東京都千代田区のJR山手線の架線支柱が12日に倒れたトラブルで、現場を管轄するJR東日本東京支社の東京総合指令室にいる電力担当者が、付近の支柱が傾いているとの情報をトラブル直前まで把握していなかったことが13日、同社への取材で分かった。11日に山手線の運転士が傾きを目撃した、との情報の共有が指令室内で遅れた。速やかに共有されていれば、補修などの対応が早くできた可能性がある。
連絡不徹底が、大惨事を招く可能性があった。
JR東日本によると、11日に支柱の傾きに気付いた山手線の運転士が、上司を通じて指令室に情報を伝えた。運行担当者は、他に同様の情報がないことから終電まで運転を続けさせ、他の担当者には伝えなかった。同じ指令室に詰めている電力担当者に情報が伝わったのは、トラブル直前の12日午前2時ごろ。同4時50分ごろの始発電車で社員が目視点検した後、同6時10分ごろに倒壊した。
また、倒れる2日前の10日には、別の工事担当者が傾きを把握していたが改修を13日に先送りにし、指令室に伝わらなかった。この工事担当者はどの支柱が傾いているかを特定していたが、11日に報告した運転士は「神田~秋葉原間で柱が傾いていたようだ」とだけ報告、どの支柱かは特定できていなかったという。
JR東日本の関係者は「情報が速やかに伝わっていれば、より早く危険性が確認できていた可能性もある」と話している。東京支社の梅原康義支社長は13日の定例記者会見で「工事や組織内の連絡体制など幾つかの問題があったと思う。担当の連携で反省すべき部分がある」と述べた。
一方、倒れた支柱を固定していた梁(はり)が3月25日に、この梁とつながっていた反対側の支柱が4月10日に撤去されていたことが分かった。設備更新のため。JR東日本は梁の撤去によって、今回倒れた支柱が不安定になったとみて調べるとともに、管内の支柱の全面点検を本格化させた。約5500キロの区間で、トラブル現場と同様の構造になっている約5万カ所の点検を優先させる。
週明けの東京株式市場では、JR東日本株に売りが先行した。前週末10日の終値は1万330円だったが、13日は110円下げて1万220円で終わった。前日12日の山手線トラブルが売り要因とみられる。