日経平均株価:15年ぶり2万円のカラクリとは
毎日新聞 2015年04月13日 16時21分(最終更新 04月13日 16時30分)
問題は増え続ける日銀保有のETFの扱いだ。その残高は今年3月末時点で約4兆4835億円に達する。上野氏は「株価の下落で含み損となり、日銀の信用を傷付けかねない。かといって売る方針をアナウンスすると、株価下落を招く。結局、保有し続けるしかないのです」。株価を支える役目と引き換えに日銀もリスクを抱え込んでいる。
株価をせり上げているのは官邸と日銀の一部による「チーム・アベ」と位置付けるのが同志社大の浜矩子教授だ。「チーム・アベは、公共財と言えるGPIFなどの公的年金を使って株高を演出しているだけ。国民生活に悪影響を及ぼしかねない『火遊び』をなぜ露骨にやれるのか」。倫理観の欠如をまず批判する。
ミニバブルとも言える株式相場には、下落に転じるリスクも付きまとう。「チーム・アベは株式市場を喜ばせる政策に熱心ですが、日本株を買った外国人投資家は虎視眈々(たんたん)と売り抜けるタイミングを検討している。きっかけは金融政策の変更ではなく、外国人投資家が『このあたりで売り抜けよう』とマインドを変えることが暴落の引き金になるかもしれません」。「Xデー」は明日にも訪れるかもしれないと浜教授は危惧する。
それでも市場や経済界には円安・株高の実現で「アベノミクスは成功している」との声が根強い。輸出中心の大企業や株などを大量に保有する富裕層は、確かに恩恵を受けた。企業の業績改善に対する期待も高まっている。だが実質賃金は下がり続け、景気回復の実感は薄い。「最も怖いのは、今の異常な株高が醸し出す偽りの浮かれ気分に国民が引き寄せられてしまうことです。超低金利の中で生活防衛のために株に手を出した人たちが損を被ることが一番の悲劇なのです」
チーム・アベは、魔法のかけ方は知っているが解き方は知らない「魔法使いの弟子」ではないか−−。浜教授はそう問い掛ける。円安や株高が過剰に進行したり、一気に逆方向に転じたりした時に、素早く、そして適切に事態を収拾する政策を持ち合わせているのかという疑問だ。
つくられた株高のメッキがはがれた時、ツケを払わされるのは年金資金などを頼みもせずに使われた国民である。