U MOX燃料データねつ造疑惑の経過
高浜原発での疑惑とプルサーマル中止への経過
1999.8.20 BNFL高浜3号用MOX燃料のペレット外形検査データに不審点があり、検査を開始した。
1999.9.14 イギリスのインディペンデント紙がBNFLでのデータねつ造の記事を掲載する。
1999.9.21 海上輸送中の燃料は大丈夫か日本政府からの確認に英国原子力施設検査局・NIIは疑惑を調査中だが安全と返答(この経緯は2000年1月17日に判明する)
関電より通産省、福井県、高浜町に状況報告。「現在までに高浜3号機用には22ロットのデータ流用が発見され、高浜4号機用にはデータ流用は認められない」とのプレス発表。
1999.10.1 MOX燃料輸送船が高浜発電所港に到着し、高浜は4号機用MOX燃料8体を受け入れた。
1999.10.20 関電はBNFLからの連絡により燃料疑惑を知るが、国県町に隠す。(翌年1.11まで隠蔽)
1999.11. 1 関電は上記疑惑を隠蔽したまま"安全"だという報告書を発表
1999.11.8 英NIIから通産省に宛てた手紙(12月15日まで非公開) 「統計分析に基づく検査局の見解では」「データの一部がねつ造されており、さらに別の一部のデータも疑わしい」と明記している。
1999.11.19 高浜4号でデータ不正疑惑のMOX燃料の使用を差し止める仮処分を大阪地裁に申し立て。
1999.12.9 ガーディアン紙がNIIが疑義を抱いているとの記事を掲載
1999.12.9 関電は通産省より、NIIが統計的疑義を持っているとの情報を得たので確認するよう連絡を受ける
1999.12.16 関電、疑惑の燃料使用中止を発表 同燃料を使うなとの訴えに判決が下る前日であった。
疑惑追求に対する東電・通産省の対応
通産省の指示もあり東電は二度、ベルゴニュークリア社を調査しましたが、東電や通産省は十分で適切な対応をしているでしょうか?
BNFL社・関電・高浜原発でデータねつ造が明らかになったのは以下の2つのデータからです。
- 燃料ペレット一個一個の直径に関する全数記録
- 部分的な抜き取り検査データ
これらをグラフにするだけで不正の有無が分かりました。 ところが、東京電力のMOXについては、通産省や東電にデータ公開を要求しても以下のような、不誠実な対応です。こんなに二転三転する答弁では、何を信じていいやら困ってしまいます。
◆ <全数記録について>
- 12月8日 通産省 「ベルゴニュークリア(以下ベルゴ社)は全数検査の記録を行っていない」
- 12月22日通産省 「ベルゴ社は全数検査を行っていない」
- 1月14日 通産省 「6割は全数自動測定しているが4割は100個に一個の抜き取り検査」(残り99個は測定しない)
- 2月24日 東電報告「すべて全数自動測定していた。しかし記録はない。保存は義務付けてない」
- 3月24日 東電 「(全数データが)非公式に打ち出されている可能性はある」
◆ <抜き取り検査データについて>
- 12月8日 通産省 「データの提供を求めていない。保有していない」
- 12月22日通産省 「データはベルゴ社外へ出せない」
- 2月24日 「抜き取り検査により不合格となるペレットはほとんどない」
- 3月10日 通産省「データの公開は契約上ベルゴ社の所有」
- 3月24日 東電 「柏崎用燃料で、抜き取り検査で不合格になったものがあった。数は言えない。
福島用は無い。抜き取り個数も占有情報で公開できない」
◆ <品質検査基準>
- 12月22日通産省 「MIL−STD−105DとISO9002を満たしており、問題ない」
- 1月14日 通産省 「MIL−STD−105DはJIS Z 9015と同じ」
- 3月10日 通産省 「MIL−STD−105DはJIS Z 9015と同じではない。JISの基礎になったもの。JIS規格を求めていないのは、ベルゴ社と東電の問題であり、そのことに問題はない」
- 3月24日 東電 「検査基準は、ベルゴ社の実績から決めた。MIL STDをベースに決めたもの、そっくり同じではない」
かくのごとく、答弁は転々とし、しかしながら、データの公開はしないという一点だけは死守しているという状態です。これらいくつかの問題の経過を見れば、通産省や東京電力が一緒になってまだ隠していることがいっぱいあるのではと思うのが自然というものでしょう。もし、やましいところがないのであれば全てのデータを全面公開することです。
< 参考資料 欧州の再処理工場、MOX工場の現状と各社の関係 >
MOX燃料疑惑で登場する工場は次のようなものです
◇ イギリスのMOX製造会社BNFL社
この工場で高浜原発のMOX燃料が製造されました。データねつ造と共に、燃料にセメント片が入っていたとか、ロボットのケーブルが切断されたなどの事件があり、これら一連の事件を契機に、MOX製造を中止するのではないかといわれています。 高浜原発用燃料の使用中止数日後、スイスでは、97年に同社製MOX燃料が、放射能漏れで回収されていたと判明。ドイツでも、同社製MOX燃料に、データねつ造が発覚し輸入中止を表明、同社製燃料を使用中の原発を停止しました。
同社の再処理工場問題も急展開します。日本からも大量の使用済み核燃料を英国に運び、半分近くは再処理されましたが、再処理工場の放射能汚染は深刻で、周辺地域での白血病の増加も疑われています。汚染は英国全土や海洋に対岸諸国へ達し、デンマークにアイルランドやアイスランドは、再処理工場の停止を英国に要求。スウェーデンは再処理の委託を中止しました。 英国の電力会社も再処理の放棄を望み始めています。海外の主な再処理受注先を失いつつあり、英国議会ではプルトニウム利用政策からの撤退も議論されています。
◇ ベルギーのMOX燃料工場ベルゴニュークリア社
柏崎、福島用の燃料を作った会社です。BNFL社よりも旧式の会社で、BNFL社に比べて製造技術は低いであろうと指摘されています。
◇ フランスのコジェマ社
ここでは、日本からの使用済み核燃料を大量に処理しました。ここで出来たプルトニウムをベルギーに送り、MOX燃料工場ベルゴニュークリア社が、新潟・福島の東電用燃料を製造しました。コジェマ社はベルゴニュークリア社の親会社で、コジェマ社もMOX燃料を製造しており、東電や関電などと契約しています。
再処理工場は原発より格段に周囲を放射能汚染し臨界爆発の危険もあるため、英仏の再処理工場の操業停止を欧州の多くの国が求めています。