薬物乱用:精神疾患、受診件数過去最多に
毎日新聞 2015年04月14日 12時08分(最終更新 04月14日 13時13分)
◇治療プログラム受講、たった4割
薬物の乱用が原因で精神科の医療施設に入通院した患者が2014年に過去最多となる一方で、乱用につながる依存症の専門治療プログラムを受けたことがある人がうち4割にとどまることが、厚生労働省研究班の調査で分かった。危険ドラッグのまん延などで患者が急増する中、プログラムの受講割合は過去の調査より低下しており、精神科を受診した患者が依存症からの回復機会を十分得られていない実態が浮き彫りになった。【江刺正嘉】
調査は薬物乱用と精神疾患の関連を調べるため、精神科病床がある全国の医療施設を対象に1987年からほぼ隔年で実施。14年は1598施設を対象に、9〜10月に診察した薬物関連患者の原因薬物などを尋ね、回答があった1201施設(75.2%)1709症例のうちデータに欠損がない1579例を分析した。
調査結果によると、症例数、回答率とも過去最高となった。危険ドラッグの乱用で患者が増えたほか、有名歌手の薬物事件で医療施設側の関心が高まったことも影響したとみられる。
精神科受診の原因となった薬物は▽覚醒剤42.2%(666例)▽危険ドラッグ23.7%(374例)▽処方薬(睡眠薬と抗不安薬)13.1%(207例)▽シンナー5.7%(90例)の順。前回12年調査と順位は同じだが、危険ドラッグは、初めて調査対象となった前回に比べ症例が2.7倍になり、割合も7.4ポイント増となった。
原因薬物を1年以内に使った1019例に限ると、危険ドラッグ34.8%(355例)▽覚醒剤27.4%(279例)▽処方薬16.9%(172例)の順となった。前回は1年以内の使用でも覚醒剤が危険ドラッグをわずかに上回ったが、今回は逆転し、危険ドラッグ乱用の急拡大が裏付けられた。
一方、医療施設や都道府県などの精神保健福祉センターで、「認知行動療法」と呼ばれ依存症からの回復に効果があるとされる治療プログラムを受講した経験がある人は37.6%(593例)にとどまり、同じ設問があった08年調査(43.0%)を下回った。多くの患者が精神科を受診しながら、依存症の専門治療を受けていないことになる。プログラムを提供する医療施設が全国で15カ所、精神保健福祉センターも11カ所しかないことが背景にあるとみられる。