僕の感覚では運営側がもっと努力をすればなんとか改善できるのではないか? と思ったんです。

――昨今、ゲーセンは経営的に非常に難しくなっていて、以前のような“設置産業”としてゲーム機を置くだけでいいとされる時代ではなくなりました。それでもいま元気なゲームセンターって、松田さんの店“ゲームニュートン”のように、絶えず店内イベントを仕掛けるなどの企画力がある店舗という気がします。自分のお店のノウハウを注入することで、再建できそうと?

松田 そういう側面もありますね。近年の“志木デイトナ”は、音楽ゲームをひと通り揃えていて音ゲーファンを中心にした常連プレイヤーさんの満足度や信頼が高いお店でした。しかも、近隣ではもはや唯一となったゲームセンターです。同時に、お客さんの絶対数は少なくなってきていて、年々運営が難しくなっていた事実もあります。店内イベントを打っていなかった、ストリームによる生放送や録画の環境がなかったこと、諸般の事情で店内は全面禁煙にしていたこと(編注:再開後は分煙化を予定しているとのこと)などから、集客の機会を逸していたことも否めません。

――同業者の視点から、改めるべきところが見えたということですね。

松田 ゲームセンターはたとえインカムがなくとも、毎月、家賃、人件費、光熱費、メーカーへの課金など出ていく要素は山盛りです。そのあたりの事情を精査したうえで、対戦格闘ゲームで僕らがさかんに仕掛けているようなプラスアルファの施策をすればきっと維持できると思っております。

――なるほど。同業者の“西日暮里ゲームスポットバーサス”と共同で復活を目指すとあるのはどういった理由からですか?

松田 現実的に考えて単独の力では、経営持続が難しい面があったからです。近い同業者で、最近音楽ゲームに力を入れている“西日暮里ゲームスポットバーサス”のオーナーに共同で再建、運営を目指さないかと相談したところ、バーサスさんも興味を示してくれました。再建が可能になれば、当面は両店からスタッフを出して、運営コストをできるだけ掛けない店舗運営をする予定です。


――プロジェクトで募っているのは「再始動のための資金」とありますよね? 経営の移動と再始動は、資金が必要なものなんでしょうか?

松田 ええ。壁となったのはその部分でした。オーナーさんやテナントの大家さんからも非常に好条件のお話をいただいきました。とはいえ、資産の売買、再契約などに掛かる費用を算出するとそれなりの額になります。急なお話ということもあり資金面が壁になったのです。本当は2015年1月末の閉店の時点で本来は退去しなくてはならないのですが、一時休店として再始動まで待ってほしいというこちらの条件も受けてくださったほど、本件にはご理解いただいているのですが……。''

――そのための資金を今回、企業と一般のゲームファンから募ろうというわけなのですね。

松田 地域の老舗店舗、音楽ゲームファンの支持も篤い、それなのに再始動の資金が調達できないから断念する、というのはあまりにも惜しい。そこで、たまたま別件でやり取りをしていたHoober(フーバー)さんとともに、アーケードゲームにご理解のある企業さんやゲームファンの協力を仰ぐという「みんなが参加するゲームセンター復活活動」を始動した次第です。

――プロジェクトの目標額(計500万円)の根拠とは?

松田 再開のためのすべての費用です。具体的に言いますと、機械の譲渡やテナントの再契約、ほか改めて経営するための契約類、改装でおよそこれだけの金額が必要になるということになります。