日本・ドイツ比較:「煙独」ムードじわり 戦後70年巡り
毎日新聞 2015年04月14日 15時22分(最終更新 04月14日 17時54分)
日本で日独を比較する際には、ワイツゼッカー元大統領やワルシャワのユダヤ人ゲットーの記念碑前でひざまずき謝罪したブラント元西独首相が挙げられることが多いが、板橋さんが注目するのはアデナウアー西独初代首相だ。「主権回復や独仏和解、奇跡的な経済成長を成し遂げた政治家として知られますが、同時に西ドイツが国際社会でどう映るかに敏感で、ユダヤ人への罪の償い、イスラエルとの和解が国の威信向上にもつながることを強く意識していた。保守の人ですがナチスに迫害された経験を持ち、国内のナショナリズムの熱狂にも不信感を持っていました」
そのうえで「ナショナリズムをあおるような政治家の内向きの発言は、事態を悪化させるばかりです」と語る。
◇結局は日本人自身の問題
再び佐藤教授。「本来は『ドイツでは』でも『ドイツとはここが違う』でもなく、日本人自身が『過去』としっかりと向き合わなければならないはずです」。双方に疑問を投げかけるのだ。
ところで、ドイツの日本に対する視線はどうなのか? 気になるデータがある。昨年の英BBC放送の世論調査の結果だ。「日本は世界に悪い影響を与える国」と答えたドイツの人の割合は46%。「良い影響を与える国」という回答は28%に過ぎない。しかも「日本が悪い影響を……」とした人の割合は、同じ調査をした国々の中で中国、韓国に次ぎ3番目に多かった。マイナスイメージは相当に強い。
「ワイマール憲法はいつの間にか変わりナチス憲法になった。あの手口、学んだらどうかね」。現政権にはそんな発言をした閣僚もいる。ヘイトスピーチを繰り返す団体との関係が取りざたされた閣僚もいる。負の材料には事欠かない。
そういえば、メルケル首相は訪日中に「表現の自由」に触れる発言もしていた。ドイツでは……。いや、やめよう。ドイツ人の言葉を借りるのではなく私たち自身が向き合うべき問題なのだから。