余録:「自然はいつも隠れた欠陥に味方する」。マーフィ…

毎日新聞 2015年04月15日 02時30分

 「自然はいつも隠れた欠陥に味方する」。マーフィーの法則として知られる「失敗する可能性のあるものは失敗する」の変化形の一つで、事故によって隠れた欠陥が明らかになるたびに思い出す(A・ブロック著「マーフィーの法則」)▲で、先日の騒ぎは事故の一歩手前の「重大インシデント」だったという。東京のJR山手線の線路内で電化柱が倒れ、長時間にわたり電車が止まった一件である。インシデントは出来事のことだが、とくに事故(アクシデント)に至らなかったトラブルや事件をいう▲とはいえ老朽化で倒れた柱の一部は線路上にあった。大事故を免れたのは僥倖(ぎょうこう)だろう。事前に柱の傾きを知りながら、対応を週明けに先延ばししたというのもいただけない。施設と安全文化における欠陥を暴露したのは人の知恵ではなく、意地悪な自然の力学だった▲「遅かれ早かれ最悪の状況が必ず起こる」……マーフィーの法則は多くの変化形を生んだが、むろん科学的法則ではない。だが世の中は決して思い通りにならないという人生の真実を知る人には座右(ざゆう)の銘(めい)として重宝しよう▲では一度事故が起これば大惨害となる原発はどうか。福井地裁は関西電力高浜原発の2基の再稼働を差し止める仮処分決定を出した。原子力規制委員会の新規制基準では安全といえないとの判断を打ち出したのだ。自然は人には見えない欠陥に味方するというわけか▲仮処分決定への不服申し立ては必至だが、この決定により関電の想定した再稼働のスケジュールは大きく狂いそうである。「緊急度と重要度は反比例する」。これもマーフィーの法則の変化形の一つだ。

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