酒税法改正:酒の安売り競争に歯止め…自民、法案提出へ

毎日新聞 2015年04月14日 22時08分(最終更新 04月14日 22時32分)

【上】酒類販売免許を持つ売り場数の推移【下】ビールの店頭価格の推移
【上】酒類販売免許を持つ売り場数の推移【下】ビールの店頭価格の推移

 自民党財務金融部会などによる合同会議は14日、量販店などによる酒類の過度な安売りの規制を強化するため、酒税法などの改正案を議員立法で今国会に提出する方針を承認した。安売り競争の激化で経営悪化に苦しんでいる「町の酒屋さん」を守る狙いだ。ただ、節約志向が高まる消費者や小売り大手からは反発の声も出ており、審議の行方が注目される。【神崎修一、山口知】

 「大手ディスカウントチェーンは、我々の仕入れ価格よりも安い値段で酒類を販売している。(法改正で)商売の環境が上向いてほしい」。東京小売酒販組合蒲田支部(東京都大田区)の島田徳行支部長は期待を示した。島田氏によると、同支部管内では、経営が苦しくなって廃業や転業する酒屋が続出。経営者の高齢化と後継者不足も加わり、組合員数は68店と約10年前の3分の1に激減している。

 酒販免許の規制緩和の中で、コンビニエンスストアや総合スーパーのほか、ホームセンターや家電量販店などが酒類販売に次々と参入。酒類売り場数は2000年代半ばに20万カ所を超えた。価格競争は激化し、00年に1本206円程度だったビール(350ミリリットル)の店頭価格は、14年には191円に下落。町の酒屋は競争についていけず、08年以降、売り場数は減少傾向だ。

 大手酒類メーカーも、大量に販売できる大手スーパーや量販店を重視。新商品を販売する際などに奨励金(リベート)を支払って安値販売を誘発し、大手スーパーや量販店は「特売の目玉」として集客を図る構図が続いている。

 ただ、スーパーや量販店には、安値販売によって消費者の支持を得てきたという自負もある。大手量販店幹部は「赤字になるほど過剰な安売りをしているわけではない。そもそも過剰か過剰でないかの線引きは難しい」と指摘。東京都内の量販店に買い物に来ていた男性客(36)も「価格は安い方がいいに決まっている」と話した。

 酒税法などの改正案は、酒類の製造や販売に関する取引基準を法制化。採算を度外視した価格での販売を禁じ、違反した場合は50万円以下の罰金を科すほか、免許を取り消すことも盛り込む方針だ。今後、国税庁などが具体的な基準を検討するが、基準次第では小売り大手や消費者への影響も大きくなる。

 ◇酒税法◇

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