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【産経抄】あなたは被害者? 4月15日

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【産経抄】
あなたは被害者? 4月15日

 英国の歴史のなかで名君のほまれが高いエリザベス1世(1533~1603)も、晩年は議会との対立に苦しんだ。自らの過ちを認めた女王は、宮殿に集まった下院議員たちに語りかける。

 ▼「神が私を高い地位につけられたけれども、あなた方の愛情を得て統治してきたということこそ、私の王冠の栄光であると考えている」。後に「黄金の演説」としてたたえられるスピーチで、女王は議員、ひいては国民との和解を見事に実現する(『エリザベスI世』青木道彦著)。

 ▼韓国の朴槿恵大統領は、女王をもっとも尊敬する人物に挙げている。親の悲劇的な死、独身、女性の政治指導者と、確かに2人にいくつか共通点はある。ただ残念ながら、コミュニケーション能力では比べものにならない。

 ▼朴大統領は、閣僚や大統領府関係者と意思疎通ができないという意味で「不通大統領」と呼ばれている。2013年2月の就任以来、記者会見もたった2回しか行われていない。今年の年頭記者会見で日本メディアは、前回に続いて質問を許されなかった。小紙は出席さえ拒否された。

 ▼その朴大統領の名誉を毀損(きそん)した罪で在宅起訴された、小紙の加藤達也前ソウル支局長の出国禁止措置が、ようやく解除された。きのう帰国した加藤記者は、久しぶりの家族だんらんを楽しんだはずだ。ただし、20日に行われる次回の公判に出廷するために、韓国にとんぼ返りすることになる。不可思議な裁判は、まだまだ続く。

 ▼加藤記者が日本語で書いたコラムによって、どんな被害を受けたのか。重い処分を望んでいるのか。もう一人の裁判の主役である朴大統領は、沈黙を守ったままである。改めて聞きたい。あなたは本当に「被害者」なのか。

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