乳酸菌使い多能性細胞 筋肉や骨に分化 iPS研究に影響も

関連カテゴリ >> 移植医療

 熊本大大学院生命科学研究部の太田訓正[くにまさ]准教授(48)=神経発生学=の研究グループが、ヒトの体細胞に乳酸菌を取り込ませ、さまざまな種類の細胞に分化できる能力を持つ多能性細胞を作りだすことに成功したことが28日、分かった。

 多能性細胞には、京都大の山中伸弥教授が開発した四つの遺伝子を細胞に加えて作る人工多能性幹細胞(iPS細胞)があるが、乳酸菌などバクテリアを使った多能性細胞の開発は初めてという。

 関係者はiPS細胞の開発で医療への応用に期待が集まる多能性細胞の可能性を広げる研究成果としている。

 乳酸菌は代謝により乳酸を生成するバクテリアで、一部はヒトの体内にいる。熊本大グループは、ヒトの皮膚細胞周辺のタンパク質を除去し、細胞に乳酸菌を取り込ませて培養したところ、細胞が増殖。この細胞が多能性を持つことを試薬で確認した。これまでに5種類の細胞(神経、筋肉、脂肪、骨、軟骨)への分化にも成功したという。

 iPS細胞が一定条件下で増え続けるのに対し、この細胞は直径0・3ミリ程度まで成長すると増殖が止まるのが特徴。マウス実験ではがん化も確認されていない。

 iPS細胞が多能性を持つようになるメカニズムは未解明で、がん化する可能性も否定されていない。太田准教授は「開発した細胞に、iPS細胞を増殖させる遺伝子を取り込むなどの試みを続けることで、がん化せずに増殖する多能性細胞ができるかもしれない」と話す。

 研究論文は26日、米科学誌プロスワン電子版に掲載された。山中教授が委員長を務める文部科学省iPS細胞等研究ネットワーク運営委員会委員の須田年生[としお]慶応大医学部教授(幹細胞生物学)は「論文を驚きを持って受け止めた。多能性細胞ができるメカニズム解明に乳酸菌という全く別の視点が加わり、iPS細胞研究の進展や医療への応用につながる可能性がある」と話している。(東寛明)

(熊本日日新聞 2012年12月29日朝刊掲載)

関連する記事を探す
ジャンル移植医療(移植医療)
診療科目 
キーワード乳酸菌
[PR]
フリーワードで探す
   例)「糖尿病 予防」など

新着医療記事

一覧

医療連載

認知症と生きる 熊本の現場から
患者や家族の暮らしぶり、それぞれに関わる人々の奮闘ぶりを追いながら、認知症をめぐる現状や課題を伝える。医学的な検証も加え、「認知症とは何か」を探る。
もう一つの乱用 処方薬依存
薬物依存。芸能人の覚せい剤使用などでその広がりがあらためて浮き彫りとなったが、"もう一つ"の薬物依存も身近な所で増えている。
ほころぶ暮らし・医療編
医師や医療機関が減少する地域での産科、在宅診療の困難さや救急救命、所得によって生じる医療の格差など、さまざまな課題を探る。

文字の大きさ: ページカラー:

ママへの処方箋

インフルエンザ、水疱瘡・・・

いまの流行病

休みの日、開いている病院はどこ?

休日在宅医

「もしも」のために知っておきたい

心肺蘇生法

熊本県内の感染症情報

3月30日~4月5日

感染性胃腸炎

ピックアップ

 写真や図解付きで、歯についての症状と治療法を分かりやすく解説します。

医療記事を探す

 くまにちカテゴリから記事を探す

がん

心臓・血管

感染症

くすり

呼吸器

脳・神経

糖尿病

こころ

消化器

骨・関節

こども

女性

男性

高齢者

アレルギー

皮膚

泌尿器

耳・鼻・のど

難病

移植医療

地域医療

質・安全

緩和ケア

その他

 
 病名・症状・くすりから記事を探す

あ行 |

か行 |

さ行 |

すべて見る

 診療科目から記事を探す

| 外科 | 内科 | 産婦人科 |

| 小児科 | 歯科 | 精神科 |

| 循環器科 | 消化器科 |

すべて見る

<注目記事ランキング>
 (3月30日~4月5日)
2 動悸 自分で脈の乱れをチェック めまいなどは急いで受診を
2 女性に急増、肺MAC症 感染源は特定できず
2 肺炎 高齢者は特に用心! いきなり重症化のおそれ

全国の健康・医療ニュース(くまにちコム)

お役立ちリンク集