宮地ゆう
2015年4月14日15時00分
カリフォルニア大学サンフランシスコ校の医学部准教授アミーン・アザームさん(42)は、あるとき、医学部の学生とこんな会話をした。「知らない病名に行き当たったり、授業の調べ物をしたりするとしたら、どうする?」。学生たちは「まずはウィキペディアかな」。
かつては図書館まで行って医学雑誌や本をひっくり返していたのが、スマホやパソコンからウィキペディアを引く。それがいまの医学部生のやり方なのだという。
ウィキペディアはサンフランシスコ市内に拠点を持つウィキメディア財団が運営するネット上の百科事典だ。誰もが書き込みをしたり、編集したりすることができる。言語ごとに管理する人はいるが、記述や編集にはだれでも参加できるのが特長だ。たくさんの人の目に触れるため、専門のサイトよりわかりやすく、簡単な言葉で書かれていることが多い。
同じ頃、カリフォルニア大バークリー校で公衆衛生を学ぶ大学院生だったマイケル・ターキンさん(33)は、ある友人から相談を受けた。
「もしかしたらエイズウイルス(HIV)に感染したかもしれない。いつ検査したらわかるだろうか」。ターキンさんは答えられず、すぐにウィキペディアを引いてみた。HIVは、感染した可能性のある日からしばらくの間は、たとえ感染していても陽性反応が出ない期間がある。ウィキペディアによるとその期間は「14日間」と書かれていた。「もっと長かったのではないか」と感じたターキンさんが別の医学サイトを見てみると、「28日間」とあった。さらに調べ、やはり28日以上しないと反応が出ないことがわかった。
「14日間」と書かれたウィキペディアのサイトは、1カ月に何千人もが閲覧していた形跡もあった。「これだけ重要なことなのに、こんなにたくさんの人が間違った情報を手にしているのか」。驚いたターキンさんは、さっそくこの記述を書き換えた。
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