日本のアニメやドラマを勝手に翻訳して字幕を付け、違法配信する中国のアマチュア集団「字幕組」。北京在住のメンバーを取材してその実態や動機、違法性を伝えたところ、中国のネットメディアが本紙記事を翻訳、「字幕組がなくなれば抗日ドラマに洗脳される」などと擁護の声が殺到した。(西見由章)
3月上旬、北京中心部のカフェ。待ち合わせ場所に現れた字幕組メンバーは色白の若い女性だった。上品な帽子をかぶり、どことなくセンスのよさを感じさせる風貌。二十歳前後に見えるが20代後半だという。
「たしかによくジュウリンホウ(1990年代生まれ)と間違われます。私、すごく変だから」
この「変」という表現は中国で90年代生まれの若者を形容するときに頻繁に使われる。一人っ子で自己中心的と指摘されてきた80年代生まれの中国人にとっても、90年代生まれは理解が難しい“新人類”らしい。
いずれにせよ反日教育を受けてきた若者たちが、日本の文化に興味を持つきっかけは何だったのか。
この女性にとっての原体験は、日中友好が叫ばれた80年代に輸入された「一休さん」や「鉄碗アトム」などの日本アニメだった。中国の子供向け作品のように単純なキャラクター設定ではなく、心理描写が複雑で、大人も楽しめる内容と感じたという。
本格的に日本の文化に目覚めたのは大学卒業後。字幕組としては“遅咲き”だ。ある日本人俳優のファンになったのがきっかけで、2年前からこの俳優専門の字幕組に参加している。女性が所属する字幕組は全体で約40人、翻訳班だけでも20人近くが活動しているというが、リーダーの「組長」が何者で、どこで生活しているのか、女性は知らない。
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