日本・ドイツ比較:「煙独」ムードじわり 戦後70年巡り

毎日新聞 2015年04月14日 15時22分(最終更新 04月14日 17時54分)

7年ぶりに来日し、安倍首相との共同記者会見に臨んだイツのアンゲラ・メルケル首相(左)=首相官邸で2015年3月9日、藤井太郎撮影
7年ぶりに来日し、安倍首相との共同記者会見に臨んだイツのアンゲラ・メルケル首相(左)=首相官邸で2015年3月9日、藤井太郎撮影

 メルケル首相を巡っては、民主党の岡田克也代表との会談で「慰安婦問題の解決を促した」と報道され、菅義偉官房長官がドイツ政府から「日本政府がどうすべきだという発言はしていない」と連絡を受けたことを明らかにした。こうした混乱が「煙独」に拍車をかけた面もありそうだが、敗戦国として共に歩んできたドイツに「上から目線」「ありがたがるな」といった言葉が投げつけられる状況は、少なくとも正常とは言えまい。

 「『教えたがり』はドイツの国民性ですが……」と苦笑しつつ「ドイツに関しどう言及するにせよ、要人の発言はもっと詳細に見るべきです。彼らは慎重に言葉を選んでいますよ」と語るのはドイツ現代史が専門の佐藤健生・拓殖大教授だ。確かにメルケル首相も講演の冒頭で「アドバイスする立場にない」と断るなどしており、決して高所から「こうすべきだ」という言い方はしていない。

 その佐藤教授は、第二次大戦後の日独を比べるより、今むしろ着目すべきは第一次大戦後のドイツと現代の日本との類似性だというのだ。

 「第一次大戦後のドイツは世界で最も民主的といわれたワイマール憲法を持ち、男女平等の普通選挙も実施した。初めての民主主義です。でも実際は小党が乱立して首相は頻繁に交代。ユダヤ人へのヘイトスピーチも過激化していきました」。ワイマール憲法を平和憲法と読み替えれば、戦後日本と重なる部分は多い。「ドイツは1度の失敗に懲りず、2度目を引き起こして心底懲りた。だからこそ第二次大戦後は『民主主義の徹底』の道を歩んだ。『罪をナチスに背負わせた』という批判もありますが、罪はなくともドイツ人である限り責任は伴うという姿勢は、揺らいでいないのです」

 「煙独」はネットやメディアばかりではない。他ならぬ岸田文雄外相もメルケル首相滞在中の記者会見で「日本とドイツでは先の大戦で何が起こったか、どういう状況下で戦後処理に取り組んだか、どの国が隣国なのかといった経緯が異なり、両国を単純に比較することは適当でない」と、違いを強調した。

 影響力のある政治家は、過去にどう向き合うべきなのか。「ドイツも過去を巡り国内に激しい論争を抱え、試行錯誤を繰り返しながら『過去と向き合っている』というイメージを国際的に定着させていった。それには政治家の役割も大きかった」と話すのは、成蹊大の板橋拓己准教授(ドイツ政治外交史)だ。

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