千葉雄高
2015年4月15日00時24分
警視庁の内部資料とされる国際テロ情報が2010年、インターネット上に流出した事件で、個人情報をさらされたイスラム教徒17人が、国と、警視庁を所管する東京都に計1億8700万円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決が14日、東京高裁であった。高野伸裁判長は、都に約9千万円の支払いを命じた一審・東京地裁判決を支持し、双方の控訴を棄却した。
原告側は、イスラム教徒の個人情報を収集する捜査手法そのものが「信教の自由の侵害だ」と訴えたが、高裁判決は一審と同様、「国際テロ防止のためにやむを得ない」と退けた。ただ、「テロ防止にどの程度有効かは今後も検討する必要があり、同様の情報収集が常に許されるわけではない」と付言した。
判決によると、流出したのは同庁公安部外事3課などが作成した国際テロ捜査情報に関する文書。日本に住むイスラム教徒の勤務先や家族構成など詳しい個人情報が記されていた。警視庁は今も同庁の文書と認めていないが、判決は一審と同様、文書を「外事3課の資料」と認定。情報管理に過失があったとし、「プライバシー侵害や名誉毀損(きそん)が甚大だ」とした。
警視庁の清水和俊訟務課長は「判決内容を検討して今後の対応を決める」との談話を出した。(千葉雄高)
■判決、捜査の違法性認めず 原告ら上告へ
判決後、原告のイスラム教徒らは東京都内で記者会見し、「警察の捜査に警鐘は鳴らしたがトーンは弱く、残念だ」(日本人の30代男性)などと語った。この日の判決が捜査の違法性を認めなかった点を不服とし、原告らは上告する方針を明らかにした。
外国籍の40代男性は、3月に日本から出国しようとした際、渡航の申請をした国から「国の安全のため」との理由でビザ発給を拒否されたという。「私の名前がブラックリストに載っているのでは。この情報は私たちの人生を危うくした。その責任を認める必要がある」と話した。
弁護団の井桁大介弁護士は、「イスラム教徒というだけで捜査対象にするのは人権侵害だというのが国際的な流れ。この日のような判決がまかり通れば、日本は司法の人権感覚が信頼できない国と見なされる」と懸念を示した。
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