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専門医指定不正取得 病院が文科省に報告
4月14日 18時15分

専門医指定不正取得 病院が文科省に報告
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川崎市にある聖マリアンナ医科大学病院で、少なくとも9人の医師が、重い精神障害がある患者の強制的な入院が必要かどうかなどを判定する専門の医師の指定を不正に取得していた疑いがある問題で、病院は14日、大学病院を指導する文部科学省に一連の経緯について報告しました。
病院などによりますと、川崎市の聖マリアンナ医科大学病院では、少なくとも9人の医師が、重い精神障害がある患者に対して強制的な入院や、行動の制限が必要かどうかなどを判定する「精神保健指定医」という専門の資格の指定を不正に取得していた疑いがあるということです。
14日、病院の担当者2人が大学病院を指導する文部科学省を訪れ、一連の経緯について報告しました。「精神保健指定医」の指定を受けるには、法律で定められた一定の実務経験や患者を診察したレポートを提出し、国の審査を受ける必要がありますが、病院によりますと、9人の医師は、申請の際、自分が診察していない患者のレポートを提出したり、ほかの医師が診察した患者の症例をコピーしたりしていたとみられるということです。また、9人のほかにも2人の指定医と資格を取得しようとした3人の医師、それに上司にあたる指導医も厚生労働省から聞き取り調査を受けているということです。
厚生労働省は15日、専門家による審議会を開いて、指導医の監督責任も含め、指定医の取り消しなどの処分を検討することにしています。聖マリアンナ医科大学の内海正昭総務部長は「患者の方をはじめ世間を騒がせ申し訳なく思っている。大学の調査委員会で進めている調査がまとまり次第公表するなど、しかるべき対応を取っていきたい」と話しました。

家族会「人権感覚少し弱まっている」

精神障害がある患者の家族でつくる全国精神保健福祉会連合会の野村忠良事務局長は「強制的な入院という患者と家族にとっては非常に重大なことを決める権限がある精神保健指定医の取得に不正があったならば、その入院が正しいのかどうか、非常に疑問だ。精神科の医療における医師の責任の重さや人権に対する感覚が少し弱まっているのではないかと不安を抱いている。指定医の取得については国が厳しく指導をしてもらいたい」と話していました。

措置入院は川崎市で258件

聖マリアンナ医科大学病院の地元の川崎市では、重い精神障害がある患者を強制的に入院させる「措置入院」の件数が、平成25年度までの3年間に258件に上っています。川崎市によりますと、このうち聖マリアンナ医科大学病院の医師の判定に基づく措置入院は37件ありますが、不正の疑いがある医師が判定に関わっていたかどうかは分かっていないということです。
今回の問題について川崎市の担当者は「不正の事実が確認され、当該の医師が判定に関わっていた場合は、措置入院の判断が妥当なものだったかどうかについて、改めて別の医師の判断を仰ぐことになると思う」と話しています。

専門家「チェック体制の見直しを」

精神科の医療や福祉などの法制度に詳しい東洋大学の白石弘巳教授は「指定医を不正に取得した医師の判断で強制的な入院や身体拘束などが不適切に行われたおそれもある。精神科医療全体に対する信頼が失われかねない深刻な問題だ」と指摘しています。
そのうえで、「精神科医として一人前に働くために指定を受けようという人は多いが、1つの医療機関で定められた8つの症例を治療するのは難しいという現実が背景にあるのではないか。審査も個別のレポートの内容を確認するので、ほかのレポートと比べるような審査はしていない。同様の不正がないか調査するとともに信頼回復のためにはチェック体制の見直しなども必要になると思う」と話しています。

精神保健指定医とは

精神保健指定医は、精神障害がある患者に対して入院の必要があるかどうかなどの判定を行うほか、自分を傷つけたり、他人に害を及ぼしたりするおそれがある重い精神障害がある患者に対して、強制的な入院や行動の制限が必要かどうかなどを判定する専門の医師の資格で、法律に基づいて厚生労働大臣が指定します。指定を受けるには、精神障害の分野での3年以上を含む5年以上の実務経験や、統合失調症や児童・思春期の精神障害、認知症など8人の患者についてレポートを提出し、審査を受ける必要があります。
症状が重い患者について、都道府県知事などが本人や家族の同意なく強制的に入院させる「措置入院」は、2人以上の指定医の判定が必要で、家族などの同意で強制的に入院させる「医療保護入院」についても1人以上の指定医の判定が必要だと定められています。医療関係者によりますと、最近はうつ病などで休職する従業員について指定医の診断書を求める企業も増えているということです。
厚生労働省によりますと、精神保健指定医の人数は年々増えていて、平成24年3月末の時点で全国で1万3880人に上っています。厚生労働省によりますと、平成14年以降、不正に指定を取得しようとしたケースが3件あり、監督責任を問われた指導医3人が指定を取り消されたということです。

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